~膝上の深雪を踏みしめ~ 2008年2月16日(土)~17日(日)
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●白い稜線を最後まで 翌朝、朝食はなしにして、日の出前に雲取山荘を発つ。30分の急登だ。 寒いのかどうだか、あまりよくわからない。わからないほど気温が低いようで、5分ほどして、手袋を二重にしているのに指先が痛くなってきた。歩いているうちに温まってくるとは思うが、冷たいのを通り越して、痛く麻痺した感じになっているので少し気味が悪い。
やがて足の指も痛くなってきた。これは大変と思ううちに、東方から太陽が出てきた。そのうち手足の指も楽になってくる。 頭上に白んだ空が見えてくる。日に赤く照らされた雪面を見て、雲取山頂上に再び立つ。 石尾根の方向に関東平野の街並み、そして海が見える。目の前にキラキラ光るものが漂っている。ダイヤモンドダストだ。これは空気中の水分が氷結した結果である。 避難小屋に泊まった人によれば、日の出前は氷点下15度だったそうだ。 避難小屋前で朝食をとり、空が青みを増してから出発する。 石尾根を縦走する予定だが、これだけ雪が深い上での完全縦走は今までない。
小雲取の肩を下って、ヨモギノ頭を巻く道に入る。途端に雪が深くなり、足跡はあるが膝下までスボスボと足がもぐる。 巻き道から出て奥多摩小屋に出れば、再びはっきりしたトレースの上を歩くことになる。 ブナ坂から七ツ石山へは深い雪の中を登る。ピッケルを持った登山者も今日は数人見られ、雪山らしい雰囲気が感じられる。七ツ石山(1757m)頂上からは雲取山、大菩薩、奥秩父の白い山並みが遠望出来た。 さらに尾根筋を行く。千本ツツジへ向かう足跡があったので、巻き道ではなく稜線を行く。しかしこのへんになると鴨沢コースのようにたやすくは足を運べない。足跡から少し外れると途端にズボッともぐってしまう。多くて膝上あたりまでなのでどうにかなるが、千本ツツジ(1704m)頂上まではけっこう時間がかかった。 高丸山、日陰名栗ノ峰を正面にして、真っ白の緩斜面を下る。高丸山へもトレースが続いているが、ずっと追っていく体力はない。鞍部で巻き道に戻る。 空模様がだんだんと怪しくなり、鷹ノ巣山避難小屋に着く頃には、頭上が厚い雲に覆われていた。小屋前の寒暖計は氷点下6度。日が差さなければ標高2000mも1600mも寒さは大して変わらない。凍ったパンをかじってから鷹ノ巣山(1737m)に登る。 鷹ノ巣山からの富士山は上部が雲の中。回りに青空はなくなったが意外と周囲の山の眺めはある。一望する南関東の山々の北斜面は軒並み白い。
石尾根縦走も後半を迎える。高度が下がるので稜線を行くことにするが雪は思った以上にある。やはり雲取頂上から見たままに、今度の雪は標高の比較的低い山にもたっぷりあるようだ。 水根山(1620m)から城山(1523m)へのブナ林の稜線は、どころどころでトレースが消えている。降雪後1週間経っているのだが、石尾根を縦走する人はあまりいなかったようだ。 今日も、鷹ノ巣山から先は自分と同じ方向に歩いている人を見ていない。 笹の目立つ将門馬場から長沢背稜方面の視界が利く。この時期ならではの眺めだ。 最低鞍部の大堀から、普段なら六ツ石山の雪深い北面を緩く登っていくのだが、よく見ると六ツ石山に直接上がるトレースがついているので、辿ってみる。カラマツの森を越えると六ツ石山(1479m)山頂の少し北側に出た。 太陽は完全に雲の中。歩いて来た方角からはガスが流れてきている。雲取山はもしかしたら雪が降ってるかもしれない。寒いので早々に六ツ石山を辞す。少しの時間だが北風に乗ってハラハラと白いものが舞って来た。 所々土や石の露出した急坂を下る。三ノ木戸山手前からは北面を巻く道に入るが、稜線にもトレースがある。凍結を嫌い稜線にこだわって歩く人が今日はいたらしい。 高度を落とすと雪はさすがに少なくなる。植林帯に入ると、やはり少し凍結気味な道が続くので、鷹ノ巣山で一度外したアイゼンを再びつける。 その先でも、北面巻き道を避けて尾根側にトレースが続いている場所があったので、今度は尾根側に入った。すぐに合流するものと思ったら、どんどん本線から離れていく感じだ。 小さなピークに出た後、いつのまにか植林帯の急降下となった。もはや石尾根に戻るルートはなさそう。石尾根は何回も歩いているがこんな道に入ってしまったのは初めてだ。 方向からすれば三ノ木戸林道コースに下りそうだがどうだろう。 雪のなくなった斜面をどんどん高度を落とす。下に民家が見えてきた。廃屋の脇を通り、車道に出る。 古い民家と山荘風の建物の2軒があるのみの集落だった(あとで地図を見たら、城という集落だったようだ)。 前を歩いていた登山者が一人いた。同じ様にさっきの分岐に間違えて入ってしまったらしい。 幸い奥多摩駅を示す指導標があったので、これを頼りに再び山道に入り下っていく。やがて石尾根の終点である林道に合流した。 深雪の中の石尾根縦走、なんとかやり遂げることが出来た。雪の雲取山に登れば冬という季節にふんぎりがつき、春を待つモードに入る。 |