-超展望とブナ黄葉-
タイトル
上芦川-釈迦ヶ岳-日向坂峠-黒岳
山域御坂
地域山梨県
標高御坂黒岳(1793m)、釈迦ヶ岳(1641m)、府駒山(1562m)
山行日2010年11月3日(水・祝) 天気
沿面距離9.5km
歩行時間4時間20分
標高差668m(上芦川登山口-黒岳)
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2010年11月3日(祝)

調布IC6:20
 中央自動車道
河口湖IC7:40
 国道139号
県道707号他
8:10釈迦ヶ岳登山道
入口
11:20
11:35登山口
11:55ジョーリヌキディラ
12:25釈迦ヶ岳12:50
13:02府駒山
13:28日向坂峠(林道)
14:30御坂黒岳14:55
15:10すずらん峠
15:13
15:30新道峠分岐
15:35林道上芦川線
15:55すずらん群生地入口
16:30釈迦ヶ岳登山道入口
 県道707号
国道139号他
17:35河口湖IC
 中央自動車道
21:00高井戸IC


関連リンク
[記録] 釈迦ヶ岳から黒岳(春)
[記録] 釈迦ヶ岳から大栃山
山梨県・林道情報
山梨県笛吹市


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11月3日は晴れの特異日。今年も朝から澄み渡る秋空が広がった。
釈迦ヶ岳の登山口へは、甲府側からではなく、河口湖ICで高速を下り湖岸を行く。大石峠の下に出来た若彦トンネルをくぐって、すずらん峠に至る県道に入る。芦川の小さな集落を見ながら、2kmほどで上芦川登山口に着く。

今日は釈迦ヶ岳だけでなく御坂黒岳まで足を伸ばす。黒岳北面のブナ林が紅葉した様子を見てみたい。すずらん群生地と芦川のまで県道付近にを歩き、先に黒岳に登るプランでいた。登山口付近の車道の少し幅広くなった場所に車を置いておけばそれでよかったのだが、色気を出し登山口から続く細道を、車で少し入ってみたのがいけなかった。


大パノラマが広がる釈迦ヶ岳頂上

幅2mほどの道は緩く傾斜し、枯れ葉がいっぱい落ちていたため、途中でスリップして前進できなくなった。

諦めてバックのまま引き返そうとしたところ、不注意で道を外し、右のタイヤが土の地面に落ちてしまった。お腹が縁石に乗り上げて走行不可能となる。

ちょうど一人、登っていく人がいたので押しがけをお願いしたが、車はびくともしない。観念してロードサービスを呼ぶことにした。こういうことは初めてだ。山どころではない。

登山道入口
色とりどりの紅葉
赤色も目立つ
富士山が大きい
御坂山塊の上に
眼下は広葉樹の森
カエデは黄葉も

電波の通じるところまで2kmほど下り、保険会社に電話する。雪を被った南アルプスがクリアに見える青空の下、山梨のサービス会社の車をひたすら待つ。トラブル発生から3時間あまり、簡単な牽引作業で車はあっけなく脱出できた。
ショックはあったが、このいい天気でそのまま引き返すわけにはいかない。今日の行程は短いこともあり、気を取り直して、予定通り登ることにする。

登山口から近い釈迦ヶ岳を先にする。林道終点は少しスペースがあるが、ここまで来るのは自分の車では難しい。そもそもここからのピストンでは面白くない。上部に見える稜線目指して細い山道に入る。

登山口の標高がすでに1000mを越えており、少し高度を上げれば色づきもピークだ。ただ、先週の台風の影響もあってか、落葉も目立つ。
20分ほどの登りで稜線に出た。この場所はジョーリヌキデイラという名前がついているらしいが、語源はわからない。ただ、デイラは奥多摩にある丹波天平(たばでんでいろ)の「でいろ」に似ている。おそらく、同じように平らな場所という意味だろう。

