2021年の登山は破風山で終了となった。
今年は後半から脚力の低下、膝・肘・手首など関節の痛みに悩まされ、日常でも思うような行動ができない日々もあった。
山は標高差のない、簡単に上れる山ばかりを選んで続けてはいた。しかし体力が続かず、一時はとにかく、飯を食うために仕事(出勤)だけにエネルギーを集中しようと思ったりもしていた。
年も押し詰まり、ようやく普通に余裕をもって動けるようになってきた。
破風山山頂
|
標高の低い楽な山のうち、破風山には今年はまだ登っていなかった。2002年の初登以来、もう何度も登っているが、一昨年は見事な紅葉を見ることができ、この山の魅力を再発見した。
今回もその時と同じ12月だが、下旬なので木々は完全に落葉しており、いつもの冬の破風山だった。
破風山に車で行くのは初めて。周回コースは取りづらい山だが、秩父温泉「満願の湯」の駐車場に停めて稜線を歩く。大前から上沢辺に下山した後は車道を歩いて戻ることにする。
高速で事故渋滞にはまり、歩き出しは9時近くになった。駐車場から登山口までは、湯歩道と書かれた遊歩道を歩いていく。満願の湯の隣にあった公営の日帰り温泉は、特養老人ホームに変わっていた。
風戸登山口から、畑地脇につけられた坂道を上がっていく。少し登って振り返ると、冬の外秩父地域の山並みと民家が見下ろせるようになる。新旧の民家が数軒立ち並ぶ風戸集落も、年末とあって静かだ。
集落の先で登山道に入る。ここを登りにとるのは初めてだ。きついところは全くない。
ほどなく山靴の道と書かれた前原岩稜コースが合わさる。破風山の登山コースが皆野アルプスと言われる理由のひとつがこの岩っぽい稜線を持っていることで、最近は人気があるようだ。破風山は小さい山ながら、東西に様々な登山コースを持っていて意外とバラエティがあって面白い。
自分が前原コースを歩いたのはもう10年以上前になる。その頃はあまりポピュラーではなく、どちらかというとバリエーションルート扱いになっていた。山岳雑誌にみなみらんぼう氏がこのルートの紹介をしており、それを参考にしたものの、取り付き口がよくわからなくて大いに迷った。
前原コースは変化があって歩きではあると思うが、自分的には少し中途半端な印象である。南側からの登路も人工林が多いので、やはり風戸から山頂~天狗山~大前という今日のルートが一番好みだ。
合流点からは緩やかな傾斜の尾根歩きとなる。時折、秩父盆地の風景が木の枝越しに除く。落葉樹が増えてくると猿岩となる。赤々としたモミジ紅葉がすばらしかった場所だ。今の時期は見通しと風通しのいい場所である。
落葉樹の気持ち良い道が続き、あずまやで野巻コースを合わせる、アシビの多いヤセ尾根に転じると、破風山山頂に到達する。
南面の武甲山を中心とした奥武蔵・奥多摩の山々の眺め、秩父盆地の家並みが広く見渡せる。両神山もすばらしい。北東側には日光男体山が白くなっていた。
今日は秩父の最低気温が-6度ということだったが、もう10時だし、無風で日差しいっぱいの山頂は寒さを全く感じない。人もまばらで、ゆっくり時間をかけてうどんを煮込む。
山頂から西に下る。札立峠を直進し、緩やかな登り返し。ニョッキンボウの岩塔あたりまで来ると、何組かの登山者とすれ違うようになる。
今までここを歩くときは逆コースばかりだったので、岩場・鎖場の登り下りがいつもと反対で初めて歩くコースのようだ。
次に登りつくのは標高634mの「武蔵展望台」。ここで食事にすることも考えていたが、意外と狭い場所だったので破風山で済ませて正解。
大前山まではヤセ尾根を交えた楽しい稜線歩きとなる。そのあとの岩場の下りが思いのほか大変だった。鎖をつかみながら下るが、足元が見えないところがあるのでスリルいっぱいだ。登りだと一気に行ってしまうが、今日は勝手が違う。さっき足元がおぼつかない老齢の人を抜いたが、あの人もここを下るのだろうか、気にかかる。
人のことを心配する心理が、自分にもまだ残っていた。
大前への下り道を分けて、目の前の天狗山に登る。今日一番の急な登りである。
山頂は松の木に囲まれており、眺めは今一つだが、破風山から歩いてきた尾根が見通せる。けっこうアップダウンの目立つ、コブコブの稜線である。小休憩してから下りに入る。下る斜面も小さな尾根になっていて、気分のよいところだ。
大前の山上集落も、静かで人の気配がない。ここに住む人の年齢層はどのあたりなのだろう。他の山村と同様、けっこう高いのだろうか。このくらい標高の高いところで暮らすには車が必須と思われるが、高齢者の運転が問題視されてきている。若い人のフォローがなかったら、こういう山上集落も今に人がいなくなってしまうかもしれない。
登山道に戻って、人工林のジグザグをひたすら下る。単調ではあるが、今日は久しぶりの山で、見る風景それぞれに新鮮さがある。小さな沢を渡り、上沢辺の車道に下り立つ。
秩父華厳の滝には立ち寄らず、温泉に向けて車道を歩く。水潜寺バス停まで5分、ゴールの満願の湯まで30分ほどであった。
歩いた時間は3時間に満たないほどだったが、1ヶ月近いブランク明けにしてはよく歩けたと思う。
満願の湯で1年分の汗を流していくことにする。日帰り料金は休日だと1000円という高額になってしまったが、今日は平日、しかもJAF割引が使えたので800円だった。
今年は3年ぶりの北アルプスや、谷川連峰の紅葉が印象に残った1年だった。ブナ探索行としては目立った成果がなかったのが心残りである。
また、車を新しくして、居住性や燃費が向上し山に行きやすくなったことも大きい。道具は取り替えがきくが、体はそうはいかない。無理せず、しかし時には思い切って、来年も山を楽しみたい。