-尾瀬の宝石、水芭蕉を見る-
タイトル
御池-竜宮小屋-山ノ鼻-鳩待峠
山域 尾瀬
地域 福島県・群馬県
標高 横田代(約1620m)、尾瀬ヶ原(約1410m)、鳩待峠(1591m)
山行日 2010年6月5日(土)~6日(日) 天気天気
沿面距離 1日目:17.0km、2日目:8.1km
歩行時間 1日目:7時間15分、2日目:3時間30分
標高差 113m(御池-横田代)
宿泊 竜宮小屋
温泉
交通 高速バス Home


行程

2010年6月5日(土)前夜発

バス 新宿都庁前 22:30
夜行高速バス
5:00 御池登山口 5:45
5:50 燧ヶ岳登山道
(引き返し)
6:20
7:00 横田代
8:00 裏燧橋
8:30 三条ノ滝分岐
9:25 温泉小屋 9:50
10:40 下田代(見晴) 11:30
12:00 竜宮小屋
13:30 中田代
14:10 ヨッピ橋
14:40 竜宮十字路
(竜宮小屋泊)

2010年6月6日(日)

竜宮小屋 7:05
7:25 下ノ大堀川 7:55
8:40 牛首
9:05 山ノ鼻 10:50
(研究見本園周回)
11:45 鳩待峠 11:15
12:05 河童橋
11:45 バス 鳩待峠 14:30
高速バス
21:40 新宿駅前


関連リンク
[記録]初秋の尾瀬ヶ原・至仏山
片品村観光協会 尾瀬情報
竜宮小屋
尾瀬沼・燧ヶ岳ライブカメラ


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この土日は、同期の友人と尾瀬に行くことにした。6月の尾瀬と言えば、第一の目的は水芭蕉である。昨年9月に初めて尾瀬を歩き、次はきっとこの時期に来ようと思っていた、
友人が事前に、バスのチケットや小屋泊の手配をしてくれたので、いつものような出発直前のドタバタもなかった。
福島県側の御池登山口から入山する。燧ヶ岳にも登るつもりでいるが、初日の午後に北関東の上空を寒気が通るとの予報で、天候が心配なところだ。


上ノ大堀川の水芭蕉

雨の御池登山口
湿原へ
ブナ林
トガクシショウマ
元湯山荘
水芭蕉とリュウキンカ

新宿発の夜行高速バスは、大雨の南関東を抜けるが、北上しても雨は止まなかった。まだ薄暗い5時前、広い駐車場と売店のある御池に着いても、雨は降り続いている。午前中は何とか持つかと思っていたので想定外だ。
雨具をつけて出発する。駐車場の奥に入ったところに御池登山口がある。登山者カウンターにカウントされるために、右側から入る。すぐに燧ヶ岳登山道への分岐があった。

雨は降り続くが行くしかないだろう。最初のうちは傾斜が緩く、早くも水芭蕉を見ることが出来た。木道が途切れるとぬかるみと残雪で、けっこうタフな道になる。急登が始まると、雪がべったりと付いている。
事前にネットでこれくらいの残雪があるとはわかっていたが、土の見える部分も多くて、人の付けた足跡を忠実に追わないと、ズボッと踏み抜いてしまう。

雨足は若干強まる。予報通り、上部では発雷しているかもしれない。30分ほど登り詰めたが、雨と残雪のわずらさしさに戦意喪失してしまった。
同行者には申し訳なかったが、このコンディションと天気の見通しを考えれば、燧ヶ岳登山はここで中止するのが自分の考え方である。迷いながらさらに登ってしまうと、引き返す選択が出来なくなる。
短い登路だったが、ここを下るのもかなり骨が折れた。それでも登っていく人と何人もすれ違う。今日はちょっと諦めが早すぎたか?若干の後悔を覚えながら、合流点に戻った。

ここから尾瀬ヶ原までは、裏燧林道を辿る。今回は山登りをせずに、尾瀬ヶ原を2日かけて縦断することになった。もちろんそれだけでも、尾瀬という山域には、十分過ぎるほどの見所と魅力に溢れ、おつりがくるほどだ。
木道を歩いていくと、ところどころで広々とした湿原に出る。水芭蕉も点々と見られ、これから先の期待が膨らむ。そして尾瀬に真っ先に咲くというリュウキンカも多い。
毛虫のような植物はワタスゲの花だ。夏には、白いやわらかな果穂をつけるが、その姿を想像しづらいほどの地味な花である。

次第に霧が深くなり、足元を見つめていく歩きに変わった。場所によってはかなりの残雪があって、木道に張り付いた雪に足を取られ、何度かしりもちをつく。
天神田代で渋沢温泉小屋への道を分ける。雨と霧の中、裏燧橋を渡る。このあたりから周囲はブナなどの広葉樹が優勢となり、見事な新緑の森の散歩道である。
三条ノ滝への分岐点に着く。滝に行くことも考えたが段吉新道という尾根筋を行くことにした。横田代からこのあたりまでが、今日の行程の最高点のようで、以後は緩やかな下りとなる。
ムラサキヤシオが新緑に映え、見上げればムシカリやタムシバの白い花が風に揺れる。どうやら雨は上がりつつある。雲が大きく動き、薄日が差すようになった。

