現在は週に2回は出勤、3回は在宅勤務で仕事をしている。日々の生活面では時間的に余裕ができたが、週に5回外出していた時に比べると、やはり体を動かす機会がぐっと減ってしまっている。
寒いと低い山に目が向いてしまいがちだが、体を動かす意味で今週も少し標高差のあるところに登る。
サス沢山から、奥多摩の山々と朝日の差す前の奥多摩湖 [拡大 ]
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奥多摩湖の駐車場に車を置き、御前山に登る。湖南岸のいこいの路は12月より冬季閉鎖され、小河内峠を経由しての周回コースはとれない。いこいの路は、遊歩道化される前は冬季閉鎖なんていうものもなく、通年で自由に歩けていた。へたに観光資源になってしまうとこういうこともある。(ただし以前も歩行は禁止で、黙認されていたという話もある)
往復コースでは面白みに欠けるので、境橋に下山してバスで戻ってくることにした。
奥多摩湖出発は6時40分、日の出の時間だが山の北側にいるため、まだ薄暗い。今日の太陽はしばらくの間、御前山の大きな山体の後ろにある。肌寒い時間が続きそうだ。
小河内ダムを渡り、いこいの路の通行止め表示を確認してから、小広場から尾根に取り付く。標高1000m付近に雲の帯がたなびいてくる。岩場の急登を交え高度をどんどん上げていく。かなりの急傾斜だが、歩き始めて間もないなので快調に上っていく。
落葉樹は大方葉を落としているが、まだ黄葉を残したものもある。いったん緩くなってから、直登気味の登り返し。サス沢山に登り着くといつもの通り、奥多摩湖全景を見下ろす眺め。周囲の山は朝日を浴びて明るい部分と、まだ届いていない部分との明暗がくっきりしている。
穏やかな尾根道から人工林帯を抜ける。ブナが現れてくる。けっこうな巨木も存在し、大ブナ尾根の名前の下になったのではないだろうか。ブナといっしょにイヌブナも伸びている。
林相は貧弱ながらもさまざまな樹種がとり囲む尾根道となる。クリ、リョウブ、ヤマザクラ、イタヤカエデ、そしてここにはシデ(クマシデ?)が多い。
再び傾斜が強くなってくる。急だが踏み跡はジグザグについているのでそれほどきついことはない。
正面からようやく、朝日が差し込んできた。落ち葉の敷き詰められた斜面に何本もの陰陽の筋が刻まれる。そして木々の枝を透かして富士山や丹沢の山々が見えてきた。
朝早いので一番乗りかと思ったら、後ろから単独の女性が登ってきた。自分との距離がどんどん縮まっていく。惣岳山の山頂にはほぼ同時に登りついた。
少し下ってから御前山への最後の登りとなる。いつもなら湿り気味の緩斜面は凍って霜ザクザクのことが多いが、今回は乾いていた。この冬の関東地方は雨が少ないのが影響しているのだろうか。そういえば今年は、靴がドロドロになる山行があまりなかった気がする。6月の守門岳はさすがにぬかるみで大変だったが、それ以外は乾燥した山が多かったように思う。
登山は靴の汚れ具合が、山行の充実ぶりを示す尺度になると考えている。
山頂直下、富士山がよく見える特等席は、すでに取られてしまっていた。御前山は、ここを逃すと富士山の眺められる場所はほとんどない。山頂南面の樹林を切ってしまえば、富士山や丹沢主脈の眺めが得られるはずなのだが、そのような動きはない。優しい山容の割にはきつい登りが敬遠されて登山する人が少ないからだろう。
登山者が多くなれば、眺めが悪いと文句を言う人も出てきて、木が伐られることにもなりかねない。山頂のこの落ち着いた雰囲気がいいのだ。
一方、山頂北側はカラマツが伐られて、石尾根など奥多摩の山々の眺めがぐんと広がっている。はたから見て、端正でいかにも眺望に秀でた山の印象があるが、実際は玄人好みの渋い山である。
来た方向とは反対に下山する。御前山避難小屋を久しぶりに見る。前に比べてずいぶんきれいになった気がする。
コロナ感染防止のため、緊急時以外は利用を控えてくださいとの貼り紙がある。この小屋には泊まったことがないが、奥多摩の避難小屋にはずいぶん泊まらせてもらった。最近はやってないけど、避難小屋のまったり泊はしばらく無理そうだ。小屋の前からは大岳山の特徴ある姿が望める。
栃寄経由で境橋へ下るコースに入る。が、栃寄沢は崩落のため昨年から通行禁止なので、途中から林道を歩くことになる。
このコースは奥多摩体験の森のエリアに接しており、遊歩道が何本も分岐している。普通に下ってしまってもいいのだが、途中で遊歩道があればそれに入ってみることにした。
湧き水の広場、カラマツの広場とベンチや東屋がある場所を通過する。山腹のにつけられた穏やかな道を行くと、活動の広場への分岐があったのでそちらに行く。このあたりはカツラの大木が何本かある。
やがて活動の広場に着くと、大きな小屋があった。御前山避難小屋よりもずっと大きい。おそらく森林学習の場として使われているのだろう。
さらに下っていく。「境橋へ」の指導標はわかるが、「奥多摩駅へ」は少し遠すぎやしないか。わさび田の広場には、ワサビ田の横に林業用のモノレールが設置してあった。
ここからヒノキの広場に行けるようだが、登り返しになるようなので下に見えてきた林道に下りる。地図によれば、この先登山道に戻るはずなのだが見出すことができず、林道歩きのままトチノキ広場についてしまった。
栃寄沢に下る道はやはり通行止め。このまま舗装道を下ることになる。遊歩道のルートは少し単調だったが、緑豊かな季節は楽しいだろう。また、野鳥にもたくさん出会えそうなエリアだと思う。
栃寄山の家を過ぎる。カエデの紅葉がまだ残っていた。眺めが広がり六ツ石山付近と思われる斜面がよく見える。
境橋からは、いつもと反対方向のバスに乗って奥多摩湖に戻る。観光客もそれなりにいた。湖畔からは御前山がいつもどおりに端正な姿を見せていた。