~スリル満点、西上州随一の怪峰~ けなしいわ(1290m) 2008年4月30日(水)晴れ
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萌黄色の山肌を見ながら、再び湯ノ沢トンネルをくぐる。磐戸地区からさらに南牧村の奥深くへ入っていく。 雨沢・六車と見覚えのあるバス停を過ぎる。砥沢まで来ると車道は細くなり、住居の間を縫って走るようになる。いかにも田舎の里といった雰囲気で、西上州の山を登るときはこういう集落付近を歩く魅力も捨てられない。 しかし南牧村は、休日になると登山に適したバス便がなく、移動手段が限られる中では単に山の登り下りしか出来なくなってしまう。もっとも静かな里を車で乗り回すのもあまり褒められたものではない。 西上州の雰囲気を存分に楽しむには、現代人には時間が足らな過ぎるのである。 羽沢から林道を上がっていく。立岩登山口である線ヶ滝への道を見送りさらに細道に分け入る。道は時々未舗装になる。毛無岩登山口である道場地区は、堰堤の工事をしているらしく音がうるさい。 芝桜が植えられた坂道を登っていき、道幅が2メートルくらいしかない道を恐々と進む。舗装が切れると駐車場がある・・・はずなのだが、その手前に工事のトラックが停まっていて先に入れない。運転手はどこかに行ってしまっている。 とりあえず戻るしかない。道幅が狭いのでUターン出来る所まで細い坂道をバックで下る。山に登る前に大汗をかいてしまった。冷や汗もかいた。車は結局、道場集落からずっと下った工事現場の前に停めることになった。
道場集落の入り口にバス停があるが、これは地元の生活路線バスで金曜日にしか走らないもの。坂を上り山道に入る。駐車場に車が1台停まっている。 毛無岩の指導標を見て、杉林を抜けるとすぐに沢沿いの道となる。踏み跡は薄い。沢沿いの登山道なら薄くてもしょうがないのだが、ここのはかなり判別が困難だ。おまけに倒木がすごく、徒渉も何箇所かある。 たまにビニールテープや赤ペンキも見るのだが、文字通り「たまに」しかない。奥多摩や丹沢のような数10メートルおきにテープや指導標がある環境に慣れてしまっていると、こういう登山路はきつい。 ヤブの倒れ具合で人が通ったあとかどうかを判断したり、路面がごくわずかに黒くなっている部分などを、目を皿のようにして探しながら進んでいく。テープを発見すると今まで来た道が正しかったことが確認でき、そのたびにほっとする。 この荒れ具合は、昨年の台風による影響も残っているように思える。南牧村はこのとき、がけ崩れや県道崩壊など、大きなダメージを負っている。山の中が無傷であろうはずがない。 あまり人の入らないこの山などは、台風が通った直後の状態とほとんど変わっていないのかもしれない。
沢沿いに進むと正面に鋭い一本岩を見る。そしてその右手に造林小屋。ようやく手持ちの地図と照合できるものが現れた。最奥(3度目)の二俣で尾根上の踏み跡に入る。すぐに頭上に稜線が見えてくるがまだまだ長い。 急な登りはやがて雑木林の中を進むことになる。左上にイデミの岩塔が威圧的だ。 尾根が広がってここでも踏み跡を見失う。稜線に上がった場所は相沢越でなく、それより右に登った地点だったようだ。荒船山や黒滝山を示す指導標が立っている。裏側には「毛無岩 上級者向け」を示す板もついている。いよいよその方向に進む。 北側の小ピークとつながる尾根に乗る。前橋山遊会によるブリキの標識がかかっている。コブを越えいったん高度を落とすと、足の親指をそっくり返らせたような毛無岩が白日の下となる。異様な光景である。 潅木の稜線を歩いて、毛無岩直下に至る。目の前にナイフリッジの急登が頂上まで達している。距離は50mほどあるだろうか。 尾根の幅は1mなく左右とも切れ落ちているが、左側には潅木がある。足の置き場がしっかりついているので、濡れていたり風がなければそれほど危険ではない。しかし高度感は相当なものだ。高所恐怖症の人は登るのは遠慮したほうがいいだろう。 ゾクゾクドキドキしながらナイフリッジを一気に上り、毛無岩の山名板を見る。少し先にある頂上へは細い岩稜を伝っていくが、四つんばい状態で慎重に達する。 目の前は切れ落ちており高度感がすごい。新潟の金城山と少し似ているがこちらのほうが狭く細い頂上で、5名くらいしか滞頂できない。いやそもそも、この切り立った岩の上でゆっくり休憩しようという人はいないのではないか。 展望は素晴らしく西上州の山はぐるりと見え、北西に浅間山、南西には八ヶ岳の白い峰も霞んではいるが視界に捉えられる。 とりあえず岩の陰に腰を下ろして(恐怖感で長く立っていられない)5分ほどその眺めに感心する。すぐ下山とする。 |