2019年8月17日(土) |
◇ |
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練馬IC |
4:00 |
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関越自動車道 上信越自動車道 |
◇ |
上田菅平IC |
6:00 |
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国道144,406号他 |
6:35 |
菅平牧場 |
6:50 |
8:15 |
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小四阿 |
◇ |
9:05 |
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中四阿 |
◇ |
10:05 |
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四阿山 |
10:35 |
11:20 |
十ヶ原 |
◇ |
12:03 |
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根子岳 |
12:25 |
13:35 |
展望台 |
13:40 |
14:00 |
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菅平牧場 |
◇ |
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国道406,144号他 真田温泉立寄り |
◇ |
上田菅平IC |
17:00 |
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上信越自動車道 関越自動車道 |
◇ |
練馬IC |
19:45 |
この週末も関東は猛暑となる模様。甲信地方は晴れてくれそうなので、夏の花を見に四阿山に登る。
今回が3回目、最初は菅平牧場から根子岳経由で、2回目は鳥居峠からの登りだった。どちらもなかなかいいルートで、何といっても花が多い。根子岳は花の百名山に選ばれているが、四阿山も花の山である。
前夜出発しての車中泊は、気温が高く寝られそうにない。前日に現地まで行ってしまえば標高も上がって涼しいところで泊まれるが、時間的に無理。頑張って日帰りとする。
四阿山山頂までもう一息 [拡大]
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菅平牧場の管理棟は朝早いのでまだ開いていない。入場料200円は帰りに払う。広い草原には駐車場がいくつかあるが、もうだいぶ埋まっている。おそらく前夜のうちに着いた人が多いのだろう。第二駐車場に停めた。
いっぱいの青空だが、見上げる四阿山や根子岳は雲に隠れている。ここに来るまで、浅間山も湯ノ丸山も山頂部は雲に覆われていた。晴れ予報でも、朝から高温多湿のため雲ができやすい。
今日は登りに中四阿ルートを使う。駐車場から東へ、牛が間近に見られる牧草地につけられた道を進む。5分ほどで登山口となる。登山道の周りだけが樹林になっていた。シラカバの白い樹皮が清々しい。登山道を伝って水が流れ、始めのうちはひどいぬかるみ状態である。
やがて広葉樹の豊かな森の道となる。沢沿いにはソバナが咲き、カツラの大木が鎮座している。高原の山のイメージが強い四阿山にこんなところがあったとは。前回下山に使ったときの記憶がない。
高度を上げると、一転してシラカバの明るい林となる。シラカバは先駆種で典型的な陽樹である。
陽樹は開墾された土地にまず最初に根づくが、木としては短命だ。しかも落ちた種子から再び発芽することが少なく、一代で終わるものが多い。このシラカバ林も代替わりはおそらくないだろうから、今後維持していくには植林なり、人間の手が入ることになる。
さっきの沢沿いの狭い部分だけに、昔の四阿山の原生の自然が残されていた気がした。
シラカバ林には、ところどころでダケカンバも混在している。はっきり棲み分けているようでもなく、いっしょに生育している感じである。
1917mの小ピーク(小四阿)で南面が大きく開け、牧草地や山稜が見えてきた。この後は背の低い針葉樹林が点在する開放的な草原歩きとなる。
針葉樹はシラビソで、黒い球果を今年初めて見た。四阿山にはオオシラビソもあると各サイトや文献で書かれているが、歩いた範囲で見たのはみなシラビソだった。
オオシラビソは東北北部や日本海側など、雪の多いところでよく見られるということで、四阿山は位置的に微妙なところ。一般的な識別方法は葉の生え方で、葉が枝を隠すほど密に生えているのがオオシラビソということになる。しかしこれも個体差があり、密かそうでないかという判断基準は主観が入るので難しい。若いオオシラビソはまだ枝を隠すほど葉が生え揃っていないものもある。
