~富士山展望の稜線、丹沢の4峰を結ぶ~ 塔ノ岳-丹沢山-蛭ケ岳-桧洞丸 |
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丹沢山塊でもグレードの高い縦走路である「主稜」を歩いた。1日目に表尾根を縦走したためかなりハードな行程となった。しかし富士山の展望と変化のある尾根歩きを堪能した。
●快晴、しかし煙霧の表尾根 小田急線秦野駅前のヤビツ峠行きバスは超満員で立錐の余地が無い。休日の谷間ではあるが今日は平日だ。入口付近に立つことになり、途中のバス停で何度も降りるはめに。
ヤビツ峠では大山へ行く人、表尾根へ行く人で半々くらいだった。表尾根へはいったん車道を下り気味に歩き、富士見山荘の所を曲がり登山道となる。 落葉樹はかなり葉を落し、山肌は植林の濃緑と灰色が目立つ。しかし下のほうは所々名残の紅葉も目に付く。 二ノ塔までは急坂が続く。直下のガレ場で岩の下にリンドウを見かける。日当たりがいい所とはいえ、この寒いのにこんな場所でと思う。 二ノ塔からは初めて明確な下りとなり、その後三ノ塔へ登り返す。登りの途中で富士山が顔を出す。 三ノ塔からは、表尾根の稜線と大山、富士山がよく見える。縦走路の次の地点である烏尾山はすごく下の方に見え、その後の登り返しが大変そうに思える。しかしここから先は展望の利く尾根通しの道が続くので、疲れをそれほど感じず歩ける。 三ノ塔からの下りに入るところ、小さなお地蔵さんがガレ場の坂を見下ろしていて、風情がある。 行者ガ岳の鎖場は、2年前に来た時ほどは緊張しなかった。山登りを始めて間もない頃の印象は、少し大げさなのかもしれない。 富士山を中心とした西面の眺めは相変わらず素晴らしい。が、東から南側にかけては、標高1300m付近を境にして、下はどんよりと大気が汚れている。しかし上は澄みきった青空だ。その境目ははっきりと線を引いたようになっていて、大山はその下にあるためその山容はほとんど見えなくなっている。この現象は次の日まで続いた。
これはどうやら「煙霧」という現象らしい。すなわち放射冷却によって地表付近の大気が冷えているのに、上層部のほうは太陽の光で暖かい。冷たい大気は重いので上に上がれず気流の混ざり合いも起きないので、大気の汚れが低いところで漂ってしまうようである。 この現象は晩秋から初冬に起きやすいとのことであるが、最近の温暖化と無関係ではないだろう。化石燃料を大量消費する人間社会の一面が、空に引かれた1本の線にだぶって見えた。 いずれにしても低山歩きを楽しむ側にとってはありがたくない気象だ。 表尾根の縦走路は煙霧のエリアから外にあるせいか、依然爽快である。しかし歩幅の合わない木段の登りはつらい。右側の崩落した斜面に鹿を見た。鹿よけの柵は以前からあったものだろうか。前回来たときの記憶が無い。 新大日、木ノ又小屋を過ぎて、いよいよ塔ノ岳山頂だ。360度の展望。ただし西面のほうが良好。富士山は日の光を浴び、雪冠はまぶしいくらいに輝いている。風がいくぶん強い。
時間があるのでいくぶん長い休息を取る。さてここからがまだ歩いていない道だ。急に人の姿が少なくなる。両側に背の低い笹がある歩き良い道が続く。展望も良好で、竜ガ馬場という穏やかなカヤトの原を、天に上るような感じで歩く。何とも気持ちがいい。少し大菩薩嶺のカヤトを連想させる。 時間はまだ午後2時過ぎなのに、影はいつのまにか長くなっていて、何やら夕暮れのようである。ここ数週間は、東京地方では1年のうちで一番日の入りが早くなる。 丹沢山には3時半ほどに到着した。仰々しい案内板も無く周囲は木立に囲まれている。百名山のひとつとは思えない、落ち付いた雰囲気の山頂で好ましい(もっとも深田百名山で言う「丹沢山」は、丹沢山だけでなく周囲の主峰を合わせて指しているのだと思う)。
山の夜は急に寒くなった。しかしその分夕焼けはきれいだ。富士山のすぐ左側に夕日が沈む。地平線は(スモッグでいまいちはっきりしない地平線だが)鮮やかなオレンジ色の線を呈した。 この季節なら葉も落ち、丹沢山頂から富士山が眺められる。しかし蛭ケ岳方向に少し下りれば、素晴らしい展望台がある。この場所に三脚を構え夕焼けを撮った。 小屋に戻ればストーブが暖かい。
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