山の写真集 > 谷川岳・越後・信越 > 谷川岳から茂倉岳
-残暑と展望の国境稜線越え-
タイトル
天神平-谷川岳-一ノ倉岳-茂倉岳-土樽駅
山域谷川連峰
地域群馬県・新潟県
標高トマの耳(1963m)、オキの耳(1977m)、一ノ倉岳(1974m)、茂倉岳(1978m)
山行日2011年9月10日(土)天気1
沿面距離13.8km
歩行時間6時間25分
標高差659m(天神平~茂倉岳)
宿泊-
温泉谷川温泉「湯テルメ谷川」
交通マイカー、ロープウェイ、上越線Home


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2011年9月10日(土)

練馬IC4:05
 関越自動車道
水上IC5:45
 国道291号
6:10土合橋駐車場6:15
6:30土合口駅7:15
 ロープウェイ
7:30天神平
8:05熊沢穴避難小屋
8:35天狗の留まり場
9:15谷川岳(トマの耳)
9:30オキの耳9:50
10:35一ノ倉岳
10:55茂倉岳11:25
12:30矢場ノ頭12:45
14:20登山口
14:53土樽駅15:21
 上越線
 土合駅15:35
15:45土合橋駐車場15:50
 国道291号
谷川温泉立寄り
17:10水上IC
 関越自動車道
外環道、首都高
19:30目黒IC


関連リンク
[記録] 谷川岳から茂倉岳・夏(肩の小屋泊)
谷川岳ロープウェイ
谷川温泉 湯テルメ谷川


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9月に入り涼しい日が続いていたが、ここ数日また暑さがぶり返してきた。秋の高い空の下での登山はまだ先になりそうだ。今年初めての谷川連峰に登る。
一昨年、一泊で土樽に下るコースを取ったが、今回は朝一番のロープウェイを利用し、同じコースを1日で歩き通す。群馬と新潟の国境稜線を越える、谷川岳登山の伝統的なコースである。

早朝からのため車を使う(電車バスでは時間的に厳しい)。土合橋の駐車場から出発して、土樽駅から電車で土合に引き返して車を回収する。谷川連峰を車利用で、かつ往復登山を避けたいときは、この方法がよくとられるようだ。問題は土樽駅からの上越線が、午後は15時台、18時台の2本しかないことだ。うまく15時までに下山できるようにしたい。


オキの耳から主脈稜線を眺める


天神平から
天神尾根を登る
岩尾根を越える
雲海
トマの耳
色づきはじめ
絶壁を見下ろす
一ノ倉岳

朝3時半ごろ家を出る。一般道、高速とも渋滞が全くない。6時過ぎに土合橋の駐車場に到着する。すでに多くの車がある。沢登りの人を中心に登山者も多い。この駐車場では、ずっと昔から見られてきた光景なのだろう。

ロープウェイが動くのは7時で、少し早いのだが出発する。ロープウェイ土合口駅の切符売り場にはすでに10名ほどの待ち客がいた。7時になると、係員の人が出てきて、ロープウェイは保安回路が働いて発車が少し遅れるかもしれないとのこと。
10分ほど遅れて動き出したが、乗っている途中でも一時停止したりして、天神平には7時半の到着となった。でもこれくらいの遅れなら今日の行程には問題ない。

登山道から垣間見える谷川岳の2つのピークには、雲がかかっていた。まだ今年の夏の不安定な空模様を引きずっているようだ。
天神尾根の平坦な部分を歩いていく。熊沢穴の避難小屋には30分と少しで着いた。朝早く人が少ない分、歩行スピードもいつもに比べて速いようだ。ここからは樹林を抜けて日照りの尾根となる。今までのペースで行くとバテてしまうのは、これまでここを何度も歩いた経験上わかっている。一歩一歩踏みしめるように、鎖のかかった岩場を登っていく。

急な登りでは、歩幅を自分の足裏のサイズくらいにするのがバテを防ぐコツだと、登山初心者のときに本で読んだ。要するに25センチくらいで歩くのである。
そんなに小さい歩幅でじれったいと、読んだ当時には感じたものだったが、実際やってみるとなかなか理にかなっている。

最初の展望地で一休み、次の天狗の留まり場まで登ると、オジカ沢ノ頭を始めとした主脈縦走路が大きく見えるようになる。
稜線はしっかりと雲を被っている。しかし、ずっと眺めているうち、主脈稜線から谷川岳ピークに連なるその厚い雲も、だんだんと薄くなってきているのがわかった。
一方、群馬県側の山々、すなわち赤城や榛名、沼田付近の小峰群は快晴のもと、よく見える。

まだ人が少ないので快調に登る。しかしやはり暑い。広大な笹原を見ながら土砂流出防止の木の枠を踏み、高度を上げる。山頂付近に標識が近づいてきた。
肩の小屋に到着。天神平から1時間40分で着いてしまった。記録更新である。この登山道は、人の多さ少なさが所要時間を大きく左右する。

