~奥秩父の森に何が起こっている~
タイトル
こぶしだけ(2475m) から
かりさかとうげ、かわまた

2007年6月1日(金)~2日(土)


戸渡尾根-甲武信岳-雁坂峠-川又

マップ
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突出峠
突出峠は深い森の中

●歴史の道を川又へ

天気がよければさらに縦走して雁峠まで行ってもよい。しかし今日はここで下山とする。山梨側ではなく秩父の川又に下ることにしよう。
秩父往還の道として名高い雁坂峠であるから、やはり一度は秩父からの道を歩いてみたいものである。
明治初期までは秩父・甲州間の交易路として盛んに歩かれていたこの峠越えの道は、雁坂トンネルが完成するまで国道140号に指定されていたそうである。

峠から緩く下って、8年ぶりの雁坂小屋だ。シャクナゲが赤々と花をつけている。管理人さんはいないようだ。
テント場に行って食事をとる。眺めがよく水量豊かな水場もあって、幕営地としては最高にいい場所だ。

川又への下山路は、まず豆焼沢の源頭をまたぐ。雁坂嶺から伸びる尾根に乗るまでは山腹を巻く平坦道が延々と続く。
右手に雁坂小屋が見えてくる。地蔵岩分岐の指導標が現れるまでは、緩い登り下りを繰り返す。雁坂小屋が見える角度からすると、どうやら少し高度を上げているようだ。
昔から歩き継がれた峠道とはいえ、ここまでのガレ場を交えた道は意外とタフである。


シャクナゲと雁坂嶺

樺小屋

地蔵岩分岐から踏み跡を辿って、地蔵岩の上に立つ。甲武信岳が正面に見えるがずいぶん雲が出てきた。傍らにシャクナゲが咲く。

道はようやく下りが目立ってくる。この道で初めて登山者に会う。大きなザックを背負っているのでテント泊だろう。
高度を下げると、ようやく針葉樹林からブナやカエデなどの広葉樹の森に入る。新緑で清々しい。
ほどなく樺小屋の前に出る。造りはしっかりしていて宿泊には不自由しなさそうだ。水場も近くにあると書かれている。

突出峠(つんだしとうげ)からははっきりした下りになる。そうきつい坂ではないのだが、今までが今までなので急傾斜に感じる。

大正11年の石標

川又バス停

緑も濃くなり雁道場(がんどうば)。ここから黒文字橋に下る踏み跡はそう歩かれてはいないようだ。
もし車が使えるなら黒文字橋から黒岩尾根を登り雁坂峠、そして川又道を下るという周回コースはよさそうに思うのだが、山歩きとしてはちょっと地味なのだろうか。

やがて杉林の中に入り、水場のある水ノ本で休憩する。長い川又道もあと少しだ。最後になって、大正11年との文字が刻まれた石標を見て、小さな祠に一礼する。

この道では、道祖神や祠など旅の安全を願って作られるものをほとんど見かけなかった。いにしえの街道にしては不思議な気がする。山が深いので朽ち果ててしまったのかもしれないが、往時の面影を偲ばせるものがないのはちょっと寂しい。それでも急坂がほとんどなく歩きやすい、いや歩くための道だった。

国道沿いの登山口に下りる。2日間お世話になった木の杖をその場に置く。また誰かが手にして、戸渡尾根登山口に戻してくれると楽しいのだが。
15分ほどで川又バス停に着く。緑濃い山々の上に青空が戻っている。

久しぶりの奥秩父核心部の山行は、いろいろ考えさせられることもあり感慨深いものとなった。樹皮が剥がされたむき出しの原生林はいつしか、元の姿に戻ってくれるのだろうか。それが気がかりである。


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