~霧に煙る高原の山~
タイトル
ゆのまるやま(2101m)
2005年8月17日(水) 曇り時々雨

6:14高崎駅-[吾妻線]-7:59万座・鹿沢口駅8:30-[バス]-9:05鹿沢温泉-9:35九十番観音分岐-9:47角間峠9:55-10:45湯ノ丸山北峰11:00-11:05湯ノ丸山11:30-12:00つつじ平(鹿沢温泉方面引き返し)12:25-12:50地蔵峠13:00-13:30鹿沢温泉15:41-[バス]-16:12万座・鹿沢口駅17:09-[吾妻線]-18:53高崎駅 歩行時間:3時間30分

マップ
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火打山に登って以来、上信越の山々に目が向き始めた。湯ノ丸山はその南端、嬬恋村にあり冬はスキーで賑わう。
この付近は縦走や長い山旅に対象となる山は少なく、軽いハイキング向きが多い。東京からは、電車だとアプローチが大変だ。今回は高崎駅近くに前泊して、翌日の好天を期待した。

湯ノ丸山頂上のマツムシソウ
湯ノ丸山頂上のマツムシソウ

前夜高崎市内はかなりの雨が降り続いた。当日の朝、上空には青空が覗いたが、西方の山々には雲がかかっている。そこを目指して早朝の吾妻線に乗る。

万座・鹿沢(かざわ)口駅。平日ともあって嬬恋高校の学生が多く下車する。天候は回復傾向だが、駅付近から見える山々の稜線にはまだ分厚い雲。どうやら今日の登山は太陽とは縁遠そうだ。

鹿沢温泉でバスを下りる。少し前まで雨だったようで地面は濡れている。紅葉館の前を過ぎて、少しで右手に「角間山・湯の丸山登山口」とあるところを上がって行く。
しばらくはカラマツなどの茂る樹林帯。道は良く踏まれている。この時期にしては下草も少ない。
頭上に青空はかけらもないが、雲間からの日差しに背中を炙られる。
角間峠への登り
角間峠への登り
ヨツバヒヨドリ
ヨツバヒヨドリ
マツムシソウ
マツムシソウ

九十番観音から上って来る道を合わせ、しばらく登るとだんだんと高原状になってくる。ヤナギランやノアザミ、ワレモコウなどが現れる。
右手の角間山(かくまやま・1981m)の緩斜面には、ところどころヤナギランが群落を作っているが、登山道からは少々距離があるので、間近で眺められない。角間山も湯ノ丸山同様に眺めがいいとのことなので、天気がよければ登りたかったのだが、この空模様なので今日はやめておく。

あずまやのある角間峠に着く。ここより上の稜線はガスで見えない。右は角間山、左は湯ノ丸山へ。正面の角間温泉への下りは登山道崩壊のため通行禁止になっている。
展望のいい角間峠で少し待ったが天候の良くなる気配が無いので、湯ノ丸山への斜面を上がる。
少しだけ岩混じりの急登となる。振り向くとガスが切れ、一瞬だけ角間山のカヤトの斜面があらわとなる。そしてまたすぐ灰色の眺めに。
低潅木や草地の登りが続く。マツムシソウ、ヤナギラン、ウスユキソウ、ウメバチソウ、ヤマハハコ、アキノキリンソウなど晩夏から初秋の花が勢揃いしてくる。大菩薩連嶺で見る顔ぶれだが、花の密集度はやはりこちらのほうがすごい。そして柵越しでないところがいい。
特に今はマツムシソウが至るところに群落を作っていて壮観である。初夏のレンゲツツジ、そして何と言っても展望が売り物の湯ノ丸山ということだが、晩夏のお花畑も見ごたえがある。

斜度が緩まり、肌寒さも感じてくる。時々ポツポツと雨も落ちてきて、傘をさしたりカメラを構えたり、と視界がない中でも忙しい。
ガスの向こうから人の声が聞こえ始める。大きな岩が積み重なったところが湯ノ丸山北峰(2099m)だ。ここで初めて人を見た。展望が無いので少しの休憩の後、さらに南下する。

湯ノ丸山南峰は広い頂上で、人もそこそこ多い。平日でこんな空模様なのに、やはり人気の山なのだろう。人の会話を横から聞くと、ドライブやキャンプのついでに地蔵峠側から登ってきた人が多いようだ。
地蔵峠からのコースは軽いハイキング程度のものであるが、普段山を歩かない人にとってはやはり大変なようだ。「きつい、だまされた~」とぼやいている。
登山としてはやはり、角間峠から登り角間山を往復しさらに湯ノ丸から烏帽子岳まで縦走すれば充実したコースになるだろう。
湯ノ丸山頂上
湯ノ丸山頂上
百番観音像
百番観音像

今日は烏帽子岳への縦走はやめて、地蔵峠方面に下りる。こちらの斜面はヤナギランが実に多い。
高度を下げるとガスが切れてきてつつじ平あたりの眺めが広がる。
つつじ平に下りると左側に分岐があり、鹿沢温泉に下れると示されていた。そちらの方向に行ってみたが途中からかなり藪っぽくなる。おまけに雨足が急に強くなってきたので、小さなピークを越えたあたりで引き返す。笹露と雨で足元はもうずぶ濡れ。30分余計に歩いてしまった。

つつじ平に戻り、遊歩道のような道を進む。コオニユリが咲き、牧場では牛がのんびりと草を食んでいる。
湯ノ丸スキー場のリフトの発着所に着くが、横のゲレンデの斜面を歩いて下る。正面に籠ノ登(かごのと)山だろうか、まろやかな山体が見えてくる。ようやく周囲の眺めが利いてきた。

地蔵峠に下り立つ。正面が広いスキーゲレンデで、まさにリゾート地の雰囲気だ。ここからバスで小諸駅、という選択もあるが今回は鹿沢温泉に戻ることにする。

山道と車道を交互に歩く。道すがら、観音像の石仏が同じ様な間隔で並んでいるのに気づく。
長野県の東野町から始まって、この車道には百体の観音像が置かれているそうだ。地蔵峠の観音が八十番で、百番目の観音様が鹿沢温泉にあるという。そういえばさっき、角間峠への登りで九十番観音からの登り道と合流していた。
アキノキリンソウ
アキノキリンソウ

観音像と山里の風景を見ながら、30分で鹿沢温泉に着く。紅葉館の横に、たしかに百番観音様は建っている。今は立派な車道が通っているが、昔、道の険しかった頃は湯治にやってくる旅人にとって、頼りになる道しるべであったのだろう。

そして、登り出しのときには気づかなかったが、その反対側に「雪山賛歌」の碑がある。「雪よ岩よ、我らが宿り~」の歌詞はここ紅葉館に泊まった学生さんが作ったのだそうだ。この歌は広く親しまれ、その印税は当地の大きな資金源になったという。

湯ノ丸高原に隠れて鹿沢温泉は地味な存在だが、江戸時代からの歴史のある温泉だ。お湯も鉄分の溶け込んだ白濁の湯で非常にいい。
湯船に浸かっている人に聞いたら、湯治に来て1週間も泊まっているそうである。そんなのんびりした旅もしてみたいものだ。

風呂から出て、バスが来るまで宿の休憩室で休む。薄暗い、静かな山の一軒宿。じっとしていると眠気がおそって来る。今日はこのまま泊まってしまいたいが、そういうわけにもいかないのだ。
バスと鈍行電車を乗り継いで、東京に戻る。


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