~芽吹きの森と山の湯~
タイトル
たばでんでいろ(1343m)から
さんじょうのゆ、ひりゅうざん(2077m)

2009年5月2日(土)~3日(日)

親川-丹波天平-サオラ峠-
三条の湯-飛竜山-サオラ峠-丹波

マップ
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●禿岩展望台の絶景、丹波へ下る
5/3(日) 三条の湯~北天のタル~飛竜山~禿岩~前飛竜~熊倉山~山王沢~丹波 曇り時々晴れ


前飛竜からミサカ尾根を一望する

朝の空に青空はない。まだ日の差さない三条の湯テント場で、寒々と食事を済ませ、荷物をまとめ出発する。
北天のタルまでは、沿面距離3kmで標高800mを登らねばならない、急登また急登の道である。ザレてやや危険な箇所もあり、朝だといってボーっとしていられない。

山腹を左から緩く巻くころ、ミサカ尾根のなだらかな稜線が見上げられる。
荷物の重さに耐えかね、10分ほど休む。そこから少しでカンバ谷の源頭で、水が流れている。きつい登りはなくなってきた。もう1本の沢の源頭で水を補給する。標高が高いにもかかわらず水を得やすい。

ふと左手の斜面を見上げると、雪が残っている。足元には背の低い笹が出てきて、頭上が広くなる。やがて北天のタルに到達。縦走路との合流点だ。

北天のタルから
バイカオウレン
飛竜山頂上
禿岩から南アと国師ヶ岳

天気はさほどよくないが、開けた気持ちのいい場所だ。ここまで来るとずいぶん高いところまで登ってきた感がある。
いつもはそう人通りの多い縦走路ではないが、この日はさすがに何人もの人が行き交う。雲取山から縦走してきた人も何人か見かける。

わずかに雪が残る
ダケカンバ
先ほど見た残雪の脇を通り、針葉樹林の道を進む。岩のあるところにはイワカガミの葉がびっしりとついている。しかし花はまだない。その代わりにバイカオウレンが花期を迎えている。
尾根筋の少し下につけられた縦走路は傾斜こそ少ないものの、くねくねと曲がりくねり、険阻な岩壁に付けられた桟橋を渡るなど、なかなか変化があって単調さを感じさせない。
北天のタルから25分くらいで、右手の斜面に31/32と書かれた林班界標が現れる。ここが飛竜山への取り付き点だ。10分ほどの急登で飛竜山頂上に着く。

樹林に囲まれた頂上は南側が少し切り開かれている。以前来たときは、大菩薩嶺や富士山を真正面に見据えることができたが、木が生育して見えづらくなった。
静かな雰囲気の山になって、ある意味この山らしさを感じる。展望はこの下の禿岩にまかせておけばよいのだ。

頂上に居合わせた人が、この頂上は三角点はあるが最高点ではなく、少し西に行ったところに2077mの最高点がある、と言う。地図を見るとたしかにそうだ。今まで気づかなかった。
その方向に進んでみる。たしかに頂上より少し高い場所はあるが、はっきりどこという場所は特定できなかった。
飛竜権現まではシャクナゲの木をかきわけて下る。踏み跡を見失いそうになるほど、野趣あふれる道である。

飛竜権現に下りさらに西に進む。禿岩の展望台。今回の山行で一番の展望が得られた。富士山、南アルプスはもちろん、金峰山や国師ヶ岳、甲武信岳などの奥秩父主脈、大菩薩嶺、御坂の山々。東仙波のカヤトの草原もよく見える。甲府方面は雲海になっていた。
奥秩父の黒々とした稜線の上には八ヶ岳の白い姿も。そして南アルプスと金峰山の間に見える白い稜線は、中央アルプスだろうか。
この展望台は足元が切れ落ちており、そのスリル感がこの展望の素晴らしさを倍加させている。奥秩父は金峰山や雲取山、甲武信岳など展望のいい山が多いが、禿岩からの眺めも決して引けをとらない。

今日も賑わうサオラ峠
新緑の下り
丹波山村に下る
登山者が並ぶ丹波バス停

ちょっと長居してしまった。下山はミサカ尾根を行く。シャクナゲとイワカガミの葉を見ながら下る。急坂と平坦道を繰り返して前飛竜への登り返し。前飛竜(1954m)の大岩に上がると、そこそこの展望が得られるが、禿岩に寄ってしまうと地味なものに思えてしまう。
前飛竜から下は植生が全く変わる。シャクナゲが忽然と消えてしまうのが興味深い。樹林もツガなどの針葉樹からブナ、ダケカンバなどに変わっていく。山を登り下りしていると、ある地点を境に雰囲気がガラッと変わるところを多く見る。
前飛竜はミサカ尾根、岩岳尾根、栗山尾根、長尾根と四方に何本もの支尾根を派生させており、この付近の山稜は、飛竜山よりもむしろこのピークによって形作られているといってよい。

見通しのよい樹林帯をどんどん下り、熊倉山(1624m)に着く。ここから下は徐々に芽吹きの森へと移行していく。ブナやミズナラに混じって新緑のカラマツも見られるようになり、昨日のサオラ峠付近のイメージとダブってくる。そのサオラ峠は昨日同様に、多くの登山者で賑わう地となっていた。
峠を越えて小屋に下り、翌日山に登り峠に戻って来るという、まああまり合理性のない行程だったかもしれないが、山登りとしては旅情の感じられるいいコースではないかと思う。

サオラ峠からは急坂の連続で丹波に下る。新緑がきれいだった。
途中、木の間から丹波山村の家並みが覗く。丹波山村ではこのたび、のめこい湯の入口である農産物直売所が拡充され「道の駅」としてオープンした。青梅街道沿いでは初の道の駅だそうである。

市町村合併が進む中、東京周辺でも「村」という自治体は随分減ってしまった。島しょを除く東京都下では、檜原村が唯一残っている村である。また、都と接する県境では山梨県のこの丹波山村と小菅村がある。いずれも登山者には親しみのある村だ。これらの村は、自存自立の道を歩んでいくために、今回の道の駅開設のような観光立村としてのアプローチが、今後ますます進んでいくであろう。
この静かでのどかな山村の雰囲気が好きなのだが、「村を守る」という意味である程度観光地化してしまうのは止むを得ない。観光客で賑わう丹波山村を見たいような見たくないような、複雑な気持ちである。

植林帯をくぐって、丹波山村がすぐ下に見えるところまで下ってきた。農地には、タイヤを積み上げた落石防止壁が立っている。段々畑の間をぬって丹波バス停に下り立つ。
のめこい湯に寄っていく。駐車場が広くなっていた。また、農産物販売の建物の横に軽食喫茶のようなものも出来ている。温泉は、まだ時間が早かったので初めのうちは空いていたが、3時過ぎになるとかなりの混雑ぶりとなった。硫黄というよりも、柑橘系のきりっとした香りのお湯が売りである。

帰りのバスが混むことを予想し、終点の丹波バス停まで戻ってから乗ることにした。増発便があり比較的余裕で奥多摩駅まで戻れたが、青梅線の混雑ぶりも相当なものであった。


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