もう2度と来ないだろう、そんなことを考える余裕が出て来た。さあ山頂だ。
山頂には10名ほど。登りの途中は誰一人として会わなかったので、人の姿を見たのは久々のような気がする。
Tシャツを木の枝にかけて乾かし、お湯を沸かしている人、昼食をとりながら談笑している老夫婦。別の道からやって来て、立ち止まらずにそのまま下山路に向かう人...。皆楽しそうだ。
なごやかな雰囲気を横目で見ながら、水の無くなった私はその場にペタッと座り込み、ただただ体力の回復を待つ。
「すみませんが、水を一杯いただけませんでしょうか」その一言が言えなかった。
自分が水で苦労しているのだから、他の人にとっても水は大切なのだろう。そういう思いが先に立ってしまっていた。
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