2016年5月1日(日) |
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住吉屋(根尾) |
5:20 |
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国道157号 |
5:50 |
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能郷谷林道ゲート |
6:00 |
6:55 |
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能郷谷登山口 |
7:05 |
7:45 |
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1/6の標識 |
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7:55 |
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旧登山口 |
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8:18 |
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2/6の標識 |
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8:49 |
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3/6の標識 |
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9:10 |
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前山下 |
9:20 |
9:25 |
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4/6の標識 |
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10:00 |
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5/6の標識 |
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10:20 |
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能郷白山三角点 |
10:30 |
10:40 |
神社 |
11:10 |
11:30 |
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5/6の標識 |
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12:00 |
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4/6の標識 |
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12:05 |
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前山下 |
12:15 |
12:30 |
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3/6の標識 |
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12:50 |
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2/6の標識 |
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13:10 |
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旧登山口 |
◇ |
13:15 |
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1/6の標識 |
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13:40 |
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能郷谷登山口 |
13:45 |
14:30 |
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能郷谷林道ゲート |
14:40 |
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国道157号
うすずみ温泉立寄り
国道418号 |
16:50 |
関広見IC |
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東海環状自動車道 東海北陸自動車道 |
17:20 |
白鳥IC |
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県道326号 |
17:30 |
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浅野屋料理旅館(白鳥町)(泊) |
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北陸地方の山は、10年以上前に医王山と富士写ヶ岳(いずれも石川県)に登ったきりご無沙汰である。岐阜福井県境の奥越・あるいは越美山地は今まで全くの空白地域で、いずれはと思っていた。とにかくアプローチが東京からは大変だが、今回のGWはまとまった休みが取れて、ようやく行くことができた。
ノウゴウイチゴが初めて発見された山として知られる能郷白山は、この二県境の山である。国道157号の温見(ぬくみ)峠から登るのが一般的だが、例年5月いっぱいまで冬季通行止めになっている。そのため今の時期は岐阜県側の能郷谷から歩くことになる。
標高差1300m近い健脚コースとなるが、豊かな自然郷をこの際じっくり時間をかけて歩くことにする。
山頂部の社が見える能郷白山
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本巣市根尾の旅館に前泊し、翌朝早出する。宿の人は能郷白山ではなく、単に「白山」と呼んでいた。地元の人なら当然のことだろう。
