~初冬に登る大展望の高峰~ 2008年11月22日(土)~23日(日) |
奥秩父の盟主、金峰山(きんぷさん)には8年ぶりの登頂となった。 2000年は自分としては奥多摩や奥秩父を中心に精力的に歩きまくった年だった。雲取山から甲武信岳、金峰山から甲武信岳の縦走をしたし、南八ヶ岳や丹沢主稜も歩き通した。その後日本アルプスや東北、上越の山を知ってからはあちこちの山域に分散して行くようになり、奥秩父主脈も甲武信岳より西側の部分にはなかなか足が向かなかった。 金峰山の魅力は頂上からの雄大な展望、そして奥秩父の中では数少ない、森林限界上での稜線歩きが出来るということである。 東京都心のモミジが赤く染まり始めた11月下旬、高い山はもう冬、そろそろ雪の季節である。車で瑞牆(みずがき)山荘まで行き、山頂下の小屋泊で往復することとした。
須玉ICを出て県道を北上。塩川ダムの手前で、カーナビは増富温泉の方向を指し示さずに黒森鉱泉経由の道を選んだ。 集落を抜けて標高を上げていくと、自然林のとても豊かな中につけられた道になる。2週間ほど前なら紅葉が見事だっただろう。 この近くの横尾山はまだ未踏、曲岳も未踏、茅ヶ岳・金ヶ岳もご無沙汰している。車でならアプローチしやすい地域なのでいずれ来よう。瑞牆山荘横の駐車場には、すでに車が20台ほど停まっていた。増富温泉からの路線バスもまだ運行しているようだ。 支度をして出発。すぐに登山者の列の中となる。こんな大勢、みな金峰山なのだろうか。 周囲はすっかり落葉し冬枯れの様相だ。足首がもぐるほどに落ち葉が敷き詰められている部分もある。 いったん林道に上がる。少しだけ林道を歩いてみると正面に瑞牆山の岩峰が大きく現れた。
気温は低いが大汗をかいて小屋の建つ富士見平に上がる。 テントが数張り張られていた。ここで登山者はふた手に分かれる。といっても金峰山を目指すのは自分一人だけで、他の人はみな瑞牆山への道に入っていった。そういえば皆、ザックが小さい日帰り装備だった。 富士山が見えるので富士見平と名が付いているのだが、実際小屋の前から見られるのは、カラマツの樹林がとぎれる一角だけである。逆光でシルエットになった富士山が望めた。 寒々とした樹林帯を登っていく。じきに傾斜は緩やかになり、森閑とした静かな歩きが続く。 登山者がぽつぽつと下ってくる。上のほうの雪の様子を聞くと、岩の割れ目にこびりついている程度だという。もっと積もるほど降っているかと思っていたので少々拍子抜けだ。 鷹見岩展望台への分岐を見て、道はやや下り気味となる。シャクナゲの葉が細く、シュンとしおれ気味になっている。 なるほど、冬の時期はシャクナゲの葉はこうなるのか。晩秋から冬にかけては、シャクナゲのあるような高い山には登らないので、いままで見たことが無かった。葉は春前に生き生きとしたものに生え変わるのだろう。 やがて見通しのいい広場に出る。右下に大日小屋が建っている。中を覗いてみると一人分の寝床がすでに出来上がっていた。おそらく金峰山にピストンしているのだろう。 小屋は古いが広く、避難小屋泊まりの感覚で利用できる(ただし料金は必要)。自炊ならここに泊まるのもいいだろう。 大日小屋から少し上がると大日岩の最下部に出る。展望があり南アルプスがくっきりと見える。白峰三山の頂はもう真っ白になっている。 今日は雲ひとつ無い最高の天気。日がすでに高くなってしまったので山々の眺めは今ひとつとなったが、まずは絶好の登山日和である。 再び針葉樹林帯に入る。縦八丁と呼ばれる急坂を登り、次に開けたところが大日岩(2201m)の基部だった。砂礫の平坦地に立つと、目の前に巨大な岩の塔が青空に向かって突き立っている。 暗く深い樹林帯を抜けたところに現れる白い巨岩、そのコントラストが面白い。奥秩父西側の山稜は、他では見られない一種独特な景観を呈している。 南アルプスの眺めがさらによく、そして八ヶ岳、これもずいぶん白くなっている。 登山道に戻る。斜度の無いシラビソの樹林帯がしばらく続く。山の奥へ、奥へと入っていく感じだ。 見かける指導標は山梨県の立てた新しいものもあれば、さび付いて判読不明なブリキ板だったりもする。山というフィールドは、新しいと古いが混在する所でもある。 |