~春の足音聞く3月の雲取~ 鴨沢から雲取山、サヲウラ峠 2004年3月28日(日)~29日(月)
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●雲取の山姿を見ながら 朝、富士山がきれいだ。たおやかに連なる山並みも明るく、そろそろ春への衣替えのタイミングを探っているようにも見える。 雪が締まってきたのでアイゼンを着けて西斜面を下る。今日は三条小屋を経てサヲウラ峠、丹波に下る。 三条小屋からサヲウラ峠へは緩やかな登りが続くようだが、標高差300mほどを2時間かけてのものだから、それほどきつくはないだろうと予想していた。 水無尾根を下れば下るほど雪はなくなっていく。三条小屋の周りには全くない。 ここまで高度を下げると、もう山を下ってしまった気分だが、これからもう少し登りがある。気を引き締めていく。
権現沢、御岳沢の流れを山道はまたいで行く。明るい自然林に包まれた谷あいの道。早春のぬくもりを体一杯に感じる。早いもので、ウグイスもここ標高1000m以上にまで上がって来た。 高度を上げるとさすがに残雪が復活してくる。山腹に付けられた道は、一番日の当たりにくい北東斜面を向いている所が多い。そのためかこの付近の雪はシャーベット状ではなくまだサクサク感が残っている。森閑とした中雪を踏むだけの音が響き、ちょっとした雪国の雰囲気だ。 登山道が方向を変えるたびに、周囲は冬になったり春になったりする。 しかしこの道は何とも長い。あのカーブを越えたらサヲウラ峠だろう、そう思って曲がったカーブがいくつもあった。やはりこの道はサヲウラ峠側から三条の湯に下るのに使う道か。 御岳沢沿いの登りに入った頃、道の真ん中にカモシカの死骸が横たわっていた。こちらは冬を越せなかったのか、季節の変わり目にはいろいろ考えさせられる光景に出くわすものだ。
ふと東側を見上げると、樹間から石尾根・雲取山の山頂部が大きい。小雲取山と雲取山に挟まれた平坦な石尾根西端部。端正な台形の形が新鮮に映る。雲取山もこの堂々とした形で存在感を示していたのだ。 山腹から広い尾根に乗り上がると、すぐサヲウラ峠である。祠が真新しいものに変わっている。 ここからは樹間の眺めではあるが、大菩薩嶺の他に富士山も先っぽだけ望むことが出来る。今はカラマツ林に覆われた地だが、ここから少し東に行った丹波天平(でんでーろ)という場所はかつては広大なカヤトの原だったそうである。 自然は何も変化のない永遠のもののように例えられることが多いが、実はちょっとしたことがきっかけで大きく変化してしまう。
峠からは、奥多摩でも屈指の急坂を丹波まで下る。ザレ場が多く雪が残っているとやっかいな所だが、南斜面なのでほとんど雪はない。それでも高所恐怖症の人は足がすくむようなジグザグの下りが続く。落ち葉フカフカなのが気持ちいい。 植林帯を抜け畑地の道に入る。丹波の町並みがぐっと近くなる。 足元にはコガネネコノメソウやスミレ、民家の庭先は梅が満開だ。畑仕事に精を出す人も多く見られる。里も春である。 久しぶりに丹波山のめこい湯で汗を流す。源泉44℃の天然温泉はほのかな玉子臭で温泉気分を満喫でき、やはり東京近郊の温泉施設では一番の温泉である。 最後の最後で雪の山に登れてよかった。これで心おきなく春山モードにギアチェンジ出来る。 |