加賀の白山からこの能郷白山に至る山域を「両白山地」とも呼ぶ。冬はこの2つの白山がひときわ真っ白な姿を見せるそうである。
根尾地区も奥美濃最北端の隠れ里のような場所なのだが、さらに車で30分ほど奥地に入ると人家も尽き、明るく開けた新緑の谷間となる。そして同じような風景がどこまでも続き、どこか南アルプス南部の登山口に行くのと似ている。日本の山地の奥深さを実感できる場所である。
6時に駐車スペースのある林道ゲートに着くと、すでに2台の車があった。ゲートの先も細々ながら林道は伸びているのだが、落石が道をふさいでいたり、さらに川岸の路肩が大きく崩壊しているところもあって、四輪ではとても通行できそうにない。
新緑が目に優しい能郷谷を見ながら、大方舗装された直線状の道を歩いていく。傾斜はさほど感じないが、緩い登りの道である。ゲートのあたりが標高350m、3.5kmほど先の登山口へは400m以上も登ることになるので、それなりにエネルギーは使う。能郷谷登山口に着く頃はすでに、うっすらと少し汗をかいてしまった。
能郷白山登山口の標柱の立つ場所から、まずは渡渉となる。水量が多くしかも流れが早い。どこを渡っていいのかわからない。5分ほど迷ったあげく、靴を脱いで渡ることにした。雪解けが例年より早いことが水量の多さに影響しているだろうか。
靴下と靴を履き直し、あらためてスタートだ。すぐにブナ林の急登となる。この先、前山まできつい行程となりそうだ。しかし四方をライトグリーンに包まれた尾根道は清々しく、登りのつらさをまぎらわせてくれる。
いったん緩やかになると「1/6 能郷白山山頂まで4315m」との標識が現れる。ガードレールの残る旧登山口から先は眺めもよくなる。
見下ろす山肌は芽吹きのグラデーションが見事で、まるで紅葉しているようだ。いや、紅葉よりきれいかもしれない。
ただ上空では風がうなりを上げて吹きすさんでおり気味が悪い。雲も多い割には朝から気温がそれほど低くないので助かっている。足元には昨日に引き続きショウジョウバカマが多く咲いている。山域が全く違うのに咲いている花は偶然同じだ。
前方に前山のピークを見るようになると再び急な登りになり、岩がちになった尾根を行く。背後の眺めがぐんと開けると
「3/6 山頂まで2715m」の標識を見る。登山道は前山のピークを通らず西側を巻く。
左手に能郷白山と思われる台形状の山が初めて見えてきた。前山から伸びる稜線の先にそびえるその姿は、ここからだとまだまだ遠い。岐阜・福井県境の奥山は徹底的に奥地にあるようだ。前山直下で休憩する。このあたりは風の通り道でさすがに肌寒く、一枚はおる。
ここから先は台形の山を正面にすえ、稜線を歩く。しばらくはきつい登りはないようだ。豊かなブナ林は芽吹き前で、見通しがいい。
例年のGWであれば、前山から先は雪の稜線になっていることが普通らしいが、今年は雪が全くない。登山道以外の斜面にも雪は見えない。少しくらい白いものが残っていたほうが見映えもいいのだが、元々このGWで能郷白山を登ろうと思ったのも、雪が少ない今年なら自分にも大丈夫と目が向いたからだ。
ここ数年のGWは新潟の1000mくらいの残雪の山に登っていて、標高1600m台の能郷白山なら同じくらいの雪の量かなと想像していたのだが、正直これだけ雪がないとは思わなかった。北陸の福井県との県境の山といっても、どちらかというと太平洋側の岐阜県の山の印象が強い。
足元にはショウジョウバカマやイワナシ、先ほどの岩場の登りではイワウチワの咲き残りが見られた。黄色い花は葉の形からミツバツチグリのようだ。2人組が下りてきた。さっきもう一人いたので、駐車スペースに停まっていた2台の車の主に会ったことになる。
能郷白山に近づくにつれ、山頂部の社がはっきりと見えるようになってきた。社付近をよく見ると一人いる。車の数と今まであった人数からするともう誰もいないはずだが、どこから登ってきたのだろうか。
本体の登りに入ると樹林はなくなり、高山の雰囲気の中ガレた急坂に取り付く。草むらの中にカタクリがきれいな花を咲かせていた。このあたりは雪解け間もないようで地面が柔らかい。左手にそびえる形よい三角形は磯倉という山で標高も能郷白山より高い。
山頂直下で分岐となるが何も標識はない。直進方向の山頂の社はもうすぐそこだが、右手の高いほうに行く。すぐに一等三角点のある能郷白山山頂に到達した。笹原の切り開きで展望はなく、木の標柱は字がかすれていて、能郷白山と書かれているのかもわからない。少し先まで行ってみると北側の展望が開けた。
この先を行くと社に行き着けるのかと思いそのまま進んでいったが、下りになってしまった。温見峠へ下る道に入っていたようだ。先ほどの分岐に戻って、あらためて社のある場所に至った。ようやく山頂に立てた達成感に浸る。
とにかく回りは山・山・山で限りがない。登ってきた方向には前山から伸びる尾根筋が堂々としている。しかしまだ空には雲が多く、春霞みで遠望は効かない。加賀白山どころか、明日登頂予定の荒島岳もどこにあるかわからない。それでもこれほどの山ばかりの眺めなのだから、今いるところはよほど山奥なのだろう。
西側には先ほどの磯倉がすぐ近くにある。しかし登山道はないようである。その先、尖がった特異な山容は冠岳だろう。事前調査不足ということもあり、今わかる範囲の山はこれくらいである。
登山者もだんだんと増えてきた。能郷白山は奥美濃の代表的な山として、けっこうファンがいるのだろう。国道の通行止め期
間中は能郷谷から登ることになるので大変だが、登山の魅力が詰まった山として根強い人気がありそうだ。
下山は往路を戻る。空模様はすっきり晴れとまではいかなかったが、風も弱まってまずまずの快適な登山ができた。今日は昨日と比べて、次の宿まではそれほど長い距離ではない(それでも車で2時間)ので、ある程度は余裕で歩ける。
それにしても、当たり前だが県境にある山はどこも山深い。昨年の会津喜多方の飯森山もそうだったが、いったいどこまで登るのかと思いながら登っている。日本の山地は本当に広いものだと実感する。
最後のブナ林の急坂を慎重に下り、行きと同じく裸足で沢を渡って登山口に戻った。
林道ゲートに着いたのは14時30分。車が10台くらいに増えていた。山菜採りにやって来たおじさんに、今日は15名くらい登山していますよ、といったら驚いていた。
うすずみ桜で有名なうすずみ温泉で汗を流す。静かな山村の中に突然現れる瀟洒な建物で、道の駅が併設されていた。
根尾地区はこの他、内陸で発生した地震としては最大規模の「濃尾地震」の震源である活断層が残されている。折りしも先日、熊本県で発生した地震で活断層が注目を浴び始めている中、GWを利用してこの「根尾谷断層」を見学に来た人も多かったようである。宿でテレビを見ていたら、自分のいる場所のすぐ近くが全国ニュースに映ったのでびっくりした。
国道から関広見インターで東海北陸自動車道へ。今夜の宿のある白鳥町に着いたのときはもう薄暗くなっていた。