~鉱泉宿から雷鳴とどろく稜線へ~ 古寺鉱泉-小朝日岳-大朝日岳- 中ツル尾根-朝日鉱泉 |
●大朝日避難小屋へ、稜線はガス一色 今日は大朝日小屋まで6時間ほどの行程、宿の朝食を済ませ7時過ぎに出発する。
出だしは樹林の緩やかな登り。時折り太陽を背中に受け、暑さとアブがうるさい登路となる。ブナの幹が隣りのヒメコマツにからみあっている「合体の樹」を見る。 やがて一服清水、三沢清水の2ヶ所の水場を経て、古寺山への緩い登りにかかる。古寺山はこんもりした大きな風体で、三沢清水から意外と長い。次第に周囲は背丈の低い潅木となる。進む方向はどうやら雲が厚い。 古寺山頂上(1501m)からは360度の展望。目の前に小朝日岳が堂々としている。その向こう、大朝日岳への稜線や大朝日岳はガスに隠れて全く見えない。雨が降っているように思える。 これ以降の登山道は一転して高山の雰囲気となり、展望のいい岩がちのやせ尾根をなぞっていく。小朝日岳への急登を詰める。鉛色の雲は低くたれこめ、標高1647mのピーク付近にまで迫って来ている。 ハイマツの敷き詰められた頂上に着く。もはや展望は足元のみ。朝日鉱泉からの道から、何人か登って来るのが見える。やがて周囲はすっぽりとガスに包まれる。さっきから降り出していた霧雨が、いよいよ本格的な雨となる。残念だけれど、久々に雨具を着る。
熊越(くまごえ)の鞍部までもきつい下り。その後は緩やかな登りとなるが、視界は30m程度で先に見えるはずの大朝日岳と稜線は全く見えない。 傍らにマツムシソウを見る。濡れているせいか紫色が鮮やか。しばらく行くと白っぽいマツムシソウがある。違った種かと思ったが、単に色の濃淡の違いだけのようである。ハクサンシャジン、タカネヤハズハハコなども見かける。 時々すごい風が吹き、よろめきながら緩い登りをこなす。一瞬だけガスがきれて稜線が望めるがすぐにまたもとの白い世界へ。 人の声がし、銀玉水に着く。おいしいと評判の水場は左に少し下がったところにある。冷たくて本当においしい。この天気ではいったん小屋に着いてから金玉水の水場(小屋から7,8分ほどの所)まで行くのも大変だろう。ここで1日分の水を汲んで行くことにした。
銀玉水からは急登となる。ニッコウキスゲ、ハクサンフウロなどを見ながらザレた斜面を登る。高みに上がるともう何も見えない。ものすごい風が稜線を掛け抜けていく。ケルンを頼りに方向を確認しながら進んでいくが、果たして小屋は見えるのだろうか。気づかずに通り過ぎやしないかと心配する。それほどの深いガスである。 ロープで仕切られたお花畑があり、やがて大朝日避難小屋がボワッと目の前に現れる。やれやれやっと到着。雨具を通してシャツもびしょ濡れだ。 小屋に入ると管理人がいて、自分のいる場所を指定された。午後1時なのにもう20人くらいいる。この天気なので、もう少し先で泊まろうとしていた人も、予定変更でここにいるのだろう。協力金として1500円を支払った。
それ以後もあとからあとから、宿泊客はやってくる。管理人さんによると、昨日(土曜の夜)は70名の宿泊で、今日はそれを上回るだろうとのこと。夕方になって、以東岳方面から縦走して来た人も飲み込んだ結果この日の宿泊者は約75名となった。 メインの宿泊場所は2階で板張りである。この日は3階の屋根裏部屋だけでなく1階のスペースも満員。それでもゴールデンウィークのときには150名が宿泊したそうである。おそらく寝たくても横になれなかったであろう。 濡れたシャツをあえて着て着干しを試みるが、ジトッとした小屋の中ではそれもままならない。やがて1階の宿泊者が宴会を始め、嬌声が2階まで響いてくる。耳栓をして寝る。 7時過ぎになって管理人さんにたしなめられ、やっと静かになった。 外は風・雨ともに依然として強いのが耳栓を通してもわかる。これでは明日も好天の稜線歩きは期待薄であろう。早く下山したい気持ちでいっぱいだった。 |