山の写真集 > 奥多摩 > 三頭山
  • -元気のない紅葉-
  • 鶴峠-三頭山-大沢山-都民の森
  • 奥多摩
  • 東京都/山梨県
  • 神楽入ノ峰(1447m),三頭山(1531m),大沢山(1482m)
  • 2019年11月10日(日)
  • 7.8km
  • 5時間20分
  • 674m(鶴峠-三頭山)
  • -
  • -
  • 中央線, バス, 五日市線
天気1

 

三頭山のトップページへ
2019年11月10日(日)
新宿駅 6:29
  中央線
高尾駅乗換え
7:51 立川駅 8:06
  富士急山梨バス
9:15   鶴峠
10:40 向山分岐
11:08 巻き道分岐
11:42 神楽入ノ峰
12:25 三頭山 13:00
13:13 三頭山避難小屋
13:23 大沢山
13:40 大滝分岐
14:30 ブナの路(少し歩く)
15:00   三頭大滝
15:30 都民の森 15:50
  西東京バス
17:00 武蔵五日市駅 17:21
  五日市線(ホリデー快速)
18:23 新宿駅

 

上野原駅のバスターミナルに着くと、sanpoさんに声をかけられた。同じく鶴峠から三頭山に登るというので、一緒に行くことにした。
sanpoさんは高尾山スミレオフで毎年ご一緒するが、以前にも三頭山や黒川鶏冠山で偶然会っている。行く山が似ているのでよく鉢合わせするが、最近は自分が新潟ほか遠方によく行くようになってからか、あまりバッタリがなくなってきた。
三頭山へは2ヶ月前、都民の森イベントに参加して都民の森のコースを歩いている。紅葉はやはり11月に入ってからがいい。


「ウェルカムのブナ」。向山分岐付近 [ 拡大 ]


バスはほぼ満員で増発が出た。終点の鶴峠に着くと三頭山方面、奈良倉山方面と登山者が分かれるが、奈良倉山に向かう人のほうが多い。鶴寝山から牛ノ寝を歩き、小菅の湯に下れるのが奈良倉山コースの魅力だろう。

鶴峠から三頭山に向かう道は昨年の新緑時にも歩いている。ブナやイヌブナほか多種多様の樹木が見られ、都民の森よりもずっと静かである。長いがきつい登りは最後くらいしかない。

登山口に入る。尾根に上がるまでは杉やカエデ、ケヤキ、クリ、ホオノキなどの雑木林である。ホオノキは好む生育環境が杉と近いそうだ。そう言われてみると、たしかによく同じ場所で見ている気がするが、ホオノキは地域を問わず、標高の低いところならでどこにでもある。

鶴峠バス停は、峠の少し南側にあり、簡易トイレが併設されている

鶴峠バス停

コースはおおむねなだらかで歩きやすい道

なだらかな道

白~クリーム色の葉をつけた小高木はアオハダ。樹皮の内側が青緑色

アオハダ

千手観音のようなブナ

千手ブナ

周囲の木々はまだ緑の多いところも

緑まだ多い

標高を上げると黄葉鮮やかなブナもみられる

黄葉進む

まさに森の中の一本道

森の道

オレンジ色に紅葉した対生の木は、ヤマボウシか、あるいはクマノミズキか

オレンジ色の紅葉

上品で印象的な形をした葉は、ミネカエデの一種と思われる

ミネカエデか

鶴峠道で最大、幹回り420㎝のブナ大木

コース上最大

ボリューム感に欠けるも鮮やかなブナの黄葉

黄葉みごと


尾根に出ると涼しい風が通った。この付近は標高1000m前後で色づいた木も見かけるが、まだ緑が優勢だ。イヌブナやブナ、コハウチワカエデ、イタヤカエデ、シデもある。登山道の両脇を彩る黄葉はコアジサイ。クリーム色に色づいた中高木はアオハダということが分かった。樹皮の内側が青緑なのでよくわかる。アオハダはこの先にもあちこちで見られた。
大きなハート形の葉も地面にたくさん落ちている。分裂していないカエデの一種、ヒトツバカエデだろう。

向山との分岐付近。倒木もなく、台風の影響はなかったか、あるいはすでに片付けられたのかもしれない。斜度のない歩きやすい道が続いている。
この鶴峠道は、ヌカザス尾根と結ぶ北面巻き道の合流点に来るまで、ほとんど標高を上げないため、頭上の紅葉もあまり変化が見られない。ただ、何となく樹木上の葉にボリューム感がなく、例年に比べてスカスカっぽい印象がある。これは先々週の御前山でも感じたことだ。台風や大雨で葉が飛び散るか落ちてしまったのだろうか。sanpoさんいわく「木に元気がない」。確かにそんな例えが当たっている。単に残された葉の量だけではなく、森全体の生命力が細いようにも見える。

緩い登りが続き、巻き道分岐の少し上、鶴峠道での最大のブナを見る。以前自分で実測したときは、幹回り420㎝だった。他の山でたくさんブナ巨木を見てきたので、初めて見た時の驚きは感じられない。それでもやはりこのブナは、他を圧倒する存在感がある。

