山の写真集 > 谷川岳・越後・信越 > 新道から蓬峠、清水峠
  • -ニッコウキスゲ咲く歴史の道-
  • 土合駅-新道-蓬峠-清水峠-居坪坂
  • 谷川連峰
  • 群馬県、新潟県
  • 武能岳(1760m),七ツ小屋山(1675m)
  • 2013年7月20日(土)~21日(日)
  • 1日目:11.3km、2日目:12.7km
  • 1日目:6時間30分、2日目:5時間25分
  • 1089m(土合駅-武能岳)
  • 蓬峠(テント泊)
  • -
  • 高崎線,上越線,南越後観光バス
天気1
天気2

 

2013年7月20日(土)
赤羽駅 5:23
  高崎線
6:55 高崎駅 7:10
  上越線
8:13 水上駅 8:24
  上越線
8:35   土合駅 8:55
9:03   土合橋
9:25   マチガ沢新道出合
9:57 一ノ倉沢分岐
10:23 JR巡視小屋 10:28
11:20   武能沢新道出合
12:10   鉄塔 12:25
12:45   白樺避難小屋 12:50
14:00   蓬峠 15:00
15:55 武能岳 16:20
17:05 蓬峠
(テント泊)
2013年7月21日(日)
  蓬峠 6:00
7:10 七ツ小屋山 7:30
8:10 清水峠 8:30
9:37 登川出合 9:47
10:03   兎平
11:20   河原
12:03   清水集落(林道入口)
12:15 清水バス停
上田屋立寄り
13:45
  南越後観光バス
14:20 六日町駅 14:42
  上越線
15:43 水上駅 15:53
  上越線
16:56 高崎駅 17:01
  高崎線
18:50   赤羽駅

 

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テントを担いで一泊、例年通り八ヶ岳でもと思ったが、上越国境方面の天気がよさそうなのでそちらに向かう。
以前7月に清水峠泊で馬蹄形縦走をした。今回はそんな長丁場ではなく、前から一度歩いてみたかった土合からの峠道を登り、蓬峠で一泊する。



蓬ヒュッテの建つ蓬峠。右は七ツ小屋山

土合駅の階段を登る

高度差70メートル

マチガ沢出合の広場。尖った武能岳を望む。ここから道が細くなる

尖峰を目指して

新道と旧道をつなぐ道が何箇所かある

旧道との連絡点

オカトラノオ

オカトラノオ

緑濃い谷間の道を行く。正面に国境稜線が見えてくる

国境稜線を望む

沢や小滝をまたぐ箇所も多い

小滝をまたぐ

武能沢出合からは、鉄塔基部までブナ林の登りとなる

ブナ林へ

鉄塔基部からは笠ヶ岳が目の前

笠ヶ岳

旧道の武能沢出合付近は基本的には通行禁止となっている

基本的には通行止め

白樺避難小屋のすぐ先で清水峠に向かう旧国道と分かれる

白樺避難小屋

蓬峠までの登りにて、雪渓のそばにコバイケイソウを見る

コバイケイソウ

早朝の高崎線から上越線に乗り換え、水上駅でさらに長岡行きの便に乗り継ぐ。2つ先の土合駅から歩き始める。
下り線の土合駅はモグラ駅として有名である。トンネルの中に駅があり、地上までは486段もの階段を登っていく。谷川岳はじめ、この地にはもう15回くらい足を運んでいるのに、このモグラ駅に降りたことはなかった。水上駅からバスに乗ってしまうことが多かったからだ。

ひんやりした土合駅で多くの人が下りる。もの珍しそうに記念写真を撮っている人もいる。ホームの横からすぐ直線状の階段だ。照明は最低限で薄暗い。500段近くあるのに、意外にも出口が明るく見えている。だから、すぐ登れてしまいそうに見えるのだが、実はなかなか上に着かないのである。山にも、近くに山頂が見えてなかなか到達できないのがあるが、それに似ている。
でも実際、山登りと階段登りは別物だ。階段はやはり疲れる。こんなときに限ってザックは重装備なため、出だしから汗をかいてしまった。
土合駅の外に出てからはいつもの見慣れた風景。ほとんどの人は谷川岳ロープウェイに向かった。自分は土合橋を渡ったすぐ先の分岐に入る。蓬峠までおよそ4時間半の行程である。