ジョーリヌキデイラから東に進む。稜線沿いの木々はさらに落葉が進んでいる。しかし真っ赤に紅葉したカエデもあちこちに見られるので写真にとるため何度も立ち止まる。
この山で紅葉以上に目を惹くのは、やはり展望である。大きな岩の縁を通り、太いロープをたぐりながら急な斜面を登っていくと背後に甲府盆地と南アルプス、南側には、御坂の稜線越しに富士山が現れる。
もう正午なのにこれだけの眺めが得られる日は珍しい。もっとも、南ア赤石岳付近には雲がまとわりつき始めている。車のトラブルなく、早い時間にここまで達せていれば、もっとすばらしい展望が得られたろう。

稜線を30分ほどで早くも釈迦ヶ岳頂上となる。東側に御坂黒岳や三ツ峠、奥多摩の山々も見えている。まさに360度の超展望だ。ここからの眺めがやはり一番広い。
釈迦ヶ岳はこれが3度目だが、前2回は富士山は見られなかった。九合目付近から上の冠雪はちょっと傾いて積もっている。
南アルプスは甲斐駒を除き白くなった。八ヶ岳も同様である。今年は秋から冬への季節移行は順調のように思える。足元も胸をすくような高度感のある眺めで、芦川側には色づいた広葉樹の森が広がっている。

枝を大きく広げる
ブナの森
黒岳展望台
カラマツ
ススキ
すずらんの道路灯

岩尾根を東に進む。ちょっとした急な下りの後はゆったりした尾根歩きに移っていく。冬枯れ模様だった頂上付近から少し高度を下げると、再び紅葉の森となる。落ち葉に埋め尽くされつつある御坂の山道は柔らかく、足に優しい。

府駒山と思われるピークを越えて、緩やかに高度を落としていく。日当たりがよい場所にはリンドウがまだ咲き残っている。
下に車道が見えてきて、そのまま日向坂峠(どんべえ峠)に下り立った。車が何台も停まっていて、ここから釈迦か黒岳を往復する人も多い。1時を過ぎているが、黒岳を登っても日の暮れる前には戻れそうだ。車道を渡って対面の山道に入る。

すぐ先にきれいに黄葉したブナがあった。ナラやカエデも混ざるがブナの多い林だ。緩やかな登りがしばらく続く。南関東・甲信地区でこれだけブナが見られる登山道も、奥多摩や丹沢を除けば珍しい。

次第にきつい傾斜に変わっていく。高度を上げるとさすがに葉を落とした木が多くなった。風が抜けて気持ちがいい。
御坂峠からの登山道を合わせるとじきに御坂黒岳頂上に出る。最後は針葉樹も多くなるが、ブナの林は頂上直下まで続いていた。

展望台まで足を伸ばす。普段なら3時近くなるとガスが出てしまうのだが、今日は年に何日もない山日和のようだ。河口湖を挟んでくっきりとした大きな富士を見ることが出来た。大石峠への稜線や西湖・山中湖も見え、余すところのない展望地であった。

地元の登山者の方と話をしていると、時間があっという間に過ぎてしまった。そろそろ下山しないと暗くなってしまう。
西の尾根道を少し歩き、すずらん峠からの細道を使って下山する。黒岳への登りと同じような濃厚な樹林帯を期待したが、こちらはそうでもない。沢をまたいだあとは、針葉樹の多い単調な下りとなった。
いくらも歩かないうちに、いつの間にか新道峠からの林道に下り立った。エスケープルートとして利用価値のある道だろう。
林道を歩いて、日向坂峠からの道に合流する。この先は、引き続き林道を下るだけの行程となる。

日が傾き始め、カラマツが黄金色に輝いた。この林道上芦川線は、南北の山稜に挟まれていて、日が落ちるとかなり冷えそうだ。紅葉が進んでいるのもそのせいだろう。
府駒山付近に上がるもう1本の釈迦ヶ岳登山道を見た先で、すずらん群生地に通じる広い駐車場に出た。紅葉した山肌を背にススキの穂が揺れ、季節がまた一歩進んだのを感じる。
やがて上芦川登山口、無事に車のある場所に戻る。すずらんの花の形をした道路灯に明かりが灯った。