~幽玄なブナ林を持つ南会津の名峰~
タイトル

あいづあさひだけ 2002.6.2.~3.

赤倉沢登山口-三吉ミチギ-叶の高手-
熊ノ平避難小屋-会津朝日岳

マップ
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会津バス
山村を走る会津バス
浅草岳
只見町から浅草岳を望む

●バス・タクシーを乗り継ぎ登山口へ
浅草6:20発の東武線快速(新藤原行き)に乗る。リクライニングシートがうれしい野岩鉄道(日曜なのにガラ空き)・会津鉄道と、会津田島までは昨年小野岳・二岐山に行ったときと同じアプローチだ。

田島からは2時間のバスの旅。途中山口車庫で乗り換える。乗客は自分以外に、せいぜい地元の人が1人か2人。行楽客はまず乗らない便のようだ。
バスは只見駅行きなのだが、途中会津地方の広々とした、すばらしい山村風景の中を走る。点在する集落を繋ぐようにバスは回り道をしながらの運行だが、それもまた面白い。

風景を楽しんでいると、正面遠くには残雪まぶしい浅草岳の端正な姿が。守門岳とともにぜひ登ってみたい越後の山である。

「朝日岳入口」というバス停を通り過ぎる。近くにタクシー会社があり、ここで降りてもよかったが、はっきりしたことはわからなかったので、予定通りタクシーを予約していた只見駅まで行く事にする。(実際はここで降りて、タクシーに乗ったほうが運賃も安いし早く着く)

只見駅からタクシーに乗り、赤倉沢の登山口へ。「今から登るの?小屋泊まりだね」と運転手さんは全てわかっているようだ。丸山岳へ縦走するのか聞かれたが、とてもとても。(朝日岳-丸山岳間は踏み跡程度のヤブ道を往復6時間) 朝日岳の山開きは翌週のようだ。

12:50赤倉沢の登山口着。ちなみに朝日岳への登山道はここからの1本しかない。必然的にピストンだ。帰りのタクシーを予約しておいた。
ムラサキヤシオ
ムラサキヤシオ
サンカヨウ
サンカヨウ

●花と展望の登山道
最初に2本の丸太に片足ずつ乗っけて沢を渡る。平坦な道を歩き出すと、右側に杉林があるが、植林のように見えない。
よく見ると木の下のほうが彎曲している。焼石岳のブナ林がそうであったように、雪の多い地域ではその重みで樹木はみんなこのようになってしまう。杉の木も例外ではなかった。
反対側を見ると沢の向こうに、早くも残雪がちらほらと見え始める。

タニウツギを見ながら何度か沢を渡り、荒禿沢を越すと、湿性の花が目立ち出す。サンカヨウ、ニリンソウ、アズマイチゲ、キクザキイチゲ・・・、この山は思った以上に花が楽しめそうである。
キスミレ、ラショウモンカズラ、そしてカタクリが咲いている。これらの顔ぶれは、東京周辺の山では早春(3月頃)から順々に咲いていくものである。が、ここではそれらをいっぺんに見ることが出来る。雪が溶けるとこれら春の花々は、待ちかねていたように一斉に咲き出すのだ。
振り返れば、谷を挟んで会津の山々が眺められてくる。緩やかだが確実に高度を上げている。

三吉ミチギという場所に着く。「最後の水場」とある。ここで水を3リットル汲む。明日、ここへ戻ってくるまでに必要な量だ。
林相はブナやナラ、ツツジなど背は低いがみな豊かに葉をつけ花をつけている。そしてそれら花のどれもがみな、色鮮やか。ムラサキヤシオはまさにディープパープル。タムシバ(コブシかもしれない)、オオカメノキといった白系の樹花。足元にはまだピンク色のイワウチワ、コイワカガミ、ショウジョウバカマなど。春の花のオンパレードである。今年はもう見納めたと思っていた花ほとんど全てと再会出来た。

道はいつしか、きついジグザグの登高となっているのだが、豊かな自然の精に囲まれて疲れを感じない。
岩の突端に出て、展望が開ける。「人見の松」という場所で、それらしき松の木がある。西側に目を転じれば、さっきバスで見えていた浅草岳が意外な大きさで見えていて、思わず声が出る。
雪渓の斜面
雪渓の斜面
熊ノ平避難小屋
熊ノ平避難小屋

ここから叶の高手までは先に進んでしまうのがもったいなくなるほどの、花と展望の道だ。
岩っぽい道はコイワカガミの群落、それに続いてイワウチワとカタクリ、ショウジョウバカマ。目線にはタムシバとムラサキヤシオ。

下山する人と多くすれ違うようになる。来週の山開きの下見に来ているという、役場の方?とも会った。しばしば見かける赤テープが真新しかったのは、この方々のおかげなのだろう。朝日岳は手付かずの自然が残っているといわれる。ここまで迷うことの無く来れたのも、偶然ではないのかもしれない。

叶の高手の直下に来る。このへんのいくつかの小ピークは、「高手」という呼び方をしている。
正面にはいよいよ、残雪を蓄えた朝日岳が目の前に大きく立ちはだかってくる。山というより岩壁である。
この朝日岳が視界に捉えられる瞬間、一種不思議な感覚にとらわれる。朝日岳は、実は麓の村からは見える場所がほとんどない。ここまで来て初めて見えるのである。(もちろん、他の山に登れば見れることは、頂上からの大きな展望で理解できる) それを考えると神々しささえも感じる。

叶の高手のピークからは展望は乏しいが、それを越えたあたりからはまた山の雰囲気が変わる。いっぺんに深みが増す感じだ。傍らにはシャクナゲも咲き出している。カタクリとシャクナゲが同時に見れるのはけっこう貴重な山ではないか。

「朝日の大クロベ」という大木を2本見て、いったん下る。道は平坦となり、鬱蒼としたブナ林の向こうには残雪の帯が続いている。
ぬかるみ道から雪を踏む道になる。ここはイワウチワとショウジョウバカマの群落である。

広い鞍部に下り立つと、幅20メートルほどの雪道となる。雪渓と言ってもいいだろう。小さな登り返しとなる。雪上を赤テープに従い進むと、右横に小さな分岐がある。そこを上がると熊ノ平避難小屋だ。
小屋の中は暗いが、きれいで広々としている。今日は山頂へは行かず明日に備える。


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