-千島笹の大海原に憩う-
タイトル
土樽駅-蓬峠-朝日岳-白毛門-土合橋
山域谷川連峰
地域新潟県・群馬県
標高武能岳(1760m)、七ツ小屋山(1675m)、朝日岳(1945m)、笠ヶ岳(1852m)、白毛門(1720m)
山行日2010年9月4日(土)~5日(日) 天気
沿面距離1日目:10.4km、2日目:12.5km
歩行時間1日目:3時間35分、2日目:8時間30分
標高差1340m(土樽駅~朝日岳)
宿泊蓬峠(テント泊)
温泉-
交通高崎線、上越線、関越交通バスHome


行程

2010年9月4日(土)

赤羽駅5:23
高崎線
7:00高崎駅7:10
上越線
8:13水上駅8:24
上越線
8:42土樽駅8:45
9:10茂倉新道分岐
9:30黒金沢出合
10:25東俣沢出合10:33
11:05中ノ休み場
11:40茶入沢11:50
12:25水場12:35
12:50蓬峠14:00
14:45武能岳15:00
15:40蓬峠
(テント泊)

2010年9月5日(日)

蓬峠5:20
6:05七ツ小屋山6:10
6:55清水峠7:10
9:05ジャンクションピーク9:10
9:35朝日岳10:00
11:05笠ヶ岳11:20
12:10白毛門12:30
13:00松ノ木沢ノ頭
15:05白毛門登山口15:10
15:15土合橋
関越交通バス
15:36水上駅15:48
上越線
16:51高崎駅17:02
高崎線
18:50上野駅


関連リンク
[記録] 谷川連峰馬蹄形縦走(初夏)
谷川岳登山指導センター


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夜明け、群馬側の湯檜曽川流域は雲海になっていた。朝日岳から白毛門の稜線がシルエットとなって白んだ空に浮かび上がる。荘厳な山の朝を迎える。
土合までは長く、標高差もある。テントをたたみ蓬峠を出発。日の出の時間だが、日は朝日岳の裏側から出るので、ここに日がさすのはもう少し時間が経ってからだ。

笹の全く動かない無風状態だが、稜線が新潟側に突き出ると、そよとした風が冷たい空気を運んでくる。日本の太平洋側と日本海側を分ける、ここがまさに境目であると実感する。



笠ヶ岳(右手前)と谷川岳

七ツ小屋山への登りあたりで太陽が顔を出す。千島笹の道は足元が日陰になるものの、上半身はまともに直射日光を受ける。ギラギラした夏の日差しは、早朝から容赦ない。今日も暑くなることが予想された。
七ツ小屋山の山頂には人が何人かいたので、少し下のほうで風に当たって休む。大源太山の怪異な三角形は、斜光を受け生々しい姿を呈している。視線を遠くに置けば、苗場山の平頂も今日はよく見える。

雲海
蓬峠を後にする
七ツ小屋山
清水峠へ
縦横に道が伸びる
オヤマリンドウ

冬路ノ頭を経て清水峠に下っていくあたりは、蓬峠付近に比べるとガレやでこぼこが多い。地質的に脆いのか、あるいは登山道の手入れの程度の違いなのかもしれない。
同じ馬蹄形コースの登山道でも、谷川岳に近ければ近いほど整備が行き届いて歩きやすくなる気がする。

長い下りを経て清水峠に着く。朝日岳から巻機山へ続く稜線の眺めがいい。巻機山は特徴のないずんぐりした山容であり、ここから目立つのは柄沢山の端正な三角錐である。
その奥にも、平ヶ岳か至仏山か、越後・会越の山々も青空の下くっきりと見えている。

飲み水は、もうペットボトル1本分くらい消費してしまった。あと1リットルくらいしかない。少し下ったところに水場はあるのだが、昨日逆コースを歩いてきた人に、朝日岳山頂(朝日ノ原)の水場は出ているときいていたので、それを信じることにする。
さあいよいよその、朝日岳への登りである。清水峠からの標高差は500m近い。
少し下って居坪坂の下山道を見送り、登り返す。気分のよい笹原の稜線をしばらく行くと、いったん小広い湿地帯に着く。ここにはイワショウブがきれいに咲いていた。

その先から本格的な登りが始まる。直射日光を受けると大変な思いをするところだが、樹林帯であり、さらに今の時間帯はちょうど朝日岳が陰になってくれるので、暑さで体力消耗するということはない。
反対コースだと、朝のうちは武能岳から茂倉岳への登りが背中炙りの道となり、かなりきつそうだ。少し日が高くなってからのほうがいいかもしれない。反面、今のこの朝日岳への登りは、早い時間帯であれば直射日光を避けられそうだ。

暑くはないが長い長い登りだ。トレイルランばりに駆け下りてくる人とすれ違う。朝暗いうちから土合を出発したのだろう。
やがて樹林が切れて低い笹や潅木しかなくなってきた。ハイマツも現れる。明るくなるのはいいがギラギラした日差し付きだ。朝日岳の山頂部は見えているようだが、なかなか着かない。とりあえずは朝日岳頂上の手前にある、巻機山からの尾根道の合流点「ジャンクションピーク」に着くことが目標だ。
新潟側の斜面をトラバースする部分では、ガレたところも出てくるので足運びに慎重を期す。