森の道を進んでいくうち、薄紫の釣鐘状の花を見る。初めはわからなかったが、あとで「トガクシショウマ」に違いないと思った。今回は水芭蕉がメインの山行だが、幻の花と言われるトガクシショウマを見れたのも大ヒットである。

一人の登山者が、足を引きずってやってきた。同じように御池から歩いてきたが、木道で転倒し足をくじいてしまったとのこと。歩けないので登山口に戻ると言うが、その足で歩けるのか。
尾瀬ヶ原の小屋のほうが距離的にも近いから、そちらに行くことを薦めたが、やはり戻ると言う。お気をつけてと言って別れるしかなかった。

ショウジョウバカマも
下田代
水のほとりに
タテヤマリンドウ
リュウキンカ
水芭蕉
燧ヶ岳と竜宮小屋

雨や残雪で濡れた木道は本当に恐い。自分も今日何度か滑ったし、尾瀬の木道での事故はよくあることのようだ。
後で聞いた話によると、この人は結局最後まで歩くことが出来ず、ヘリを呼んで下山したらしい。あの場で何も手助けできなかったことが心残りとなった。

さらに下り、開けた台地に出る。尾瀬ヶ原の一角にたどり着いたようだ。すぐに元湯山荘と温泉小屋が見えてくる。雨はすっかり上がり、青空さえ見えるようになった。急激な天気の変わりようだ。
午後から崩れるという予報はどうやら、3時間ほど前倒しだったようである。

小屋から先、リュウキンカや水芭蕉が咲き続く。温泉小屋からの燧ヶ岳登山道は廃道となったようだ。
広々とした野原を歩き、振り返ると雲の間からついに燧ヶ岳が姿を現してしまった。まとわりついていた雲もやがて取れ始め、東北で一番高い名山は青空の下となる。
あんなにはっきり見えている山に、いったいなぜ登るのを諦めたのか、どうしても不思議でならない。でも、その3時間ほど前には、確かに登るのをためらうほどの空模様と登山道だった。もし行動開始を数時間遅らせていたら、間違いなく登っていただろう。

尾瀬沼や富士見峠からの登山道が合流する、下田代十字路で昼食にした。いくつもの山小屋が立ち並び、多くの人で賑わっている。カップ麺がここは300円と少し安い。
福島県側からの道は意外と静かだったが、この十字路から先はもう銀座通りだ。今流行の山スカの女性や、まるで買い物帰りのようにバッグを提げた人など、いつものきつい、つらい登山とは一味もふた味も違う世界である。
もう天気は大丈夫そうなので、雨具やスパッツを外して行く。

相変わらず水芭蕉が咲き続く木道をどんどん進む。途中何度か、橋で小さな川を渡る。川にはイワナが泳いでいた。
正面に見えてきた至仏山、背後に燧ヶ岳の存在を感じながら、30分で今日の宿、竜宮小屋に着く。ここも水芭蕉がきれいに咲き誇る。さすが春の尾瀬、どこを歩いても水芭蕉である。
小屋周辺にはシロバナエンレイソウ、コミヤマカタバミ、ヒメイチゲ、ニリンソウなども見られた。

小屋に荷物を置き周辺を散策する。同行者は水彩画を描き始めたので、自分は一回りすることにした。明日のコースを少し歩いてしまう。
竜宮現象の見られる場所からさらに進むと、春の尾瀬ヶ原で一番の撮影スポット、下ノ大堀川に出た。至仏山をバックに水芭蕉の群落が見られる。水面には残雪光る至仏山が投影し、風光明媚な眺めである。
「ここは絵葉書の場所だね」と来る人が口々に言う。今日はデジタル一眼の他、久しぶりに中判カメラ(フィルム)を持ってきたが、大正解だった。

さらに散策は進み、東電側の木道まで足を伸ばしてしまい、結局一周してしまった。ほんの散歩のつもりがたっぷり2時間かかった。燧ヶ岳に登らなかったので、水芭蕉を見る時間が多く取れた。
竜宮十字路から南側、アヤメ平の方向に少し行った所も水芭蕉やリュウキンカの群生地となっている。

竜宮小屋は尾瀬ヶ原のど真ん中に立ち、混雑が心配されたが、宿泊者は60名ほど。通された部屋は6畳で同宿者も6名。窮屈さを感じることはなく、快適だった。
ただ、今の季節くらいが一番過ごしやすいのかもしれず、標高1400mの尾瀬は、夏季の昼間は小屋の中はけっこう暑いのではないか。
食事後、尾瀬の四季をつづるビデオを見て1日が終わる。