山の写真集 > 東北 > 沼田街道から小淵沢田代
  • -尾瀬最古の登山道-
  • 七入-沼田街道-大江湿原-小淵沢田代
  • 尾瀬
  • 福島県
  • 沼山峠展望台(1780m),小淵沢田代(1810m)
  • 2021年9月20日(祝)
  • 11.8km
  • 5時間55分
  • 834m(七入-1911m点)
  • (前夜車中泊)
  • 駒の湯
  • マイカー,バス
天気1

 

2021年9月20日(月) 前日発
五反田IC 20:25
  首都高
東北自動車道
矢板北PA泊
西那須野塩原IC 5:20
  国道400号,352号
7:30   七入 7:35
7:45   七入山荘
7:52   硫黄沢橋
8:19   赤法華沢橋
8:27   道行沢一番橋
9:24   道行沢五番橋
9:45   抱返ノ滝 9:50
10:30   沼山峠休憩所 10:45
11:25   大江湿原(小淵沢田代分岐)
12:10   小淵沢田代 12:45
13:35 長蔵小屋 13:40
14:00 大江湿原(小淵沢田代分岐) 14:05
14:20   沼山峠展望台
14:35 沼山峠休憩所 14:50
  会津バス
15:25 七入 15:35
  国道352,400号
駒の湯立寄り
18:37 西那須野塩原IC
  東北自動車道
首都高
22:35 五反田IC

 

3年前の御池古道に続き、今日は沼田街道を歩く。
尾瀬は群馬県側だと鳩待峠や大清水、福島県側からは御池から入山するのが普通で、尾瀬ヶ原や燧ヶ岳が目的であれば比較的楽な行程となる。一方、七入登山口から登ると、標高差はあるが尾瀬のもうひとつの魅力であるブナを間近に見ることができる。御池古道はまさにブナの森になっていた。

七入から入るもう1本の登山道、沼田街道は、古くは会津若松-群馬の沼田間を結ぶ交易路として栄えた、歴史ある道である。戦後になって、尾瀬の南側部分を車道化する計画が上がったが、自然保護運動の高まりにより開発は中止された。現在は登山道としてよく整備され、登山者やハイキング客が歩く。尾瀬最古の登山道とも言われる。
福島では「沼田街道」、群馬では「会津街道」と呼ばれているのが不思議なところである。
沼山峠に上がった後は大江湿原に入り、まだ行ったことのない小淵沢田代まで回る。


ハリギリの大木(沼田街道) [拡大 ]

七入の駐車場から沼田街道へ

七入を出発

沼田街道は、沢にかかったいくつもの橋を渡る

橋を渡っていく

道行沢を4つの橋で渡り返していく

道行沢一番橋

沼田街道は様々な広葉樹の大木がある。やはりブナが多い

ブナ大木

白い幹のブナが立ち並ぶ

立ち並ぶ

同じ樹種でもかかっているプレートの説明内容は違っていた。ブナ ブナ トチノキ クロベ (オオ)シラビソ

プレートいろいろ

カツラの大木があった

カツラ

抱返の滝

抱返の滝

沼山峠の休憩所に着いた

沼山峠へ

オオカメノキは実が赤く色づいた

赤い身色づく

大江湿原は草紅葉が始まった

大江湿原

エゾリンドウは湿原に生え、花が複数層つく。一方オヤマリンドウは主に樹林帯で見られ、先端にしか花がつかない

エゾリンドウ

ベンチのある分岐を左折して小淵沢田代へ

分岐を左折


新しい車では初めての東北自動車道。PAで車中泊するが、翌朝まさかの寝坊。出発が予定より1時間遅くなってしまった。
西那須野塩原ICから国道400号、352号に入る。塩原温泉街はまだ早朝でひっそりしている。その後福島県境のトンネルをくぐり、1年ぶりの会津の地へ。
車でこの道をドライブするのは楽しく、近頃はここを走るために登る山を探すくらいである。塩原側から行く国道352線沿いの山は荒海山、七ツ岳、田代山、大嵐山、三岩岳、会津駒などがあるが、一番遠い尾瀬に最近はよく行くようになった。
道中信号がほとんどなく、尾瀬までの95㎞で駐停車したのは5回にも満たなかった。

