土日に出勤して平日が振休なのは今週まで。少し足を伸ばして湯ノ丸山へ向かった。
3度目の登頂になるが、北側に尾根でつながっている角間山にはまだ登っていなかったので、今回は先に登ってから湯ノ丸山へ縦走する。湯ノ丸高原のレンゲツツジもまだ見られるだろう。
また、噴火レベルが2から3に上がった浅間山は、湯ノ丸山山頂からどう見えるか、興味のあるところだ。
開けた草原地を歩いて角間山山頂へ
|
高速道路は休日割引がないので、夜中のうちに出発して深夜割引適用を狙う。4時までにインターをくぐれば3割引となる。新座料金所を通過したのが3時57分、ぎりぎりだった。
夜が明けてくると空に雲はなく、今日は久しぶりに気持ちいい梅雨の晴れ間となりそうだ。上信越道から見る浅間山は、たしかに今まで見たのよりははるかに高い噴煙を上げていた。
佐久市に入ると一転、薄暗い雲り空になったが、これは雲海の下だろう。東部湯の丸インターで下りて湯の丸高原を目指し車道を上っていくと、空は徐々に明るくなり、地蔵峠ではすっきり快晴の青空になっていた。
今日は地蔵峠を越えてさらに北に下ったところ、民宿「わたらせ」のある九十番観音がスタートとなる。浅間山の展望台である桟敷山の登山口にもなっている。
道路脇の駐車スペースはもしかしたら民宿利用者向けのものかもしれないが、まだ誰もいないので置かせてもらうことにしよう。ここからは北側にはすでに角間山が大きく見渡せている。
支度をして、戻るように車道を30mほど歩くと、八十九番観音と案内板があり、ここが登山口である。ここを起点に湯ノ丸山に登ると、車道歩きをせずに周回コースが取れるので、マイカー向きのルートである。
県道94号からは他に、地蔵峠と鹿沢温泉にも登山口がある。ゲートの脇を通って先の林道に入る。
日当たりのよい中を登っていく。前日までかなりの雨が降り、林道はあちこちに水溜りができている。
やがて開けた草地に出る。ここにも案内板があり、正面に角間山、左には湯ノ丸山がすでに大きい。コンコン平からのルートが合わさってきていて、今日はこの道を歩いて戻ってくるつもりだ。
レンゲツツジもちらほら見られるが、雨にやられたのか多くが下を向いている。暖かい日が続いたせいか、例年なら今頃が一番のレンゲツツジの見頃なのだが、今年は開花が早く、ピークは若干過ぎているようだ。それでも点々と咲き続けるレンゲツツジを見ながら緩い坂を登っていく。
ここから角間峠に上がる道は、踏み跡はしっかりしているものの歩く人はそう多くないと見え、一部で草深いところもある。雨で濡れた下草でズボンはずぶ濡れになった。
黙々と歩いていくと突然休憩所が現れ、さらに小さな鹿柵を通り抜ける。どうも地図に載っているルートとは若干ずれたところを歩いている。踏み跡が入り乱れていたようなところはなかったが、緩やかな斜面を登っていくので迷いやすい場所でもある。やがて鹿沢温泉からの道に合流する。この地点も地図よりはずいぶん上にあるようだ。
時折り湯ノ丸山の大きな山体を見ながら、レンゲツツジ咲くシラカバの斜面を登っていく。角間峠は以前より草深くなった感じだ。浅間山のほうを振り返ると、寒気の影響からか、朝から積乱雲が湧き立っていた。あの雲の中に噴煙も混ざっているのだろうが見分けがつかない。
角間山へは右手の樹林帯に入る。登山道は思ったより踏まれているようだ。すぐに眺めのいい笹原の斜面に出て、浅間山や湯ノ丸山がよく見えた。レンゲツツジもあちこちで鮮やかなオレンジ色の光を放っている。
低潅木の中を登っていくと開けた台地で、角間山の山頂部がポコッと突き出ていた。高原状でなかなかいいところである。
その角間山の最後の登りは一転、シラビソの薄暗い樹林帯となった。ちょっとしたギャップに鎖がついていたが手を触れることなく、みたび明るい平坦地に出たところが角間山山頂だった。
山頂部は狭いが、湯ノ丸山とひけをとらない好展望である。湯ノ丸山の眺めはもちろん、西側の長野県上田方面は一面の雲海、そして北アルプスが横たわっていた。浅間山はここからはお鉢のあたりまで見え、噴煙がかろうじてわかる。
北側には四阿山がこれも大きな積乱雲を頭に乗せていて、上空の大気の状態が不安定であることをうかがわせた。その右奥には草津白根山。こちらも噴煙を上げているのが見える。今年はどうしても火山に目がいってしまう。日本は火山噴火ででき上がった島国であるといっても言い過ぎではないくらい、あちこちに火山があることを認識させられている。
