~春の足音聞く3月の雲取~ 鴨沢から雲取山、サヲウラ峠 2004年3月28日(日)~29日(月)
|
百名山の中でも、雲取山ほどその形をイメージしにくい山はないだろう。 「力のあるどっしりとした山容」と言えなくもないのだが、里からはその姿をとらえることは難しく、隣の七ツ石山から見た雲取山の頂稜部は、ちょっとした小高い丘にしか見えない。 今年の2月に秩父御嶽山から見た雲取山は、思いのほか端正な三角形をしていた。埼玉側から見るこの山はそれなりの威厳をもって存在感を示していることがわかったが、東京や山梨側からも、どこからかいい形で見える所があるはずである。 今回2日目に歩いた三条小屋からサヲウラ峠に至る道は、雲取山を特徴ある「形」として眺めることの出来る場所であった。
●雪解けの石尾根 今年の冬は登らないつもりでいたが、3月にまだ一度も登っていなかったこともあり、雪緩む季節のこの山を目指した。 奥多摩駅からのバスは、ハイキングの団体もいて満員だ。もう春山の季節に入ったのだが今日は、いったん冬の山に逆戻りだ。 登りのコースはいつもと同じ鴨沢から。奥多摩湖や多摩川の水面の揺らめきも、昨年までの1月や2月の景観と明らかに違う。どこか春の雰囲気をを漂わせている。 ダンコウバイの咲く山道をいつもの通り緩く登る。雪は全く無い。が、遠くに見える石尾根の稜線に白いラインが光っている。 行き交う人は多い。今日はサングラスをしている人が目立つ。春先の雪道は照り返しが強く、日焼け止めと共にサングラスは必須アイテムと思い、自分も今回初めて持参している。
堂所を過ぎるころから雪がちとなる。ただ日当たりのよいところには全くなく、付いている所も大方はシャーベット状の歩きにくい雪である。足を取られながらブナ坂への巻き道を歩く。 ブナ坂、そして石尾根に上がると、雪はやはり緩い。もう昼近いのでグチャグチャ道と化している。 今日から明日にかけては気温も高く、麓では最高20度になるようだ。サングラスをかけストックも2本取り出す。足の運びが思うに任せず、かなり体力を消耗する。 1,2月のそれなりに深い雪も体力勝負となるが、この3月の雪はまた違った意味で体力、そして歩行の技術が要求されるようだ。 奥多摩小屋を過ぎ、小雲取山への急登。何度も立ち止まって休む。今日は冬期では初めて、雲取山避難小屋に泊まる。そのため冬用のシュラフを持って来ているので荷物がかさばっている。当然重量もある。 雲取頂上は所々、地面の露出した残雪の山模様。富士山は春霞で見えないが奥多摩、奥秩父、丹沢の山々の展望は相変わらず素晴らしい。
今日は小屋に下りる必要はないので、頂上で思いっきりゆっくり出来る。展望を楽しみ、雪で水を作ってコーヒーを沸かす。国師岳に沈む夕日を見る。 この日は頂上の避難小屋付近まで、鹿の群れがやって来た。物欲しげな眼でこちらを眺めているがえさをあげるわけにはいかない。見るとだいぶ痩せ細っているようだ。この冬は何とか乗り切れたようだが、何となく哀れである。 同宿のもう一人の人と、カメラの話をしながら床につく。夜はさすがに氷点下となったが暖かく感じる。冬用シュラフではかなり汗をかいた。 |