もうひとつ、球果で見分けるやり方もある。どちらも黒く細長くて見分けがつきづらいが、シラビソのほうは苞鱗という突起のようなものがわずかに出ているらしい。オオシラビソの球果に苞鱗は見られないそうだ。さらに、オオシラビソの球果は若干青紫色に近い。これからすると、この日見た球果はシラビソで間違いない。
昨年見た加賀白山のオオシラビソ、大菩薩・小金沢連嶺のシラビソと比べるとわかる。
1917m以降、どこも高山植物のオンパレードである。ツリガネニンジン、シモツケソウ、ワレモコウ、そしてヤナギラン。岩の多い斜面にくると待望のマツムシソウも、たくさん咲いていた。四阿山は高山植物が至る所に、惜しげもなく咲いている印象がある。前回も夏に来ているのでそういうイメージが強いのかもしれないが、その前は9月下旬だったにもかかわらず、マツムシソウがたくさん見られた。
根子岳や四阿山も、今の時間は雲を割って姿を見せている。目の前の四阿山のてっぺんへは、まだかなり標高差がある。
中四阿の岩ピークを巻き、じっくりと登っていく。いったん太陽が陰るといっぺんに涼しくなる。今日は半袖で来ているので、行動中でも肌寒いくらいだ。天候変化は急で、山頂に着くころには再び雲に覆われてしまうことが予測された。
あずまや高原ホテルからの道を合わせたのち、稜線に上り着く。やがて根子岳からのルートが左から合流する。雲の下を歩く時間が増えたが、四阿山の山頂部だけはずっと日に照らされている。根子岳ルートを合わせてからは、前後に登山者も多く見るようになる。
山頂直下の木の階段。鳥居峠ルートが合流する。中四阿ルートは、山頂近くで他の3つのメインルート全てと合流する。まあそんなことはないと思うが、帰りはうっかり間違って、別のルートに入らないようにしたい。
階段からひと登りで石積みに守られた社、その先が四阿山山頂である。木が茂り意外と広い眺めの得られにくい山頂だが、それでも360度展望。南面を中心に雲が多くなってしまって残念な一方、根子岳や北東側に続く尾根の眺めはまだよく見える。
いつかこの北東側からの長い尾根を登ってみたい。以前の分県登山ガイド(20世紀の遺物)の四阿山の項には、このルートが紹介されている。菅平牧場からのルートはまだ一般的でなかったようだ。
狭い山頂に人は多いので、前と同じく座る場所探しに苦労する。風が吹くと肌寒い。東京にいたら今頃はおそらく35度くらいだろう。ここは別世界、20度近く違うようだ。
根子岳への縦走に入る。すぐにシラビソ林下の急な下りが始まり、これが長い。四阿山と根子岳間の鞍部の標高は2000mくらいだから、およそ350mの標高差を下ることになる。
岩ゴツの急坂やぬかるみ、腰上ほどの笹薮が断続し、東北や北陸の険しい低山を想像する。登山道のぬかるみはおそらく雨によるものではなく、ここは1年じゅう湿っぽいのかもしれない。前回は登りでかなり苦しめられた記憶があるが、下りもきつい。
鞍部の笹原(十ヶ原)にたどり着く。樹林が切れて一転、のんびりさわやかな雰囲気だ。根子岳へは今度は高度差200mほどの登り返しとなる。こちらは樹林がなく、終始見通しはいい。
青空の見える部分がほとんどなくなり、振り返り見る四阿山の山頂部付近に雲がまとわりついては離れ、を繰り返している。
登りきると、根子岳山頂までは爆裂火口の縁に沿って登山道はつけられている。大岩の間をすり抜けていく箇所もある。今年初めてダイモンジソウを見た。
広い根子岳山頂に到着。真っ白けになってしまい展望は残念。家族連れを含め、四阿山よりも人はむしろ多い。牧場から根子岳を往復する人も多いようだ。長袖でもいいくらい涼しい山頂でゆっくりする。
菅平牧場へ向けて眺めのいい道を下る。左手のダボス登山道はスキー場を経由するもので、あまり人影は見られない。少し高度を落とすとすぐに日差しが復活、気温も上昇する。マツムシソウやヤナギランは咲き続け、ハクサンフウロ、タムラソウも多い。
植生的には登りの時を逆回転させている感じで、やがてダケカンバ林・シラカバ林へ移行する。
林を抜けるとあずまやの建つ展望台に着いた。すでに観光客の世界だが眺めはよく、花も多い。初訪時の9月下旬、マツムシソウがたくさん見られた印象があるのは、ここのお花畑で見た記憶が強かったからだろう。
マツムシソウは四阿山・根子岳の夏山の主役で、今回もあちこちで群落を作っていた。15年以上昔の大菩薩・大蔵高丸で見たマツムシソウ群落を思い出す。この花を見ると、夏山シーズンも終幕が近づいたことになる。
遊歩道の草地を、花の写真を撮りながら下る。駐車場着は2時過ぎ。なかなかタフで歩きでがあり、それでいて展望も花も一級品の山だった。夏の締めくくりは菅平や志賀高原など、上信・信越の花の多い亜高山がやはりいい。
東京近郊の山で見られる花がどんどん減っている今、これら遠方の山々はこの豊かな自然環境がずっと変わらず維持されるのか、期待と同時に不安もある。