~誰にも会わないアカヤシオの稜線~ 寺沢-熊倉山-酉谷山-長沢背稜 くまくらやま・とりたにやま 2001.4.27.~28. 曇り時々晴れ |
|
奥秩父山塊の東端、熊倉山から奥多摩の酉谷山に抜ける尾根筋は一般の登山道ではなく、半分は藪こぎの行程となる。しかし踏み跡ははっきりしており、この季節はアカヤシオツツジが稜線を彩り、一度歩く価値がある。避難小屋泊まりの計画で歩いてみた。 4/27(金)歩行6時間15分
●日野コースを登って熊倉山へ 平日の朝、秩父鉄道「御花畑」の駅舎には通勤・通学客がちらほらいる。その中に混ざって、ひとりザックを肩に乗車する。武州日野駅で降り、寺沢の山村に入っていく。 2年前の春に取り付いた時の登山口は、登山道の崩落で立ち入り禁止になっていた。もうしばらく車道を歩いて新しい登山口へ。 山の神を過ぎて、瀬音がだんだん近づいてくる。一ノ橋で橋を渡ると、新緑の自然林の中のゆるやかな登りになる。水の流れに沿って、ニリンソウが多く咲いている。 三ツ又で沢を離れ、屋根だけになった官舎の横を過ぎる。傾斜は増し、桧の植林帯を汗をかきながら登る。伐採作業中とのことで、ところどころ切り倒された桧が見られる。
植林が切れ、ようやくなだらかになるあたりになると、芽吹いている木も少なくなった。水場がある前後から、ハシリドコロがあちこちに見られるようになる。 バイケイソウの緑で覆い尽くされた平坦地は笹平だ。カラマツ林のなかの休憩に最適の地。 地図では、ここから山頂までたいした距離ではないように見えるが、実はここからが一番の頑張りどころ。 ロープのかかる岩っぽい急登をまじえ、標高を上げる。マイペースを心がけ、じっくり行かないとバテやすい登りだ。城山からのコースを合わせると、ようやく山頂が見えてくる。
熊倉山山頂には、秩父の低山でよく見かけるこぎれいな山頂標柱ではなく、鉄板にペンキで殴り書きされた山頂表示板がある。もうかなりの年代もの。 展望は西側の三峰山がわずかに望めるのみ。見下ろすと、ところどころアカヤシオツツジのピンク色が認められる。 平日であるせいか、ここまで2人の登山者に出会っただけ。山頂にいた人も、まもなく下山していった。 白久に下りるコースは工事中との注意書きがある。これから進む酉谷山への縦走路の方向を確認し、昼食とする。 ●酉谷山へ縦走 山頂から南に伸びる稜線を進む。導標は全くないが、道そのものは普通の登山道と変わらない。木の枝に付けられた赤・白のリボンに導かれて、登ったり下りたりが続く。 木々の芽吹きはないがアセビの葉にさえぎられて四囲の展望は思ったほど開けない。西側はおもに切り立ったやせ尾根で、大小いくつものピークを越えていく。 稜線上にアカヤシオの花が目立つようになるが、また2,3分咲きといったところか。GW後半には見事に咲きそろうだろう。
熊倉山から30分ほど、左右に展望が大きく広がる露岩のピークに出た。和名倉山を始めとする山々が、春霞みの中にもパノラマで眺められ、絶好の小休止地点だ。25000図で言えば、おそらく1451mのピークのところだろう。 アカヤシオも目線の位置にピンクの花を咲かせており、熊倉山単独で登りに来たときは、山頂での展望が開けないだけに、ここまで足を伸ばすといいかもしれない。長沢背稜はまだまだ遠い。 縦走路は露岩のところから少し引き返し、再び登下降を続ける。25000図では東側に三角の印、すなわち針葉樹記号が記されているが、なるほど左に桧(杉?)の植林が目立つようになる。 踏み跡がいくぶん不鮮明になってきた。次の明確なピークはおそらく1452m地点だろう。熊倉山からここまではいくつものピークを超えて来てはいるものの、標高はほとんど上げていない。この後の行程で一気に、標高差300mをこなすことになる。 1452mピークからは長い下りとなり、合わせて、左右にスズタケも見られてくる。スズタケは次第に高さと勢いを増し、手で払いのける作業が必要になってくる。こうなるとゆるやかな登り下りでもけっこうこたえる。 目線の位置にスズタケ、その上にまだ芽吹いていないダケカンバなどの木を見ながら、くねくねした踏み跡を行く。左前方に見覚えのあるピークが。小黒だろう。その後間もなく、スズタケの中にぽっかり空いた分岐点に出てきた。クイナ沢分岐で、右から大血川からくる道が上がってきている(マイナールートコーナー参照)。
ここからはもう藪こぎはない。鞍部に下り、酉谷山への登りにかかる。北斜面には雪が残っている。半年前もここらでどっと疲れがきたが、今回も同じだ。しかし何とか登り切り、山頂へ。熊倉-酉谷の縦走を果たした瞬間だ。 春霞みの中にシルエットで浮かび上がる石尾根の稜線はいつみても感動的だ。 避難小屋に下り、ひとりだけの静かな夜を過ごした。 |