北アルプスの後、2週続けて雨の土日となり、山は控えた。
その次の週末、またしても天気が怪しい。しかし、日曜日は中部山岳の一部の山の天気は持ちそうだ。「お天気ナビゲータ」サイト(てんくらの有料版)は、山頂の1時間~3時間ごとの10日間天気予報を見ることができる。天気のほかにも見晴らし予報、雷雨予報などもあって参考になる。
ここの情報で、湯ノ丸山の天気予報がそこそこよかったので、出かけることにした。
角間山へ、笹原を登る [拡大 ]
|
前日の夜、出発。上信越道でけっこうな雨降りになった。12時を越えて佐久平SAに到着する。標高が高いので涼しい。ここで少し眠る。
翌朝、下の方は雲海、山の上は雲がかかっている。これは上は雨かもしれない。
小諸ICで高速を下り、湯ノ丸高原に向けて高度を上げていく。案の定雨だ。上に行くほど降りは強まっていき、湯ノ丸高原の最高地点、地蔵峠に着くと土砂降り状態だった。天気予報外れたかな?
峠では車を下りずそのまま下っていき、鹿沢温泉まで来ると、雨は小降りになる。今日はもともとここから登る予定。湯ノ丸山は雨雲の中だが、角間山は山頂が見えており、何と青空も覗いている。好天と悪天が隣り合わせなのは、何だか今年のトレンドのような気がする。青空の面積が広がるのを待つ。
1時間ほどで雨もやみ、角間峠に向けて出発する。雪山賛歌の碑を見てから舗装道路を上がっていくと、すぐにもう使われなくなったロッジのような建物を見る。
カラマツ林で緩やかな傾斜の登山道に入る。雨上がりのさわやかな空気だったが、たちどころに日差しが強くなり、汗が噴き出す。笹の緑が光り輝き眩しいほどだ。
やがてシラカバの目立つ林となる。足元にはホタルブクロやヤマオダマキ、ヤマハハコ、オトギリソウ、ヨツバヒヨドリ、タムラソウなど、盛夏から初秋にかけての色とりどりの花が咲く。左手に湯ノ丸山のまろやかなピークが見え出す。いつの間にか雲から姿を現していた。
あずまやのある角間峠に到着。大学生のグループがいた。ザックがいやに大きかったので聞いたら、昨日はこの鹿沢温泉の下の方にある大学の施設(山荘?)に宿泊したとのこと。昨日は村上山に登ったそうだ。
このあたりは湯ノ丸山、角間山のほかにも、村上山や桟敷山、鍋蓋山など、あまり知られてない山がいくつかある。どれもこんもりとした丸い形をしており、おそらく浅間山の火山活動で形成された一連の火山群なのだろう。
角間山へ、笹の斜面の登りになる。白い雲と青空と緑の笹のコントラストが鮮やか。キオン、ツリガネニンジン、ウスユキソウ、ウメバチソウ、シオガマギクといった中亜高山で見られる花も増えてきた。
急登がついえると草原の平坦地に出る。マルバダケブキが笹原にょきにょきと背を伸ばしている。
この辺りは東西方向に小さな尾根を形成し、湯ノ丸山からの稜線と直交するようになっている。よくはわからないが、火山活動と通常の造山活動とが入り混じった地形のようで独特である。
平坦地の先に角間山の山頂部がぽっこりとある。樹林帯の短い急な登りには鎖もついている。
ひと登りしてあたりが開けるとマツムシソウやイブキジャコウソウの咲くのを見る。すぐ先が角間山山頂。雲が多くなってきたが、2時間前を考えたら信じられないくらいの360度の眺望である。
浅間山や、湯ノ丸山の後ろの烏帽子岳、四阿山などはすっぽり雲の中だが、浅間隠山や遠く榛名山塊、赤城連山あたりが見渡せ、嬬恋村方面の平地がだだっ広い。
村上山や桟敷山の丸いピーク、鍋蓋山も見える。鍋蓋山はここ角間山から尾根伝いに歩けるようだが、登山道は草がかぶっている。最近は未踏の山を登ることが全くなくなってしまったので、たまにはこれら小さな山を巡るのもいいかもしれない。
角間峠に戻り、湯ノ丸山への長い登りに入る。遊びのないひたすら高度を上げていく道だが、笹の斜面にはヤナギランも顔を出し、登るにつれ明るさを増してくる。ハナイカリも涼し気な姿を見せている。
樹林から脱すると再びマツムシソウ、ウメバチソウ、ウスユキソウ。なぜか気に入っているワレモコウも。そして湯ノ丸山のもう一つのシンボルであるイワインチンの黄色。これだけ種類が多いのに、今月初めの北アルプスで見た花と全く顔ぶれが違うのが面白い。
湯ノ丸山北峰のピーク近くなると、ガスが稜線を覆っていた。しかし風があるために景色の変化は早そう。
北峰の岩場を越え、緩やかな下り登りで湯ノ丸山南峰へ。次第に周囲の展望がきき始め、桟敷山やさっき通った北峰越しに角間山など、どんどん見えるようになってきた。烏帽子岳もいつの間にか全貌を現している。
山頂からは反対側はるか下に、小諸市の町並みが広く見渡せた。ここでやっと、天気予報に実際の展望が追いついたようだ。しかしあらためてその天気予報を携帯で見ると、今の時間が雨マークに更新され、回復は数時間後になっていた。山頂の天気予報も、なんだかなあと思う。
この際、くっきり見えるようになった烏帽子岳まで行こうかと思ったが、時間的にきつそうなのでこのまま下ることにする。
地蔵峠方面へ下る道は、これから登る人がどんどんやってくる。地蔵峠からの往復なら、湯ノ丸山は軽装でも問題ない。そんないでたちの人が多い。
マツムシソウもまだたくさん見られるが、この部分のハイライトはヤナギランである。斜面の一角に大きな群落を作っていた。10年以上前は、東京から近い大菩薩付近でも当たり前に見られた花だが、今は鹿の食害でほとんどなくなってしまった。
それにしても湯ノ丸山付近に鹿はいないのだろうか。今まで見た記憶もないが、地形的に険しい所でもないから、他の山域から移動してきても不思議ではない。事実、最近は南八ヶ岳で鹿の目撃がにわかに多くなってきている。
そう言えば鹿沢温泉付近には、以前は鹿がいたのだろうか。
鐘分岐(コンコン平)で左に折れる。コンコンとは、鐘の音か、それともキツネのことだろうか。初夏はレンゲツツジの多く咲く草原地を横断していく。
薄暗い樹林帯をひとしきり下っていく。開けた場所に出たところには案内板があり、九十番観音の登山口への分岐道がある。湯ノ丸山や角間山が見上げられる。牧草地として使われているようで牛が三頭のんびり休んでいた。
ここからは少しはっきりしない道を下り、朝出た鹿沢温泉登山口にたどり着く。今日歩いた部分は自然で素直なルートで、急な登り返しもない。うまい具合に周回コースが作られているものだ。
鹿沢温泉は、少しだけロッジ風の造りに改築され、以前のように古めかしい廊下を歩いて浴室に行くこともなくなった。それが残念だったが、甘い香りのする白濁湯は以前と変わらなかった。
帰路は群馬県側の下道を走って、渋川経由で帰る。道の駅が県の緊急事態宣言でクローズされていた。