七入駐車場に着く。車を下りると涼しい。車道を横断し標識に従って、すぐに御池古道の道と分かれる。
キャンプ場の脇にも駐車場があり、こちらに停めた方がよかったようだ。七入山荘の建物を過ぎると、しばらくは林道歩きとなる。

硫黄沢橋で林道が終わり、登山道が始まる、体が重くて、足がはかどらない。やがて見通しのいい斜面を歩くようになり、遠くに送電鉄塔が見える。この沼田街道は送電線巡視路の役目もあるのかと思ったが、送電線沿いに行く道ではなかった。
ヤマグワの多い平坦な道が続き、赤法華橋を渡ると以後は沢沿いの登山道が続く。トチノキやブナが多く、大木も見かけるが、目線の位置に同じ葉をつけた幼木も広がり、世代交代の進む森であることをうかがわせる。
地面にはトチの実の皮がたくさん転がっていた。動物がすでに消費済みということだろう。一方ブナの実は全く落ちてなく、今年は不作のようだ。

道行沢一番橋」と書かれた木橋を通過。以後、登山道は緩やかに高度を上げながら沢を渡り返し、五番橋まで続くようだ(ただし四番は欠番)。
ブナの大木が現れる。ビニールケースに入った説明プレートがついている。道は歩きやすいが山深さを感じる。御池古道は、途中でモーカケの滝という観光スポットも通過するので、登山道というよりも遊歩道のような整備された部分が多かったが、こちら沼田街道はれっきとした登山道である。御池古道のように車の音も聞こえない。
野鳥の存在がない今の時期は、ただ沢の音だけを道連れに登っていく。

木につけられた説明プレートはサワグルミ、ハリギリなどほかの樹種にもついている。しかもよく見ると、同じブナでも書かれている文章が違うことに気づく。1本1本それぞれの特徴を書いているという凝りようだ。「幹の形状が美しい」とか「枝のバランスがよく樹冠も美しい」など。
しかし中には主観的な表現もあって、そうかなと首をかしげたくなる文章もある。「胸高直径100㎝を超える巨木」と書かれているが、とても100㎝あるように見えず、せいぜい80㎝くらいだ。たしかに大木が多いが、自分の見た範囲では直径100㎝超のブナはなかった。
とは言っても、書いた人のこの森に対する思い入れが感じられてよい。

道行沢五番橋を過ぎると沢を離れ、傾斜のきつい道に変わっていく。広葉樹もブナ、ミズナラからしだいにダケカンバに交代し、針葉樹のシラビソも出てくる。
分岐から右に入り、抱返の滝を見ていく。派手さはないが形の整った滝である。ここで初めて登山者に会う。

沢から離れた後は急で、少し険しい部分もあったが、滝から先は穏やかになった。シラビソ、オオシラビソ、クロマツ、ネズコなど針葉樹林が増えてブナはもう見られない。
ただ、プレートに「オオシラビソ」と書かれている木は、どう見てもシラビソである。

前方が明るくなり、建物が見えると沼山峠(休憩所)となる。ここまで意外に時間がかかり、コースタイムとほぼ同じ2時間50分だった。
休憩所でパンをかじって大休止する。どうも調子がよくない。腰から背中にかけて強い痛みがあって、この先さらに歩く気をそぐ。腰痛は10年ほど前に数年間悩まされていたがが、その後しばらくはおさまっていた。最近は近所を歩いていても時々痛くなる。
湿原に行くのは諦め、バスで御池まで行ってそのまま下ってしまおうかとも思ったが、座っているうちに少し良くなったので、やっぱり大江湿原の草紅葉までは行くことにする。

出発する。地形図上の沼山峠は休憩所の場所ではなく、ここからさらに登った1870m付近である。木の階段を一歩一歩行く。時間的にもう奥まで行っている人が多いのか、登山道は静かだ。ナナカマドの実が真っ赤になっている。
警官が数人、湿原の方から登ってきた。休憩所付近に福島県警の車が停まっていたが、湿原で何か事故でもあったのだろう。うつろな目をした登山者を引き連れている。
今のような時期に登山中に体調不良になったりすると、地元の人に大きな迷惑をかけることになる。腰痛を押して登ってきた自分には後ろめたい光景である。
最高点を過ぎ、展望台から下りとなる。広葉樹は少し色づいている。下りの木道は、足を置くたびに腰にドンドンと響いて痛い。やはり無理してはいけなかったか。


