~雪は何処か 2月の石尾根~ 2007年2月11日(日)~12日(祝)
|
●石尾根を縦走 雪があまりにも少ないので、下山は三峰にすれば少しは雪踏みが出来るだろう思い心が動いた。しかしやはり富士山や奥秩父の山並みの展望に背を向けることが出来ず、予定通り石尾根を縦走する。
寒くもなく深雪で足が遅くなることもない。どんどん下っていく。奥多摩小屋の前でアイゼンを外す。 そして南面には雲ひとつない青空の下、富士山、南アルプス、奥秩父山塊、大菩薩や丹沢の幾重にも重なる山並みが展開する。特に七ツ石山(1757m)からの南アルプスは絶品だ。 こんないい天気なのに巻き道を使うのはもったいない。千本ツツジ(1704m)から続く稜線に足を踏み入れる。高丸山(1733m)の急登はこたえるが背後に南アルプスや大菩薩の展望が素晴らしく、何度も後ろを振り返る。 日陰名栗峰(1725m)を越えると正面に鷹ノ巣山が大きい。先月に登ったが巻くわけにはいかない。避難小屋前で休憩ののちなおも稜線を行く。先月は真っ白だった防火帯も、土が出ている部分のほうが多くなっている。
北のほうを見ると、長沢背稜越しに遠く、浅間山の雪冠が望めた。 鷹ノ巣山(1737m)頂上からは富士山が、やや逆光気味になるもののなお裾野まで見え続けている。 それにしても、2月の標高1700mの山とは思えないほど暖かい。そよぐ風もどこか春のほんわかした感触があり、冬特有の凛とした空気はここにはない。 水根山(1620m)、城山(1523m)と稜線上のピークを経て急坂を下る。園地のような平坦な場所は将門馬場。今は林の中だが、名前からもうかがえるように昔は広い草原で乗馬の訓練も出来るほどだったのだろう。 昔、東京都が山梨県からこの山地を買い取ったとき、一帯はススキの原だったそうである。その後水源林として育成するためにカラマツなどの植林もされたが、この奥多摩山地が樹林の山となったのは、やはり気候の変化も大きな原因のひとつだったのだろう。 気候が温暖になればブナなど寒冷帯の樹木は衰退するが、低山の雑木林は成長する。 自分が山を歩き出した10年前から比べても、樹林は確実に背が高くなっている。以前は眺めが良かったのに、今は木の枝越しの展望になってしまった場所も多い。三ツドッケは頂上付近の樹林が伐採されて展望が広がったということだ。 これからも眺めを良くするための伐採は続くであろう。山全体が木に覆われているのに頂上部だけ木がないという姿の山がこれからは増えるのか。 六ツ石山に近づくと登山道は日原側(北側)につく。とたんに積雪が現れ、暖冬でもここだけは冬の姿だ。 六ツ石山(1479m)頂上は2年ぶりだ。南アルプスの方角の眺めがよく、その手前にギザギザしている特徴ある姿の山は黒川鶏冠山か。 前回の石尾根縦走で寄るのを忘れた狩倉山(1452m)へ、今日はぜひ登りたい。 六ツ石山から石尾根に戻り、すぐに左手に大きな岩が出てくる。これを回り込むように高みを目指す。山頂部は植林と自然林の混合林で、「東京農大演習林」の表示がある。少し奥に進むと狩倉山と活字書きされた紙が木に貼られている。山名板のない頂上だった。 狩倉山から北には山ノ神尾根が伸びており、踏み跡はあるようだ。
正面に御前山を見ながら石尾根を下る。北に面している道には雪が残っている。こうして歩いてみると、日当たりの良いブナ坂上部よりも、むしろ標高の低い六ツ石山周辺のほうが雪が多く残っている。尾根の方角や樹林による日当たりの違いによるのだろう。 三ノ木戸山(1177m)に登れば尾根上の全てのピークを踏んだことになるが、ここでは指導標に従って北側の巻き道をとる。 やや凍結しており、左は急斜面なので転倒は禁物である。そういえば以前、ここがガチガチに凍っていてアイゼンをつけたことがあった。今日は足元に注意しながら進む。 植林と自然林が交互に現れ、やがて雪も見られなくなる。御前山の見える位置が進行方向から外れ、右側に移動していた。変わって正面には大岳山の姿が見え出す。ゴールまでもう一息である。 羽黒神社奥社を見たあと、木の間から奥多摩町のセメント工場が見下ろせるようになる。10年前に初めての山行で六ツ石山に登ったとき、この石尾根を下山路とした。どこまで下っても終わらない登山道に恐ろしささえ感じるようになった頃、ここから見た奥多摩の町並みに生き返る思いだった。 自分の今まで見た山の風景の中でも、印象強く残っているもののひとつだ。 車道を経由して再び山道、そして羽黒神社の境内横に出たところでスパッツやストックをしまう。5回目の石尾根縦走もここで終わり。奥多摩町の民家の庭には、紅梅に続いて白梅もほころび始めていた。 |