最初は林道のような道。ヤマアジサイの青が鮮やかだ。広場になっているマチガ沢出合には案内板があり、ここから先は道が細くなる。
左に旧道からの道が合わさってくる。旧道は「旧国道」、すなわち国道291号のことだ。こんな山道でも国道である。
こちら群馬側から清水峠を越えて、越後側に抜ける国道291号は明治時代に造られたものだが、すぐに崩落で使えなくなってしまった歴史がある。現在この国道は、登山道として清水峠まで続いているが、その先は今なお廃道である。今日自分が歩いているのは「新道」であり、途中の白樺避難小屋までは新道と旧道の2本の登山道が存在する。

新道は林の中を主に歩くが、時々河原に出たり沢をまたいだりする。ロープのかかった急崖や小さなアップダウンはあるものの、総じて穏やかで標高は上がらない。数日前までのような猛暑だったらつらいところだが、今日は事の外涼しくてよかった。眺めもけっこうよく、行く先に槍ヶ岳を思わせる武能岳の尖峰、そして目指す国境稜線のたおやかな笹原が時折り覗く。オカトラノオやタマガワホトトギスが足元に咲く。
やがてJR芝倉沢巡視小屋の茶色い建物が見えてくる。谷が狭まり、両側に谷川岳一ノ倉沢の荒々しい岩壁、それと対照的な朝日・笠ヶ岳のおおらかな稜線が見上げられる。

小休憩の後先に進む。ここまでのルートは数年前に歩いており、いよいよ未踏のエリアだ。ミズナラなどの深い森林帯をくぐり、岩壁に小滝となって流れ落ちる沢を越えたりしながら、少しずつ高度を上げていく。やがてあたりが開け、右下に湯檜曽川を見下ろしながらの歩きとなる。シモツケソウやオニシモツケ、そしてコオニユリも1輪見る。

蓬峠のテント場はニッコウキスゲがよく咲いていた。バックは朝日岳、笠ヶ岳

キスゲ咲く

蓬峠に建つ蓬ヒュッテ。水色だった入口は、塗装が剥げ落ちたか

蓬ヒュッテ

蓬峠から雲たなびく夏空を仰ぐ。谷川岳の岩峰が覗く。左奥に赤城も見えている

空高く

蓬峠から武能岳へ、千島笹の海を歩いていく

千島笹をかき分け

千島笹越しに苗場山の平頂を望む

苗場山

急斜面にニッコウキスゲが咲く

急登をこなす

武能岳から南西面、主脈稜線に形のよい万太郎山(中央左)、エビス大黒ノ頭、仙ノ倉山、平標山が並ぶ

端正な山容

武能岳(左)への登りにて、どっしりとした山容の一ノ倉岳、茂倉岳を望む

緑の山稜

ピンク色のヨツバヒヨドリも多く咲く。ゴツゴツした尖峰の大源太山(左手前)、七ツ小屋山(右手前)、巻機山を望む

百花繚乱

日本海側に日が落ちる

落日

正面に横たわる国境稜線の笹原がだんだんとはっきり見えてきた。武能沢で水を補給し、ここで川や沢と離れ、尾根筋のジグザグ道となる。スラッとしたブナがきれいな道である。ようやくはっきりとなった登りは、最初体がついていかずつらく感じるが、気候もよいこともありじき慣れる。木の間から送電線と鉄塔が見えるので、とりあえずそこまでの頑張りだ。
樹林が少し低くなりタニウツギが見られるようになると、その送電鉄塔の基部に着いた。尾根の肩のような突き出た場所だ。正面に笠ヶ岳や朝日岳が大きく、右手後方には一ノ倉岳あたりも見えている。
風除け板の反対側には深い谷を隔てて清水峠方面の稜線や送電線も、もう手の届くところにある。なかなか展望の広い場所だ。今回始めての山の上から見る眺めを前に、風で涼みながら当たりながら少し休憩する。

鉄塔を後にすると、すぐに左から旧道が合わさってきた。旧道は武能沢出合付近の岩場や雪渓通過がやや難しく、新道に比べて時間もかなりかかるようだ。合流点には「崩落のため旧道は通行禁止、新道を歩くこと」との掲示がされていたが、実際歩いている人は多い。
白樺避難小屋まではおだやかな森の道が続く。小屋の先で清水峠に至る道と分かれ、ここからは森林限界をほぼ越えた千島笹の道となった。
山腹をなぞるように道はつけられていて、谷筋には雪渓が冷たい水場を提供してくれている。蓬峠に泊まる場合この雪渓が水場となる。
登山者が下りて来たので聞いてみると、このさらに上にも雪渓があるという。なるだけ高度を上げてから水を汲みたいので、さらに登って次の雪渓で4リットルの水を汲んだ。

