~奥秩父の孤峰は遥か~
2008年6月1日(日)~2日(月)
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奥秩父で、長いこと登らずに残っていた山である。 登らずと言うより登れなかった。登山口の三ノ瀬へはバス便がなく、塩山駅からタクシーで1万円かかるのだ。しかもこれは10年近く前の相場である。その後タクシー代が値上げされ、今はいったいいくらかかるのだろうか。 今年より車で山に行くようになり、登山対象の山が格段に増えた。3月の鳥ノ胸山に続き、登るのを諦めていた山シリーズの第2弾である。
●爽やかな青空の稜線を北へ 勝沼ICから県道、大菩薩ラインをひたすら北進。柳沢峠までつづら折の坂道を車で上がる。上のほうはガスがかかっていた。 車の運転もずいぶん余裕が出てきた。が、峠道などではすぐ後ろに車をつけられてしまうので、そのたびに脇にそれ、先に行ってもらうようにする。
おいらん淵手前の細道に入る。舗装路だが道幅が狭く、対向車が来ないことを祈りつつ運転する。幸い1台も出会わずに、7時半、三ノ瀬(一ノ瀬キャンプ場)に着く。 民宿しゃくなげで駐車場料金を払う。一泊1000円だった。付近は静かで明るい地で、ここでのんびり泊ってみたくなる。しかし今日は、今年初めてのテント泊。重い荷物を車から引きずり出し、出発する。 車道を少し上がると、すぐに指導標がある。ダートの林道に入り緩い坂を上がっていく。今日歩くこのコースは、車も通れる林道が将監小屋まで続いている。ただし許可車両のみ通行可の林道で、もっぱら将監小屋の方が荷揚げに使っているのであろう。 ムジナの巣と呼ばれる水場の手前で、細い登山道を分ける。さらに七ツ石尾根の分岐を見る当たりから、瑞々しい自然林に包まれた登りになる。足元にはスミレが咲き続いている。天気も上々で荷物の重さが気にならない。シラカバの白い樹皮が日に当たり輝きを増している。 南面の眺めが開けた場所に出る。大菩薩嶺が見えるが分厚い雲の中である。自分が登る山はまだ青空の下だ。しかし今日は天候悪化が早いかもしれない。 樹林の向こうに奥秩父の主稜線が見えてくる。落葉樹の尾根は新緑が目立つが、まだ芽吹きが始まったばかりの部分もある。将監峠への道を分けて、将監小屋の前に出る。目の前にはスキーゲレンデのような広々とした防火帯。 ここに来たのは、2000年の雲取山~甲武信岳縦走のとき以来だ。ずいぶん間があいてしまった。この広々とした場所にテントを張る。 しばらくすると小屋番さんが上がって来たので、テント申し込みをする。シャクナゲの事を聞いたら、ちょうどいい時期だと思うけど、今年は裏年でたくさんは咲いていない、とのこと。 小さいザックに食料やら雨具やらを詰め、出発する。天気のいい今日中に和名倉山に登ってしまうつもりだ。 将監峠から笹原を歩いて牛王院平(ごおういんだいら)、さらに緩く登って山の神土(かんど)に着く。 和名倉山への道に入ると、とたんに道幅が細くなる。最初は御殿岩のピークの東側を巻くルートだ。笹が刈られているが根元が少し残っており、さらに路面が外に傾いているのでちょっと歩きにくい。これがずっと続くのならきついが、巻き道を終え尾根状になると少し歩きやすくなった。 山の神土から15分ほどで、小さな沢をまたぐ。奥秩父はこのような高いところでも意外と水は豊富だ。 形よい三角錐のリンノ峰を西から巻く。オオカメノキの白い花、そしてシャクナゲが現れるが、なるほどたしかに花は数えるほどだ。また花芽も数えるくらいしか出ていない。しかし眺めのよい尾根に出て東仙波へ続く岩尾根を上がっていくと、まとまって咲いていた。 群落といえるようなものではないが、そこそこ咲いていて安心する。ただし見頃には少し早かったようだ。もう1週間先か。 6年前、北陸の富士写ヶ岳に登ったときもシャクナゲの裏年だったが、あのときは見事なまでに全く咲いておらず、たしか1輪か2輪しか見れなかった。奥秩父のほうは裏年でもある程度は咲くのか。 やはり日本海側は気象同様、植物の生育に関してもいいときと悪いときの差が大きいのかもしれない。反対に太平洋側はそう極端なことにはならないのではないか。 |