天気のサイクルが1週間単位で回っているようで、先週に引き続き、この週末も天気がよくなさそうだ。午前中は持ちそうなので近場に行く。
御前山は初冬や雪の積もった日によく足を運ぶが、夏の暑い時期にもよく登っている。
元々の計画は御前山登頂後、小河内峠経由でまだ登っていない倉掛山に登る予定でいたが、思った以上に天候がよくなく、短いコースとした。1998年9月、自分にとって4度目の山が奥多摩湖から御前山、湯久保尾根下降だった。今回は時期もコースも全く同じである。
緑濃い9月の御前山登山道 |
奥多摩湖でバスを降りると、緑濃い山の上空には、雲が多いもののなんとか青空が覗いている。
小河内ダムの湖面を見て驚く。水位がものすごく低い。底のコンクリートがかなり広い範囲で見えてしまっている。水根側に設置されている放水路にはまったく水が蓄えられていない。
先日、薬剤を空に散布して人工雨を降らせる試みが行われたのがここ小河内ダムで、テレビのニュースで見た映像はまさにこの場所だった。しかし渇水がこれほどまで進んでいるとは思わなかった。
ダムの上を歩いて登山口へ。遊歩道を辿って展望広場への道と分かれると、すぐに自然林の中の急登が始まる。木々の緑は濃くくすみ、9月の色だ。今日も暑い中での登りとなりそうだ。
直線状の登りはどんどん高度を稼げるがやはりしんどい。それでも自分はここを何度も登っているので、ある程度余裕を持って登れている。早くも肩で息をして立ち止まっているのは皆、初めてここを登る人だろう。そういう登山者を何人も追い越す。最近はどの山へ行っても追い抜かれてばかりの日々が続いていたので、久しぶりの「爽快感」である。
檜の植林帯の脇を登り詰め、サス沢山に着く。奥多摩湖が一望できるが、あまりにも水が少ない。湖面にいくつも浮島が見られ、なんだかずいぶん格好悪い姿になってしまった。それでも水の色がきれいなブルーなのが救いではある。
いったん幅広の緩やかな尾根歩きとなる。ほっと一息つけるところだ。ミズナラの濃い緑が頭上を覆い、場所によっては夕方のような暗さだ。ただ木陰ということもあっていくぶん涼しさは感じられる。弱いながらも涼風が尾根上を横切っていく。
登山道に岩が現れるようになると、再びの急登。林床にはカメバヒキオコシやトリカブト、サラシナショウマなどを見る。フシグロセンノウを久しぶりに見た。
つらい登りは惣岳山まで続いた。ベンチで休憩する。今日は歩き始めは調子よかったが、結局いつものように汗びっしょりになってしまった。先ほどまで見えていた青空は全くなくなり、樹林の向こう側は鉛色一色となっていた。展望の期待はしないほうがよさそうだ。
両側に柵のつけられた自然林の中を緩く下り、登り返す。この部分はなぜかいつもぬかるんでいる。ひと登りした尾根の肩で、石尾根方面の眺めが開けるはずだが見事なまでに真っ白だ。人の声が聞こえ始めるとようやく、御前山山頂である。
意外なほど大勢の登山者がいた。中央付近には座れる場所がなく、樹林の奥まったところで休憩する。まあもともと展望のあまりない山頂なので失望感はそれほどないが、それにしても今年は天気に恵まれない山行が続いている。1日中晴れていたのは5月のお坊山、二王子岳以降ない。
ガスが山頂を覆い始めると、程なく雨が落ちてきた。予想よりかなり早く降り出してしまった。小河内峠方面に足を伸ばす予定を諦め、湯久保尾根を下山する。
御前山避難小屋の水場で水を補給し、樹林帯の尾根を下る。雨脚が若干強まり周囲の笹も濡れ始め、ズボンも濡れてしまう。ただでさえ暗い樹林帯なのに、今日は輪をかけて暗く、写真もままならない。
今日はあまり見るべきところのない山行かな、と諦めかけていたが、周囲を見ると意外と花が咲いている。秋に咲く花は、春や夏のものと比べて色合いも派手でなく、大きな群落を作る花もあまりない。ただ、やはり花の多い御前山だけあってけっこう多くの種類の花が見られた。
トリカブトの仲間であるレイジンソウは、今の時期の主役だろう。そして白い花びらがクルッと巻かれているのはクサボタンだ。他にもフシグロセンノウ、カメバヒキオコシ、キバナアキギリ、トリカブト、カシワバハグマ、ツリフネソウ、ヤマジノホトトギス、シラヤマギクと見ることができた。
湯久保尾根は長い分、急坂がほとんどないので足に優しい。檜などの植林が多くを占めているが、穏やかな自然林の中をも時々通過する。いったん緩く登り返して右手に作業道を分ける。その先に、右手に湯久保山山頂への踏み跡が分かれていたがそちらへは立ち寄らず、そのまま尾根を行く。
「宮ヶ谷戸バス停→」と書かれた指導標を何度か見ながら下っていくと、突然「小沢バス停へ」という看板が出てきた。あれっ、道を間違えたかな。小沢バス停なんてあったっけか?という疑問が湧く。でも進む方向は間違えてないはずなので、そのまま尾根を下っていく。
大きな岩の縁を回り込み、畑のような斜面を見る。雨は時折りザッと降ってくるが、樹林が雨を受け止めてくれて、体やザックにはあまり雨が当たらない。
何となく見覚えのある場所に出てきて、右の小道に入ると鳥居があった。やはりこれは宮ヶ谷戸への下り道である。車の音が聞こえてくるとようやく湯久保の集落に下り立った。住宅地を歩いて五日市街道に出る。
バス停を見ると「小沢(旧宮ヶ谷戸)」と書いてあった。バス停の名前が変更になっていたようである。昨年から今年にかけ、この一帯のバス停の名前が変更になっていた。宮ヶ谷戸は小沢に、小沢駐在所は宮ヶ谷戸に、御前山登山口は宝蔵寺という名前になった。
御前山登山口というバス停は消滅し、また宮ヶ谷戸の名前のバス停は移動したことになってややこしい。もっとも、バス停間の距離は短いので間違えてもあまり影響はないだろう。なお麓は雨は落ちておらず、穏やかな空模様だった。
展望は皆無だったが、秋の花を覚えられた1日となった。