さて、時折りガレ場も混ざる笹原の登山道周辺はもう、高山植物がよりどりみどりである。シラネアオイ、アザミ、ヨツバヒヨドリ、オオバギボウシ、モミジカラマツ、ナエバキスミレ、シシウド。そして今年各地の山でよく咲いているコバイケイソウも群生していたが、花の盛りはやや過ぎている。
高度を上げ、空が広くなってくるとニッコウキスゲも目立ち始めた。4キロ増えた背中の荷物の重さを少し忘れさせてくれる。残念だったのはこの上にもさらに、水の取れる雪渓尻が2箇所もあったことだ。まあこれは実際歩いてみないとわかなないことなので、しょうがないだろう。
斜面を登り切って国境稜線の登山道に合流する。新潟側の空は青空だった。正面に巻機山の平頂も望める。開放的な千島笹の平原を歩き、蓬ヒュッテの建つ蓬峠に到着する。

ヒュッテの前にテント設営場所がある。幕営料は無料で、小屋のトイレ使用するときに協力金を払う仕組みになっていた。
設営地の回りにはニッコウキスゲがたくさん咲いていて、こんなところにテントを張っていいのかと、少し申し訳なく思う。
右に谷川岳から茂倉岳、左に朝日岳、背後に巻機山や苗場山、越後の山々、そして正面には赤城まで望める。水場もそう遠い場所ではなく、小屋で飲み物も買えてしまう。テントを張るには最高の場所である。
設営後武能岳を往復する予定だが、あまりの快適さに、登る前に缶ビールを買って飲んでしまった。350mlで600円だった。

軽身になって、武能岳の方向へ、笹原を進む。ニッコウキスゲがどこまでも咲き続けている。馬蹄形縦走は5年前の7月第2週で、このときはニッコウキスゲはどちらかというと咲き始めだった。今回は花の盛りといっていいだろう。
他にもハクサンフウロ、ヨツバヒヨドリ、ミヤマアキノキリンソウ、オオバギボウシが見られる。
広大な笹原の1本道は、意外と草深く、地面が見えないところもある。以前歩いたときはもう少し道がはっきりしいていたと思うので、ここの刈り払いは毎年行っているわけではないのかもしれない。

振り返ると新潟県側の青空が群馬側にどんどん侵食していって、朝日岳あたりもすでに青空の下になっていた。
今日の上越国境は空気が乾き暑すぎず寒すぎずで、とても爽やかである。上越国境稜線、とくに谷川連峰は、太平洋と日本海気候両方がぶつかり合う気象変化の激しい場所だが、今日に限っては、太平洋側と日本海側の空気の質にそれほど違いがなく、仲良く手を結び合っている感じがする。だから今日は、午後になっても雷が鳴ったり雨が降るような気が全くしないのだ。上越国境でこういう日は珍しいと思う。

高度を上げ、急登となる。大きな茂倉岳が見えてくる。登山道は相変わらずニッコウキスゲが咲き揃う。武能岳頂上手前の尾根に立つ。緩やかに登り下りをして、麓から見た尖峰からは想像できない、南北に長い武能岳に到着する。
目の前の茂倉・一ノ倉・谷川岳とその背後に万太郎~エビス大黒~仙ノ倉~平標の主脈稜線がくっきりと浮かぶ。万太郎山の秀麗さは特に目を惹き、近いうちに呉策新道を使って登ってみたいものだ。
これらの山が見れれば十分なのだが、今日はよどみのない大気の中で、展望がいつにもまして素晴らしい。南に赤城、武尊とともに奥日光の山や皇海山が重厚な山並みを形作っている。東、朝日岳・巻機山の後ろ側には平ヶ岳を初めとした中越の山々がおおらかな山容を見せていた。

涼しい風に吹かれながらテント場に戻ると、5張りほど張られていた。やはり馬蹄形の縦走者が多く、自分のように谷川岳と朝日岳の両方とも登らないのは少数派のようだ。
日も傾いてきた。さすがに冷えてきたので、長袖を2枚着てヒュッテの横から落日を見る。様々な形の雲が茜色に染まった。