山の写真集 > 奥武蔵・秩父 > 鐘撞堂山から陣見山、不動山
  • -展望広がる北武蔵の稜線-
  • 寄居駅-鐘撞堂山-陣見山-雨乞山-不動山-出牛峠
  • 外秩父
  • 埼玉県
  • 高根山(284m),鐘撞堂山(330m),陣見山(531m),雨乞山(510m),不動山(549m)
  • 2017年2月12日(日)
  • 18.0km
  • 6時間20分
  • 450m(寄居駅-不動山)
  • -
  • 満願の湯
  • 東武線, バス, 秩父鉄道, 西武線
天気1

 

↓マウスドラッグ可能↓

拡大地図へ Googleマップ
2017年2月12日(日)
池袋駅
小川町駅乗換え
5:30
  東武線
7:07   寄居駅 7:12
7:37   大正池
7:48   登山口
8:10 高根山
8:27 鐘撞堂山 8:32
9:05 円良田
9:35   虎ヶ岡城跡
9:50   大槻峠
10:35 陣見山
11:12 榎峠
11:45 雨乞山 12:10
12:25 間瀬峠
13:03 不動山(石尊大権現) 13:08
13:35 糠履峠
13:55   出牛峠
14:05 出牛 14:21
  皆野町営バス
満願の湯立寄り
16:28 皆野駅 16:33
  秩父鉄道・西武線直通
18:31 池袋駅

 

荒川北岸の、外秩父とか北武蔵などと言われている部分は、すっかりご無沙汰になっていた。
登山者は多くなく、奥武蔵や秩父の山に比べればずっと静かで、素朴ないい山が集まっている。麓の集落風景も郷愁を誘い、タイムスリップしたような感じを抱かせる。
今まで鐘撞堂山、陣見山~不動山、出牛(じゅうし)峠を経て横隈山などを歩いているが、今回はナマった体に喝を入れるべく、これらをつなげて歩いてみる。寄居駅から歩き出し、秩父鉄道の線路に沿うように、ぐるっと弧を描く感じだ。


不動山への登路にて、長瀞・皆野地区の町並みと武甲山を望む

寄居駅は東武東上線と秩父鉄道の接続駅となっているほか、JR八高線も通っている

寄居駅から出発

寄居町の里道にはロウバイがたくさん咲いていた

ロウバイ

灌漑用池の大正池の回りには住宅が建つ。ここから10分足らずで鐘撞堂山の登山口となる

大正池

高根山には祠とベンチがあった

高根山

鐘撞堂山の手前から、展望が広がり始める

展望広がる

展望台とあずまやのある鐘撞堂山山頂

鐘撞堂山

鐘撞堂山から、両神山を望む

両神山

鐘撞堂山と東京スカイツリー間は、直線距離で74㎞

74㎞離れている

鐘撞堂山から北面の眺め。右は榛名山塊、左端の高い山は浅間隠山の模様

上州の山

鐘撞堂山からいったん円良田に下山。正面に見える虎ヶ岡城跡に登り返す

円良田に下山

円良田城山ハイキングコースの指導標は付替え中のようで、新しい標柱にまだ文字盤がつけられていない

標柱に文字なし

大槻峠から陣見山への登りは、防火帯のような幅広の直線道となる

防火帯のよう

陣見山山頂の直前で、車道が尾根を切り通している

車道を何度も

陣見山山頂はテレビのアンテナ施設がほとんどを占めていて、休憩できるところがない。配置をもう少しどうにかできなかったのか

アンテナ塔が占拠

陣見山~榎峠間は自然林の見通しよい尾根道。榛名山塊がよく見える

展望よい尾根道


朝の寄居駅。ここで下車するのは初めてだ。駅前には大きな建物もあるが、すぐに静かな住宅街に入る。
銀行からお金を下ろし忘れ、交通費程度しかない。道すがらコンビニでもないかと探しながら歩く。国道に出ると200mくらい先にコンビニの建物が見えたが進行方向と逆なので諦めた。まあ山に登るのにお金は不要である。

国道を渡ると再び、閑静な住宅地となる。「鐘撞堂山、大正池」の指導標に従い里道を歩く。傍らにはロウバイ、スイセンが咲いていた。
鐘撞堂山は330m程度なので、目の前に見える丘のようなのがそうなのかなと思ったが、さすがにあれは低すぎる。その山に近づいていくと緩やかな登りとなり、小さな人工池が見えてくる。池に不釣り合いなくらい、大きな看板に大正池と書かれている。 同じ名前の池が天下の上高地にある。
アルペンガイド(2000年版)の鐘撞堂山の項を読むと、この寄居の大正池を「北アルプスの大正池から眺める穂高岳の風景を思い浮かべて苦笑の漏れるところだ」とあるが、これも随分と失礼な書きようである。確かにスケールや景観は比べるべくもないが、こちらの池には灌漑用水としてのりっぱな役目がある。池のほとりには住宅も建ち、町の一部として溶け込んでいるようだ。