清水峠から2時間近くかかって、そのジャンクションピークに到達した。
巻機山からヤブ道を縦走してきたグループがいた。いつかは自分も挑戦してみたい道だが、指導標に書かれるとおり「難路、道ナシ」なのだろう。残雪期にピッケル装備で歩く技術が身につけば、何とかいけるかもしれない。

山頂まではもうあと20分ほどだ。森林限界はすでに超え、真夏のように太陽パワー全開だ。
途中の朝日ノ原の水場に寄っていく。前回は土が混ざってしまったが、今日はきれいな水が取れた。3リットル補給するが、酷暑の今日はこれでも足りないくらいかもしれない。

祠のある朝日岳に到着する。谷川岳から茂倉、蓬峠を正面に、越後の山、尾瀬、群馬県中部の山々などぐるりと展望が広がる。ガスで何も見えなかった前回の借りを返せた。
ホソバヒナウスユキソウの葉があちこちについており、チングルマの綿毛もすっかり黒ずんで、最後の姿を見せている。
朝日岳はどこの登山口からも時間がかかり、なかなか登れない山だが、谷川連峰の一角をしっかりと担う、大きないい山である。

イワショウブ
朝日岳を目指す
少しだけ秋色が
谷川連峰と正対
朝日岳頂上
白毛門

宝川温泉に下る登山者のほか、朝早くに土合を出て日帰り往復する人もいた。馬蹄形縦走を日帰りでやる人もいるくらいだから、そういう人もいて不思議ではない。けれど往復だと、白毛門からの下りが大変だろう。自分もこれからの下山コースとなる。
長い歩きの後の白毛門からの下山は、西黒尾根よりきついと思われる。

朝日岳から白毛門までの間も、大烏帽子岳などいくつかの顕著なコブを超えていくのでなかなか骨が折れる。ましてやこの暑さなので、スタミナの消耗も激しそうだ。
時たま、頭上に雲の塊がやって来て、そのたびに稜線が日陰になり、ひんやりした空気に包まれる。でもそれも長続きはせずに、すぐに日差しギラギラが復活。それでも笠ヶ岳までは快調な足運びだった。
笠ヶ岳の山頂に立つと、谷川岳が真正面ですごい眺めである。岩壁のしわ1本1本がよく見える。

笹とガレの斜面を大きく下って、白毛門への緩やかな登り返し。ジリジリと照りつける日射。日陰が恋しい。
少し標高が下がったせいか、日差しを遮られる樹林や、笹の背の高いところも現れてくる。そういう場所に来るたびに、ザックを下ろして小休止。水も大量に飲んでしまう。
ゆっくり、ゆっくりと登って東西に細長い白毛門に着く。山頂を覆うように大きな雲が出てきた。谷川岳にも雲がかかりはじめている。今回初めてといっていい、涼しい山頂で休憩する。

もうあとは下りのみ。土合駅の上越線は15時31分発なので、3時間もみておけば大丈夫だろうと思い、12時半に腰を上げる。
しかしこの白毛門の下りは、何度も書いたように難路である。下り始めの急なガレ場で神経を使ったせいか、松ノ木沢ノ頭に着いたころは疲労感がぶり返していた。
その上、下山路は頭上の雲からはみ出ているので、日照りの焦げ付く尾根が復活している。岩場で岩肌や鎖を触ってみたらすごく熱い。

松ノ木沢ノ頭からも落ちるような急坂が続く。下る足にブレーキが利きにくくなっているので、一歩一歩慎重に行かねばならない。
ヒノキのウロの休憩地までが長く、その間で何度も体を休めることになる。もうずいぶん時間が経っている気がするが、ブナ林は現れない。標高1200mのプレートが今頃現れてがっくりする。まだ松ノ木沢ノ頭から200mあまりしか下げていない。

水の残りも500mlを切った。木の間から湯檜曽川やロープウェイ駅の駐車場が見え、さらに左下からは滝遊びに昂じている人々の声が聞こえてきたが、まだかなり下のようだ。

シャクナゲの木が現れて、もうそろそろだろう、と思ったら900mプレートでまた愕然、まだ標高差250mも残している。
たまらずにその場に腰を下ろし、水をほとんど飲みきってしまう。後ろから二人下ってきたが、同じように疲れきった様子。先に行ってもらう。

しかしそこからは意外と短く、待望のブナ林が見えてきた。ブナを見るとこの尾根も終わりに近い。左手に尾根を外れ、ガレた急坂を下る。短い林道歩きを経てようやく、白毛門登山口の赤い橋に下り立つ。

足の裏が焼けつくようだったので、靴と靴下を脱いで沢の水に浸した。ホッとした。あと30分よけいに歩いていたら、本当に行き倒れになったかもしれない。
暑さによる体力消耗もあったが、今年は夏の前に体を鍛えることをさぼっていたため、スタミナが持続しないのだろう。前週の富士山でも、下山後思った以上にダメージが残っていた。このスタミナ不足状態は、今後の山行もしばらく続きそうだ。

上越線の発車まであと20分弱。土合駅まで小走りで行けば間に合わないこともない。しかしもう歩くのもつらいので、土合橋からのバスで水上駅に戻ることにした。
バス停でTシャツを着替えると、すぐバスがやってきた。冷房の効いた車内はまさに別天地だった。