下山を開始する。時間が押していれば往復も止むなしと思っていたが、せっかくなので稜線コースを経由してみよう。
赤茶けた斜面を、どんどん人が登ってくる。すれ違うためにいったん立ち止まる回数が増える。樹林帯に戻って前掛山登山口から右折し、Jバンドのほうに行ってみる。
Jバンド付近から見る浅間山は桁外れのスケールで迫る |
ほどなく開けた溶岩台地のような場所に出る。ツガザクラが花をつけている。アカモノと似ているが葉の形が違う。
やがて目の前に大きな岩壁が立ちはだかる。下から見るとあまりの巨大さに圧倒される。Jバンドへはこの急斜面の岩尾根を登っていく。遠目にはどうやって登るのかわからない崖のような斜面だが、実際はしっかりした道がつけられていた。
シャクナゲがたくさん咲く中を、頑張って登る。岩の間をすり抜け、下ってくる人がいると、何とかスペースを見つけてすれ違う。
稜線に上りついたところがJバンドで、鋸岳下の鞍部となっている。岩が積み重なった休憩適地である。
目の前に浅間山が大きい。登り下りしてきた登山道もはっきりと見える。こうして見てみると、登山道というのは不思議なものだ。こういう、動物も直物も何もない山の頂に通じる道というのは、人間の好奇心だけで作られたものである。そう考えると面白い。
鋸岳へは向かわず、Jの形を描くように稜線を進む。アルペン的な非対象山稜の岩尾根は八ヶ岳の赤岳~横岳付近を思い起こさせるような快適さだ。浅間山を始め周囲の山々の眺めも素晴らしい。往路の草すべりから湯ノ平への急斜面も見下ろせる。
鋸岳~仙人岳~蛇骨岳と短い距離の間でも、浅間山は見える角度によって微妙に姿を変えていく。蛇骨岳から先、稜線はやや左(南)に方向を変えると、樹林帯の中を歩くことが多くなる。ただし浅間山側は随所で展望が開ける。
少しだけ高度を上げるが、ここまでかなり足を使わせてくれたので体力的にもうアップアップだ。再び標高2400mを越えたところで、黒斑山山頂に着いた。
以前、噴火活動レベルの高い頃はこの黒斑山を浅間山への登山として登った人も多く、この日も出発の遅かった登山者で賑わっていた。切り立った東面からはもちろん本峰の眺めもよく、朝通ったトーミの頭も見下ろせる展望の地である。
湯ノ平への下り口を再び確認してトーミの頭でいったん休憩、浅間山の最後の見納めをする。
車坂峠への下りは中コースを行く。カラマツ帯の落ち着いた道は何だかホッとする。いったん篭ノ登山を展望する台地に出た後は再び樹林下。蛇骨岳以降の登山道は何箇所かで枝道が分かれて紛らわしいが、結局は合流するようだ。
最後はほとんど斜度を失った道を辿って、車坂峠の駐車場の前に出た。登山者のほかにも観光客、マイカー、バスと大混雑である。
下山後時間があったら、すぐ取り付ける高峯山にも登ってみたかったが、今日は疲れたのでまた今度にしよう。高峰高原のニッコウキスゲを見学した後、車で高峰温泉まで行く。
ここの温泉は久しぶり。香り豊かな本格的なお湯は極上である。ぬる湯が気持ちよく、つい長風呂になってしまった。ここには一度宿泊したいと思っていたが、また来る機会もあるだろう。
帰路の高速はかなり渋滞していた。梅雨明け10日でしょうがないだろう。ただ温泉の効き目だろうか、歩いた距離にしては疲労感がさほど残らない今日の山だった。