池から程なく林道に入り、やがて鐘撞堂山の登山口となる。樹林帯のゆるゆる登りで、急なところはない。炭焼き小屋と思われる家の前を過ぎると次第に眺めが開けてくる。遠く都心のビル群、そしてスカイツリーが見えた。
やがて高根山の分岐となる。今日は長丁場なのだが、せっかくなので寄り道していく。
明るい雑木林を歩いていき、目立たないピークのすぐ先にそこだけ杉林に囲まれた高根山山頂があった。誰が担ぎ上げたのか、公園でよく見かけるベンチがある。反対側には正法寺へ下る道が続いている。

分岐に戻りあらためて鐘撞堂山へ。円良田(つぶらた)湖への道を分け、階段道が現れるとやや急な登りに転じ、右手に関東平野の広い眺めが得られるようになる。
鐘撞堂山山頂へは一投足で、10年前に来た時と同じ展望台が立っていた。山頂少し下には梅が植えられて下り、ぼちぼち開花している。展望台へは、上らずとも眺めはいいのだが上ってみる。関東平野が一望でき、奥武蔵の山々そして筑波山もよく見える。標高330mでこれだけ展望がいい山も珍しい。
そして北方へ目を転じると榛名山、浅間隠山など、群馬県の山が雪交じりの姿で眺められた。埼玉県の北の縁にある山は、上州の山が見えるのがいい。

円良田へ一旦下山する道に入る。さらに北に伸びる尾根を歩いていくと、その方向からの風がかなり冷たい。この山稜は上州からっ風をもろに受けるので、強い冬型の気圧配置の時は晴れていても極寒の尾根歩きを強いられることになる。風の吹く方向に尾根を背負うようになれば風除けになり、ほっとする。
20分余りで林道から離れて円良田の住宅地に下り立った。円良田城山ハイキングコースの標識に従って舗装道路を歩いていけばいいはずだったが、どうもこの辺り一帯の登山道に整備が入っているらしく、標柱は立っているものの文字板がことごとく外されていた。
付近の写真をネットで拾い、印刷して持ってきていたので何とかなったが、登山地図だけだとかなり迷ったところである。それでもこの先、ところどころでわかりにくい分岐に出くわす。

再び尾根に上がったところが筑坂峠で、波久礼駅からの道が上がってきている。さらに急な階段を登り切ってあずまやのある虎ヶ岡城跡に着いた。城郭らしく周りは段々になっている。すでに鐘撞堂山より標高は高く、疎林を透かしていま降りてきたその山がよく見える。
鐘撞堂山は戦国時代、北条氏が築いた鉢形城の見張台として用いられ、一方この虎ヶ岡には鉢形城の出城が建ち、軍事上の最前線として敵の侵入を防ぐ役割を担っていた。さらにこれから登る陣見山も、名前に戦国の世の名残がありそうだ。

この先、不動山までは以前歩いたコースだ。城跡からはゆったりした登り下りを経て大槻峠へ下り立つ。馬頭観音があり、峠らしい雰囲気を持っているが背後に舗装林道が伸びている。陣見山~不動山の登山道はこの先、至る所でこの林道に行き当たることになる。

峠から再び登りに転ずる。道は幅広く防火帯のようになり、一旦高度を落とした後の登り返しが長い急登となる。陣見山というと、この急登道が思い浮かぶ。
たかが500mあまりの山なのに、登るところはしっかり登る。どんな山でもきついところは必ずあるという、いい見本である。
登り切っていっとき平坦になり、前方の山頂もずいぶん近づくが、杉・檜の薄暗い植林に入ると最後の急登が待っていた。地面には薄く雪が現れる。

登り終えたところは尾根の切り通しとなっており、再び車道が交差する。苦労して登ったところに舗装道があるというのも力が抜ける。
さらにひと登りで電波塔の立つ陣見山山頂である。テレビ埼玉の文字のある電波塔が山頂を占拠し、休憩できるような場所でない。急登で疲れたがもう少し先へ進む。

この先は自然林の気持ちいい尾根道となる。樹林越しながら北側の眺めが開け、何箇所かでは遮蔽物なく榛名山や上信の山々を見渡すとができる。北武藏ハイキングコースの一番いい部分だ。陣見山は山頂の居心地の悪ささえ我慢すれば、とてもいい山なのである。
このあたりから頭上に雲が増え始め、太陽が隠れると北風がかなり冷たい。