12時を回り、三頭山山頂はにぎわう

お昼時

ムシカリ峠付近にあるツリバナ。三頭山にはここにしかないそうだ。可憐な花を咲かせ、新緑が早い。秋の果実はマユミに似る

ツリバナの木

三頭山避難小屋付近はもう初冬の趣

三頭山避難小屋

大沢山からは富士山が見えた

大沢山から

大人数のパーティーが多かった

グループ登山

真っ赤な紅葉と赤い実は、ガマズミの仲間のオトコヨウゾメか

オトコヨウゾメか

大滝への下山路にて、大沢山を望む

大沢山は端正

オノオレカンバは「斧が折れる」ほど硬い材質で、印鑑の材料になるらしい

オノオレカンバ

三頭大滝

三頭大滝

薄黄色に紅葉するクロモジ

クロモジ

都民の森に下山し、バスを待つ

都民の森Pへ下山


ところで巨樹・巨木などと一般に使われる言葉だが、環境省(庁)は1988年に巨木の定義をしている。それによると、地上130cmのところの幹回りが300㎝あるものを巨木と呼ぶそうだ。また、一般には幹回り500㎝を巨樹と言っている(樹高は巨木・巨樹の判定には入っていない)。
幹回り500㎝とは直径160㎝なので、この鶴峠道最大のブナは「巨木」だが「巨樹」ではないことになる。杉やクスノキならそこそこあるとは思うが、ブナで巨樹と呼べるものは日本でもあまりなさそうだ。自分が今まで見た中では、伊豆山稜線歩道の「手引頭のブナ」が唯一のブナ巨樹に入る。

道は急登に転ずる。神楽入ノ峰までは遊びのない登りでつらい。でも今日のルートできついところはここだけ。周囲の木々は次第に落葉が目立ち始め、紅葉もピーク過ぎとなった。しかし目線を少し下にすると、まだ緑の部分も多い。今年は紅葉した後にすぐ落葉してしまっているよう。まさに元気がないという表現がぴったりだ。
神楽入ノ峰の狭い山頂に立つと、急な登りもようやく収まり、アップダウンを交えて緩やかに高度を上げていく。この辺りはブナに代わってミズナラが多くなる。
少し先の岩ピークからは富士山が見えた。分厚い雲から頭だけが出ている。三頭山の山頂もようやく見えてきたが、比較的大きなピークをひとつ越える。

冬枯れと言ってもいい中を最後のひと登りで、三頭山西峰に着く。今までの静かな道と比べ、山頂は人であふれていた。大人数のパーティーも多い。
切り開きからまだ富士山が見えている。樹林に囲まれた三頭山山頂も、葉が落ちた今の時期は意外と眺めが楽しめる。北側は木の背丈が伸び、以前は見えた奥多摩湖も見えなくなってしまった。石尾根や都県境尾根の山並みはよく見える。

下山は都民の森の西縁を歩く。避難小屋から大沢山を経て三頭大滝方面へ下る。この予定していたルートも、今日はsanpoさんと偶然同じだった。行く山だけでなく、最近はルート採りも似てきたようだ。
山頂からの下りはすっかり葉が落ちている。前歩いた時もそうだったが、ほかの尾根で紅葉がまだ見られても、ここの南面の登山道だけは落葉が早く、すでに冬の姿になっている。樹種の違いはあるのだろうか。
オレンジ色に色づいたヤマボウシ、クリーム色のクロモジがわずかに残っていた。クロモジは春の花をつけた時期だと容易に同定が可能だが、それ以外の季節は他の木と紛れてしまう。葉が枝先に集まってつているくらいが特徴だろうか。
この尾根は南側ということもあり、アシビやモミなど常緑木も見られる。

三頭山避難小屋を過ぎ、大沢山へ登り返す。大沢山山頂も西側の樹林が伐られ、富士山が見えるようになっていた。真っ赤に紅葉した低い木が目を惹く。赤い実をつけており、ガマズミの仲間かと思うがはっきりしない。
分岐で左折し、下っていく。モミの多い、ややゴツゴツした尾根道となる。都民の森のコースとしては少し異色かもしれない。ここでもブナの大木があり、三頭山のブナの生育範囲の広さがわかる。紅葉した木々の向こうに大沢山のきれいな三角錐が見上げられた。

日の傾くのも早くなり、日陰になる部分が増えてきた。ブナの路に合流する。沢に沿ったこの道は、都民の森の道の中でも自然度が高い。9月の都民の森イベントでも歩いたが、少し登ってみることにした。
サワグルミ、シオジ、カツラの大木が次々と現れる。樹高は数10m、どれも高木でもある。ハルニレの葉があった。イベントの時にオヒョウ(ハルニレの仲間)の葉を見つけたが、それかもしれない。いずれも南関東の山ではなかなか見ない。三頭山はやはり樹種が多い山である。さっき「オノオレカンバ」というカンバの木があったが、他の山で見たことがない。

三頭大滝に下る。ウッドチップの道を歩き、都民の森で今日の歩きは終了する。
バスは増発して2台になった。今日は樹木の話ばかりになってしまって、sanpoさんには申し訳なかった。ただバスの中でも図鑑を見ながら、今日見た木の話になってしまった。