浅間山の積乱雲はいつの間にか上空を覆い始め、日が遮られて寒さを感じるようになった。角間峠に下る途中では、一瞬ポツポツときた。さっきまであれほど強い日差しだったのに、やはり梅雨時の天候はわからない。
雨は大したことなく、角間峠から今度は湯ノ丸山への登りに入る。しばらくは樹林帯の急登を辛抱する。少しずつ頭上が明るくなってはいくが、ここの登りは長い。
足元にはツガザクラ、ゴゼンタチバナ、ベニバナイチヤクソウが見られた。そして白いザクザクしたものが地面を覆っていた。小豆くらいの大きさの雹である。前日までの大雨で降ったものが、溶けずに残っていたのだろう。
右に、雲海の消えた上田市方面の眺めを見下ろすあたりでようやく樹林は切れ、山頂近しとなる。頭上は半分が雲、半分が青空でどちらが優勢か、判断がつかない。
草地の斜面にはハクサンチドリやイワカガミも現れた。もちろんレンゲツツジも。最後のひと登りで岩の積み重なる湯ノ丸山北峰に着く。浅間山がぐっと近づいたがすっかり雲の中である。しかしそれ以外の方向は眺めが利き、隣りの南峰に立つ人の姿も見える。
開けた稜線を歩き南峰に着く。今までの行程とは一転し、人でいっぱいだ。今日は本当に平日なのだろうか、と疑ってしまう。これでは土日の山頂は満員だろう。
ここ南峰は、山頂部一面に平たい石が敷き詰められたようになっていて、腰を下ろしやすいのがいい。休憩しやすい山ベスト5に入るだろう。展望も雄大でつい長居してしまう。
目の前の烏帽子岳の形が独特で、縦走する人も多いが、角間山から来た自分は、今日はここで下山する。
ツツジ平に向けて、急坂を下っていく。浅間山の雲も少し取れてきた。しかし今の時間はちょうど、登ってくる人で登山道はごったがえしている。ツツジを見に来たついでに湯ノ丸山も登っていく人も多いようで、普段あまり登山しなさそうな人も見かけた。
下のほうで「ヤッホー」!と聞こえていた声が近づいてきた。小学生の団体だ。地元の学校だろうか、遠足にこんないい山を登れるのはうらやましい。
花はツマトリソウやサラサドウダン、イワカガミなどが見られるが思ったほど多くない。これから、ヤナギラン、マツムシソウ、イワインチンが咲く盛夏が湯ノ丸山のもっとも楽しい時期である。
ツツジ平手前の鐘のある分岐に下り立つ。ツツジ平方面には行かず、左手のコンコン平に入る。レンゲツツジがあちこちで群落をなしていた。
初訪の折、ここを下山路にしようと歩こうとしたが、踏み跡がわからず引き返した。今日はわかりにくいところは皆無で、立派な登山道が伸びていた。迷ったときは真夏で、レンゲツツジも終わって草深い地になっていたのかもしれない。
コンコン平はやはり今日歩いた中では一番のレンゲツツジの花畑になっていた。湯ノ丸山をバックにオレンジ色が鮮やかである。だがやはり、花は落ちかけているものが多い。登りで見た小豆ほどの雹に見舞われたりしたら、ツツジの中でも大ぶりなレンゲツツジもひとたまりもないであろう。
また、オレンジ色の他にピンク色の花もあり、これもレンゲツツジなのだろうか。
もっとも、コンコン平コースを歩く人はそう多くなく、ほとんどがツツジ平から地蔵峠に下っているようだ。コンコン平から見るツツジ平は、人がうようよしていた。
ちょっとした台地に上がると、その先は樹林帯となってレンゲツツジも減った。日差しが戻り、明るい広葉樹の森で気持ちがいい。気温が高くても今日は空気がカラッとしている。
この下山路も、地図に載っている登山道とはずいぶん違っていて、いったん東の小尾根を下った後左折し、元の尾根筋に戻っていった。
樹林から抜け出したところが、朝通った案内板のある開けた草地であった。林道を下って登山口、そして九十番観音に戻る。
湯ノ丸山に来れば、やはり鹿沢(かざわ)温泉には寄っていきたい。九十番観音からは車ですぐだった。
近年建て替えられたが、静かな高原の宿の雰囲気は変わらない。浅間山の活動が活発になり、周辺の温泉に変化がもたらされないか思ったが、やや白濁の柔らかいお湯は健在だった。
時間はあるので、帰りは来た道を戻らず、そのまま嬬恋村方面に下り吾妻渓谷沿いの国道経由で関越に乗ることにした。八ツ場ダム付近の国道は、ダム建設による付け替え工事が進行しており、カーナビとずいぶん違っていた。
梅雨の合間の平日山行は天気もまあまあよく、有意義な1日を過ごせた。