緩々と下り、三たび車道に下り立った。ここ榎峠も展望が良く、長瀞八景の説明板がある。ここからはまた登り下りが繰り返される。が、印象的には登りばっかりのような気もする。
行く方向に芝生の斜面が見える。次の目的地である雨乞山だが標高510mにしてはかなり高く見える。ここまでずいぶんと高度を落としてしまっていたようだ。
未舗装の林道や登山道を行き来しながら地道に高度を稼いでいく。浅間山と思われる、真っ白な山体が見え隠れする。一気に開けた場所に出ると雨乞山山頂となった。

雨乞山山頂から、陣見山を望む

芝生の雨乞山

雨乞山から間瀬峠への下りは自然林豊かで、形よい不動山が見えてくる

自然林の道

不動山山頂は植林の中でひっそりしている

地味な山頂

不動山山頂の直下にある石尊大権現は眺めがいい

石尊大権現

糠履峠は車道の上だが、展望が開けて雰囲気はいい

糠履峠

出牛峠から10分足らずの下りで、出牛集落の西福寺の横に出る

10分で下山

出牛バス停。左奥に横隈山が見える

出牛集落


芝生の山頂からは南面が大きく開けて、荒川に沿って走る秩父鉄道や国道を挟んで目の前に釜伏山など比企山稜が大きい。今歩いてきた方向には陣見山が根張りのある堂々とした山容を見せている。遠くには武甲山や奥多摩、奥秩父の山も見えているが雲がずいぶんと青空を隠すようになっていた。
ここはパラグライダーの発着地にもなっているが今日は全くいない。やはり今日のような風の強い日は、制御が難しく危険で、空の散歩には適さないのだろう。

北斜面をジグザグに下っていくと、少し雪が残っていた。下り立った間瀬峠はまたしても車道である。標高384mということは雨乞山から120mも下ったことになる。
登山道に復帰すると自然林の尾根となる。樹林の向こうに見え出した不動山は三角錐のきれいな形をしていた。
標高549mの山頂まで160m登り返すことになる。ただ、さっきの陣見山とは違い随所で秩父方面の展望が開けて、思ったより明るい道である。上の方は北風が依然として強く、高度を上げるほどに体感温度が下がっていくのがわかる。

着いた不動山山頂は植林の中で展望なし。この北武蔵の主稜線は至る所で車道に寸断され、その上主峰2つとも山頂の展望がない。それでも山歩きのルートとして捨てきれない魅力があるから不思議である。
不動山山頂から少し下り、手書きの指導標にしたがって石尊大権現に寄っていく。前回はこんなところがあるとは知らず通過していたがここは大展望である。
武甲山始め奥武蔵の山が一望のもとで、眼下にはゴルフコースや射撃場の建物もよく見える。眺めのない山頂を完全に補っている。小さな祠があり、地元の人がひとり、その世話をしにきていたのか眺めに魅入っていた。寄居から登ってきたと言うと感心してくれた。

進行方向にそのまま行き、本来の下山道に戻る。すぐにまた、舗装車道に下り立つ。今日これで何度目だろうか。
苔不動への道を見送り、ここから先はこの車道をしばらく下っていく。ご夫婦が一組、車でやってきいていた。この車道も眺めが大きく開けているので、展望を楽しみに来たのだろう。
展望の良い道は糠掃(ぬかばき)峠まで続いていた。この峠からは秩父鉄道側に下山路が伸びているが、登山地図には載っていない。このあたりば広く伐採が入ったようで、以前は藪深かったとのことだ。振り返り見る不動山も、刈り上げた頭のように植林帯と伐採帯が半々になっている。
さらに車道を下り、今日のとりあえずの目標点である出牛峠まで来た。糠掃峠、出牛峠いずれも舗装車道が通り、登山コースとしては敬遠されがちだが峠の雰囲気はいい。

出牛峠からは、普通ならば秩父鉄道の野上駅まで下るのだが、反対側の出牛集落に下ることにする。以前横隈(よこがい)山に登った時にも使っている道だ。しかも出牛に下ると14時21分発の皆野行きバスが利用でき、今なら時間的にも十分間に合う。
出牛への下山はあっという間で、峠から10分もかからなかった。横隈山がよく見える出牛バス停を見つけ、今日の山はひとまず終了となる。

今回調べていて初めて知ったのだが、皆野駅から来るこのバスのもう一つの終着である浦山は、城峯山のあまり知られていない登山口になっている。採掘でなくなってしまった男岳、女岳の麓にある浦山集落は、秩父の中でもまるで忘れ去られたような存在である。
春先は花もきれいに咲くようだし、4月ごろ城峯山に登った帰りに立ち寄ってみたいところである。

皆野駅に直接戻らず、途中下車して秩父温泉に寄っていくことにした。これによりさらにプラス1キロの歩きが追加されるが、冬のナマった体を絞る目的は果たせそうだ。
皆野駅前のスーパーで缶ビールを調達し、西武線直通の電車で乗り換えることなく帰る。