山頂や主脈稜線の雲はほとんど取れた。そして、新潟側は一面の雲海になっていた。一ノ倉岳や茂倉岳、対面の朝日岳もそろそろ秋色に装いを変えつつある。
頭上に大きな雲の塊も出来つつあるが、この暑い日にこれだけの眺めが得られれば十分である。
トマの耳を経由して、オキの耳で休憩する。東側の足元には、ゾクゾクッとするくらいの急峻な斜面が落ち込んでいる。下のほうには雪渓が消えずに残っている。そのさらに下に、湯檜曽川が白く光っていた。

目の前にそびえる一ノ倉岳を目指す。花はほとんど終わっているが、時たま咲き残りを見かける。シモツケソウ、トリカブト、ミヤマウツボグサなどだ。

富士浅間神社と書かれた奥の院の鳥居をくぐる。絶壁の縁を歩いたり、鎖で岩をへつったり、変化のある楽しい道である。一ノ倉岳手前の最低鞍部まで下ると、ダケカンバなど樹林帯も少し復活する。

ハクサンイチゲ
茂倉岳
笹と潅木の稜線
ミヤマトリカブト
ウメバチソウ
木の根が張り出す
土合駅

急登しばしで一ノ倉岳頂上。ガスが出始めたがまだ青空が大きい。そして暑い。でも今年の夏山の暑さには、平ヶ岳や高妻山とずいぶん苦しめられてきたので、対策について少しは学習した。しゃにむに同じペースで歩かずギアチェンジすること。塩を適度に摂ること。水場では濡れタオルをこしらえること、である。

一ノ倉岳から先は一転、広いなだらかな尾根となる。正面に見据える茂倉岳は時々ガスで見えなくなる。このあたりは花がまだ多く、ハクサンイチゲの咲き返りも見られた。
本日の最高点、茂倉岳頂上は日照りの地だった。予備の上着をほっかむりするようにして日射をしのぐ。今日は他にフリースや防寒具を兼ねた雨具も持ってきたが、全くの無用の長物と化した。
ここからの一ノ倉岳。谷川岳の姿は、いつまで見ていても飽きない。オジカ沢ノ頭、万太郎山への主脈稜線もきれいに見える。
新潟側から上がってきた登山者が数人。登り出しは雲厚く、ここ山頂にきていい天気にめぐり合えたようだ。自分がさっきまで見ていた雲海を、抜けてきたのだろう。

茂倉新道を下る。上越線の発車する時間には、余裕で間に合いそうである。
眺めのいい稜線には、ウメバチソウやトリカブトなど花がまだまだ多い。一方ミネカエデやナナカマドなどの低潅木には、早くも色づき始めたものもある。夏と秋が同居している。

避難小屋で冷たい水を補給し、高度を落としていくうち、ガスが濃くなってきた。この時間まで展望を楽しめたのは運がよかった。

矢場ノ頭からは樹林帯に突入する。ヤセ尾根の細い道幅を檜が占領していて、歩きにくい。ちょっとバランスを崩し、足がつりそうになるところを必死にこらえる。でもこの重厚な登山道はけっこう気に入っている。
やがてブナやミズナラと檜の混合林になる。蝉の鳴き声が聞こえ始める。
ギャップの多い急坂をどんどん下る。関越自動車道の車の音が早くに聞こえてくるが、鬱蒼とした樹林帯からは見通すことが出来ず、どこまで下ってきているのかが全くわからない。まだかまだかと気をもみながら、ようやくブナの二次林に下りてくる。ここまで来ればあと一息。

矢場ノ頭から2時間近く、駐車場と、指導標の立つ登山口に下り立った。草むらはススキの原になっていて、季節が進んだことを感じる。
車道を歩き土樽駅に到着。最後はかなり足にきた。電車が来るまでの30分、駅のホームにペタンと座って休憩する。同じ様な人が何人もいた。これも谷川岳の昔からの点景なのかもしれない。
土樽駅は今や、登山者ばかりが利用する無人駅になってはいるが、以前は新潟県側のトンネル入口の駅として、また信号所としての重要な役割を担っていたらしい。川端康成著「雪国」にもこの駅でのささいな出来事が印象的に著述されている。

清水トンネルをくぐって、次の土合駅で下車。土樽駅に座っていた人のほとんどが自分と同じ、「ひと駅利用客」だった。
電車賃は230円。駅構内に係員が2人で臨時改札をしていた。

駅から10分ほど歩き、車を停めていた土合橋駐車場に到着する。登山者だけでなく、ラフティングなやカヌーなどのツアー客もたくさんいた。下界では、夏はまだまだ続くようだ。
谷川温泉「湯テルメ谷川」に寄ってから帰京する。