~秩父の雑木林に早春の陽射す~
タイトル

ふどうやま(549m)、じんみやま(531m)
2003.2.15.(土) 晴れ時々曇り

マップ
7:30秩父鉄道・野上駅-7:55洞昌院-8:15ライフル射撃場入口-8:55苔不動-9:20不動山9:25-9:50間瀬峠-10:10雨乞山10:35-11:05榎峠-11:45鉄塔12:05-12:08陣見山-12:40大槻峠-13:00虎ヶ岡城跡13:10-14:00かんぽの宿寄居15:15-15:30波久礼駅
歩行時間:5時間45分
Home


先月の城峯山に続き、北秩父の低山に登る。
長瀞と言えばライン下り、山では宝登山や日本水(やまとみず)の釜伏山が有名だ。不動山と陣見山はそれより北側に位置するなだらかな稜線上の2座である。
登山者で賑わう奥武蔵山域よりもさらに北方、埼玉県の低山もこのへんまで来ると静かな山歩きが期待出来る。

池袋駅より東武線で小川町・寄居と乗り継ぎ、秩父鉄道に乗換える。車窓のすぐ右側に迫って見える山々が、今日歩くコースだ。野上駅で下車する。
国道を渡り、あたりの開けた集落に入って行く。正面に不動山が見えている。
不動山
野上から不動山
洞昌院
「萩の寺」洞昌院
不動山山頂
不動山山頂

軒先にロウバイの咲く民家もまばらになると、「萩の寺」の案内板とともに、山すそに洞昌院(どうしょういん)の社と墓地が見えて来る。10月あたりになると萩の花で彩られるそうである。敷地内の高みに上がると秩父盆地の眺めが広がる。

再び車道に戻る。沢沿いの緩い上り坂となり、何度か橋を渡るとライフル射撃場の看板を目にする。
八重子3号橋の手前、右側の斜面に青い金網フェンスがあり、それに沿って山道が上がっている。「苔不動」(こけふどう)と書かれた標識板に従い、その道に入って行く。
すぐに分岐となるが直進する方向は林道工事中だった。右の道を登る。途中で、車も通れそうな幅広の道(未舗装)となる。時々仕事道のような分岐もあるが、テープと「苔不動」を示した木板が随所に打ち付けられていて、それに従って進む。

右手に涸れた沢を見る。「苔不動」の標識はその沢筋を示していて、えっ、こんな所を?と思うような所に入って行く。しばらくは道ではなくて沢を登って行く感じだ。しかもヤブと倒木が多い。
10分ほどで踏み跡らしきものが現れ、それを伝う。杉の植林の中の急登、しかもヤブがすごい。苔不動までは南側から車道が通じているので、こんな所を登る人はほとんどいないのだろう。そう思っていたら、上から一人下りてきた。

進行方向に造林小屋らしきものが見えて来るが、踏み跡は右に続いている。ここは迷ったが右の踏み跡をたどることにした。涸れ沢もそれに沿って上っている。
すぐに大きな岩と馬頭観音像のところを通り過ぎる。

歩きにくい急登が続く。ようやく背後に展望が開けてきた。落葉樹の尾根に上がり、岩壁に突き当たる。

少し左に行くと苔不動だった。ここは、先ほどの洞昌院の奥の院だそうだ。
すぐ上に見える舗装車道がうらめしい。しかし今日歩くコースは、途中で何度も車道をまたぐので、これくらいのことで気分が壊れてはあとが持たない。

その車道に上がると、北側の展望が開ける。城峯山で見た山々の連なりをまた目にする。
榛名山や、雪冠を被った浅間山が意外に大きい。さすがここは埼玉県の北のふちだ。

雪が残り滑りやすい車道を下り気味に行き、左に大きくカーブするところで、不動山への登山道に入る。登山ガイドやインターネットの報告などで、不動山の山頂からは展望が素晴らしいとか、眺めは全くないとか、さまざまな紹介がされているが、もうすぐ実際にこの目で確かめることが出来る。
左側が杉林のヤブっぽい急登を詰める。果たして山頂は...何も見えなかった。
一箇所だけ切れ間から浅間山が見えるものの、四方が見事なまでの植林のカーテンだ。簡単な山頂標識も「海抜540m」とかなりアバウトである(実際は549m)。
雨乞山から
雨乞山から
北面の展望
北面の展望

日が射さず寒いので、早々に山頂を辞す。何も見えない杉林の急坂を淡々と下りて行く。
やがて左に車道が見えて来る。ロープのかかった山腹を慎重に下り車道に下りる。間瀬峠だが特に標識はない。