小淵沢田代。この先は鬼怒沼に通じる

小淵沢田代

小淵沢田代から、中央やや左に日光白根山

日光白根山

長蔵小屋への下りで、ようやく燧ヶ岳が見られた

ようやく燧ヶ岳

尾瀬沼のキャンプ場は、木道の左右に幕営スペースがある

キャンプ場へ

尾瀬沼ヒュッテ

尾瀬沼ヒュッテ

大江湿原に戻ると、燧ヶ岳がよく見えた

眺めよい

色づいた大江湿原を後にする

よく色づく

沼山峠休憩所からは、定期バスで七入へ下る

定期バスで


鹿よけの柵を開けて大江湿原に入る。もう、草紅葉がかなりいい色付きになっていた。青空と秋の日差しにキラキラ輝いている。
このあたりの標高はだいたい1650mくらいで沼山峠休憩所よりも低く、少し下のシラビソ林の始まったあたりと同じくらいだ。それなのにあちらは日も差し込みにくい薄暗い樹林帯、こちらは木が生えておらず一面の草の原。自然の作り出す景観というのは本当に不思議である。

ベンチのある場所には多くの人が集まっていた。ここは小淵沢田代への分岐点になっている。そちらへ向かう。雰囲気がまたしてもガラッと変わり、再び鬱蒼とした針葉樹林帯となった。
緩やかな登りではあるが、これまで続いていた木道はところどころ途切れ、段差のある場所も出てくる。尾瀬にしてはワイルドな登山道といえそう。

静かな樹林下を40分ほど、長蔵小屋への道を分けると再び明るい湿原帯に出た。小淵沢田代で標高は1800mを超える。大江湿原より150mくらい高い分、草紅葉もいくらか進んでいるようだ。
正面には日光白根山方面の山並み。そしてここからさらに、奥鬼怒から日光沢温泉方面に続く登山道が伸びている。奥日光の中でも秘境めいた地域に通じているとあって、ここ小淵沢田代も静かで、さっきの大江湿原とは別世界にいる感じだ。登山道の木道も途切れて、この先から土の道となるようである。
尾瀬ヶ原や大江湿原のように、休憩できるベンチが見当たらない。しょうがないので、木道の上に座って昼食にする。誰もやってこないのでそれも許される。

長蔵小屋方面へ向かう。そのためにはさらにひとピークを超えなければならない。本日の最高点である1911m点を超えて下りに入ると、今日初めて燧ヶ岳と尾瀬沼が見えてきた。
道は細いが木道でなく、歩く人も多くないせいか足ざわりが柔らかい。やがて木道が現れ斜度を失い、キャンプ場の中を歩くようになる。
長蔵小屋、尾瀬沼ヒュッテやビジターセンターの立ち並ぶ場所に出た。建物が全部同じ色・同じ造りなのが、何だか新興住宅地みたいで少し残念。
木道を歩いて大江湿原の縁に出た。雲が多くなってしまったが、燧ヶ岳がよく見える。

小淵沢田代分岐から沼山峠まで、来た道を戻る。なぜかこのあたりで体の調子が上向き、腰痛も消えていた。展望台への登り、そこから沼山峠までの下りと、まるで走るようにスイスイと歩き、久しぶりに他の登山者を何人も追い抜く。どうも最近はエンジンのかかるのが遅いようだ。
行きよりも短時間で沼山峠の休憩所に下りてこられた。

沼山峠からはシャトルバスではなく、会津高原尾瀬駅まで行く定期バスに乗る。当初は御池で下りて御池古道を歩いて下る予定だったが、出発が遅れた分、時間がなくなってしまった。このままバスで七入まで下る。
今日は、尾瀬の樹林と湿原歩きを日帰りで楽しむことができる、お得なコースを歩けた気がする。9月というちょっと中途半端な季節であることが惜しかった。沼田街道、御池古道ともブナの紅葉時期がよさそうである。尾瀬の湿原に初雪が降るころに歩くのもいいかもしれない。

七入からは東北道まで再び、100㎞の一般道走行となる。途中で日が暮れてしまい、塩原あたりは真っ暗で運転が少し怖かった。もう少し早い時間でドライブを楽しみたい。