5年ぶりにサルギ尾根を登り、御岳山周辺をぐるりと回る。
月曜日の武蔵五日市駅からの上養沢行き。ちょっと小さめのバスに、スーツ姿の人が大勢乗ってきて満員となる。こんな山に向かう方向に会社でもあるのかと不思議に思ったが、途中の学校前バス停でほとんど下車した。先生だったようだ。
芽吹きの木々を透かして奥ノ院山頂を見上げる |
終点のひとつ手前、大岳鍾乳洞入口で下りる。角にある養沢神社が登り口だ。
今や上高岩山、大岳山を示す指導標が立ち、サルギ尾根も一般登山道と変わらない扱いになったようだ。取り付き口の滑り台はなくなっており、裏手の山道に取り付く。のっけからの急登だが、手すりが設置されたため少し登りやすくなった。
高度を上げ麓の音がだんたん遠ざかってくると、檜の植林から自然林の混ざる尾根に入る。フモトスミレがあちこちに咲いていた。葉に白い線の入ったもの(フイリ)とそうでないものとが混生している。他にアケボノスミレ、タチツボスミレも多い。新緑が瑞々しく、葉を透かして御岳山方面がよく見える。気温は低いが日がさんさんと照っており、寒さはそれほど感じない。
炭焼き窯跡と書かれた標識を見て、急登のあと緩い尾根になり、いくつかのアップダウンを越えていくと見晴らしのいい小ピークに出た。時間的にここはもう高岩山なのか、まだ806m地点なのかが判断がつかない。いずれにしても以前は樹林の中だったのが、今は伐採が入ったようで、御岳山や奥ノ院方面の眺めがきく。
斜面を下るとイワウチワが少し咲いていたのでやはり高岩山かなと思ったのだが、そこからしばらく行ったピークに高岩山の山名板があった。ということはさっきのは806mだったのか。前回の5年前よりよりかなりペースが遅い。高岩山の北斜面にもイワウチワが群生していたが、昨日の雨で花はかなりやられてしまったようで、きれいに咲いているものはあまりなかった。
高度が上がり、周囲の木々も芽吹き程度のものが増えてきた。見通しがよくなると2つの大きな山体が見えてくる。左は大岳山、右は今から登る上高岩山である。ここからだと見上げるほどの高さだが、実際は標高差100mを残すのみである。人間の目というのはあてにならない。
鞍部に下ってからきつい直登となる。着いたところが上高岩山山頂で、展望台を兼ねたあずまやが建っている。尖がった山のてっぺんにあるので展望は素晴らしい。都心方面を一望でき、されあに日ノ出山、御岳山や大岳山もすぐそばにあるようだ。ほぼ無風の快晴の空。こんなに眺めがいい山頂なら富士山も、となるがここからは大岳山の後ろに隠れて全く見えない。
山頂には少し雪が残っている。昨日の雨は標高1000mを越える地点では雪だったようである。木の間から望む奥秩父や奥多摩石尾根の稜線はかなり白い。
分岐まで緩く下り、さてどちらに行くか迷う。鍋割山・奥ノ院を登るつもりなのだが、その後御岳裏参道に回るか大岳山を経由して大岳鍾乳洞に下りるか、決めていなかった。前者は左の道に入り、芥場峠から鍋割山~奥ノ院~御岳平と右に回るように進む。後者はここで右折し、ロックガーデン経由で奥ノ院から先に登る左回りコースとなる。棒を倒す感覚で行き先を決める。裏参道へ行くことにした。
植林の尾根をたどって芥場峠、鍋割山への緩い登りに入る。路肩に雪が残っている。カタクリはほとんど終わっており、咲き残りも気温の低さのせいか花開いていなかった。スカウトの森にハイキングコースを分けさらに行くと、鍋割山を巻く道、さらにスカウトの森からのコースが再び出会う。このあたりは枝道が多い。
ひと登りで鍋割山山頂に着く。ここも薄く雪が残っていた。枝越しに見る石尾根はやはりかなり白い。緩く下り登りして、奥ノ院手前の岩場に出る。イワウチワが少し咲いていたが元気がない。昨日の雪が影響しているのか、それとももう花が終わりなのか。
一投足で北側が杉林の奥ノ院山頂に出た。南側は雑木林で日が差し込み暖かい。北面の急斜面もイワウチワの群生地がある。山頂から下るには急すぎるため、いったん少し下に戻ってから平坦な踏み跡を拾う。花数はかなりあるが、ここも雪の影響と思われ、みなこうべを垂れてしまっていた。残念だがこれも自然現象であり致し方ない。それにしてもこの間は西上州のアカヤシオを見損なったし、今日はカタクリ、イワウチワとも満足に拝むことが出来なかった。アンラッキーな山行が連続してしまった。
気を取り直して奥ノ院を下る。社を見た後のひとしきりの急な下りは自然林に囲まれ明るく、山野草も多い。エイザンスミレ、ナガバノスミレサイシン、タチツボスミレが群れて咲いている。岩場の下りから緩やかな尾根になるとカタクリもなんとか花開いたのを見ることができた。
天狗の腰掛松で一般の登山道と合流し、ほどなく長尾平に着く。売店が営業し、登山者も大勢休憩している。山を歩く人は、若い人が本当に増えた。今や山ガールだけでなく、男女の中高生(地元とは思うが)もけっこう山を遊び場にする人が増えてきたように思う。
御岳神社から旅館街を通り、裏参道に入る。今までの明るい雰囲気から一転、静かな深い森の中に入る。北面にもかかわらず風は無く、新緑が思った以上に進んでいた。ここだけが違う季節が流れている印象。小さな沢をまたぐ場所ではネコノメソウ、ニリンソウ、ミツバコンロンソウなどの花が咲く。スミレ、ヤマエンゴサク、ヒトリシズカも見られた。距離は長いが奥多摩の春を味わうにはいい場所である。歩く人は意外と少ない。
大楢峠に着く。海沢林道は崩落のため人も車も通行止めとのこと。今日は上坂を経由するので問題は無い。城山分岐から下山になる。急坂をジグザグに下りていくとシロバナタチツボスミレやイカリソウを目にした。白いタチツボスミレは初めて見たかもしれないが、清楚で上品な色合いが印象的だ。
奥多摩霊園の前に出てきた。ここから車道を下る。民家の庭先も季節の花が咲き春爛漫だ。太い車道に下りると、ずっと工事中だったトンネルがそろそろ竣工を迎えそうだった。城山トンネルといい、大楢峠の北側にある城山の下を貫通するらしい。これで奥多摩の愛宕トンネルからのバイパスがさらに延伸されることになる。これはいったいどこまでつながるのだろうか。
奥多摩駅に到着した。昨日の雪が今年の終雪となったかどうかはわからないが、ひとまず季節は一歩進んだようである。