北側の林道に入り15mほどで再び踏み跡へ入る。「雨乞山」への表示がある。このへんの指導標には白塗のベニヤ板に「ロングウォークちちぶ路」と書かれている。
ようやく雑木林の明るい道を登れるようになる。北西面だが標高が低いせいか雪はほとんどない。

やがて、車の通れる幅の林道に出る。さっき別れた林道かもしれない。杉林を緩く上ると、南側が展望の開けた切り開きへ、さらに50mほど行くとさらに眺めの大きい草地に出た。雨乞山の頂上(510m)だ。

パラグライダーの発進地としても使われているそうで、南に武甲山・丸山・登谷山など奥武蔵の山が望め、眼下に荒川と、箱庭のような秩父鉄道沿いの街並みが見下ろせる。子供の頃、電車の模型で線路を作って遊んだときの記憶が掘り起こされる。
北東方向に赤城山だろうか、白い頂も遠望される。

再び未舗装の林道を歩く。北方には車道も走っておりどちらを歩いてもよさそうだ。車道のほうが北面の展望がいいかもしれないが、雨乞山での眺めを楽しむなら林道を歩く。
なお、この林道には、「北武蔵ハイキングコース」との案内板が随所に立っている。

榎峠で車道を横断する。ここから陣見山直下までは、自然林の清々しい尾根歩きが続く。所々で北の展望が開け、前橋市の広大な平野が見下ろせる。時々人ともすれ違うようになる。

植林帯に戻り岩谷洞への分岐を見送る。そのすぐ後に送電鉄塔の立つ小さな広場があり、そこで休憩する。
ここも樹林が成育し、本で読んだほど広い展望は得られなく武甲山、蓑山、丸山あたりが望める程度だ。植林の多い山域は短期間で眺望の度合が変わってしまうので、ガイドがあまりあてにならないことが多い。

もう1度岩谷洞への道を分け、ひとしきり急登すると陣見山山頂(531m)となる。しかし鉄塔と砂袋、おまけに工事中なのかトラクタが上がってきていて油の臭いまでする。展望もゼロで、ガイドに書かれているように、立ち止まることなく山頂を下りる。

陣見山からは大槻峠を目指し、急坂を下って行く。
この時間からかなりの登山者が登って来る。山自体は魅力に乏しいのだが、西側の自然林の尾根歩きが目当ての山登りなのであろう。
スミレ
スミレ

奥多摩の石尾根のような、防火帯の広い尾根をどんどん下る。2,3のピーク越えがなかなかきつい。こちらから登りに取るほうが大変かもしれない。
道はようやく斜度を失い、大槻峠に着く。2つの石塔が立ち並び落ち着いた雰囲気だ。が、またしても下に車道が覗いている。

ここから下山するコースもあるが、今日はもう少し尾根歩きを続ける。さらに東進し、虎ヶ岡城跡を目指す。
すでに標高は300m台にまで落ちてきている。雑木が多くなり、春の雰囲気が感じられるようになる。

いくつかの小さいコブを越えて、あずまやのある虎ヶ岡城跡へ。地形図上では337mピークである。
雑木の中の雰囲気のいい小ピークからは、円良田湖(つぶらだこ)への下り道が東側に下りている。

下山はこのまま南の尾根をゆるやかに歩き、「かんぽの宿寄居」まで行く。
片側に植林をかすめ、日当たりのいい草付の斜面に来たところでタチツボスミレを数輪見つけることが出来た。
昨年同じ日に、同じ北秩父の破風山でダンコウバイを見て、それが昨年初めて見た花だった。今年は初花がスミレとはちょっと調子が良過ぎるかもしれない。
波久礼駅
波久礼駅

道はこの後、さして斜度のない穏やかな雑木林の中を行く。「ハイキングコース入口」の分岐を左に見てさらに直進。
右に荒川や波久礼の街並みを見下ろしながら、快適な歩きとなる。早春にかけてのちょっとした尾根歩きにいいコースと思うが、そのあとの季節はヤブが繁茂するだろう。

再び円良田湖からの道を合わせると、左に大きな建物が見えて来る。ここ「かんぽの宿寄居」の日帰り入浴施設を利用する。
登山道はこの建物の際で終わっている。

浴場は6階にあり、不動山、釜伏山などの展望が素晴らしい(もしかして本日一番の展望?)。湯質もよく採光豊かな気持ちのいい一浴となった。

波久礼(はぐれ)駅へは車道を15分ほど。今日は野上-樋口-波久礼の3駅を取り囲むように、ぐるっと尾根歩きをして来たことになる。柔かな早春の日差しをいっぱいに浴びた一日だった。


Home