−灼熱の森林限界上の岩尾根−
タイトル
西黒尾根-トマの耳-天神尾根-田尻尾根
山域谷川連峰
地域群馬県
標高トマの耳(1963m)
山行日2010年8月7日(土) 前夜発 天気
沿面距離11.0km
歩行時間5時間55分
標高差1285m(土合橋〜トマの耳)
宿泊-
温泉谷川温泉「湯テルメ谷川」
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2010年8月7日(土) 前夜発

練馬IC22:30
関越自動車道
上里SA泊

水上IC5:55
国道291号
6:20土合橋駐車場6:30
6:50ロープウェイ土合口駅
7:00西黒尾根登山口
8:50ラクダのコル9:00
10:10トマの耳10:40
10:50肩の小屋11:10
12:00熊沢穴
12:25田尻尾根入口
13:05林道
13:40土合橋駐車場14:00
国道291号
谷川温泉 湯テルメ谷川(立ち寄り)

16:30水上IC
関越自動車道
18:00藤岡IC
一般道
高速混雑の為

19:25花園IC
関越自動車道
20:30練馬IC


関連リンク
[記録] 西黒尾根から谷川岳(秋)
[記録] 巌剛新道から谷川岳
谷川温泉 湯テルメ谷川


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北アルプス縦走のあと2日間は完全オフで、のんびり出来たせいか、週末にはまた登山しようという気になった。
谷川岳は、土合橋付近に無料の駐車場があり、ここに車を停めれば行動範囲はけっこう広がる。馬蹄形の山稜を一周してくることもできるし、ロープウェイを利用して谷川岳登頂後、西黒尾根下山もいい。また、反対側の土樽に下って上越線で土合に帰ってくるのも面白そうだ。

今日はじっくりと西黒尾根を登りたいので、土樽への下山は時間がかかり過ぎて無理かもしれない。あまり欲張らず、天神平への周回コースをメインに考えた。
また、前回の北アルプスからの帰宅の際、登山靴のソールが剥がれてしまったので、今日は新しく買った登山靴を試す日でもある。


西黒尾根の登り

土合橋の駐車場からは、武能岳と思われる尖峰が空に聳えていた。ここは白毛門の登山口でもある。今日はいったん車道に戻り、ロープウェイ土合口駅への車道を登っていく。スノーシェッドの先に遭難碑が建てられており、ここにも何台か駐車できる。

ロープウェイ駅に入ってみると、すでに人の列ができていた。運行は7時からということで、少し待てば乗れる。 ちょっと心が動いたが、予定は変えない。駅を出て西黒尾根登山口に向かう。

登山指導センター
登山口から急登
下部は樹林帯
鎖でよじ登る
頂稜部は岩場多い
シモツケソウ
ハクサンシャジン

緑濃い樹林帯の中、のっけからの急登が始まる。この尾根は数年前の10月、同じく登りにとったが、このときは山頂部に薄く雪が積もっていた。登路の過程は比較的快適だった記憶があるが、今日は朝7時とはいえ、すでにうだるような暑さ。東北地方から北関東にかけて高温になっているようだ。
最初からぐいぐいと、ブナ林の急登。少し先で水の流れがあったが通り過ぎてしまう。冷やしタオルをこしらえておく唯一の機会を逃した。

送電鉄塔の場所に出ると、カーッと太陽が照りつける。ヨツバヒヨドリが群落を作っていた。
再び鬱蒼とした樹林帯を行く。汗がタラタラ滴り落ちてくる。緩急繰り返していくうち、尾根に乗ったようなところでようやくなだらかになる。
前方に谷川連峰の稜線が見えてくるが、上のほうは雲で覆われているようだ。それにしても暑いので、日陰を見つけて一息入れる。右手のマチガ沢方面から、水の流れ落ちる音が聞こえてくる。

樹林を脱すると一気に眺めが開け、ロープウェイ駅のある天神平方面がよく見えるようになった。
岩尾根はシモツケソウ、ハクサンシャジン、ツリガネニンジンがよく咲いている。風が通るが、それよりも日差しが厳しく、風による涼しさを相殺している。
上部には西黒尾根の1ピーク、ガレ沢ノ頭が高い。その先に雲に隠され気味の谷川岳。最初に小さな岩のピークを越え、やや下って巌剛新道との合流点に来る、ラクダのコルである。日差しが避けられる場所で休憩する。

とにかく暑い。いくら8月でも、西黒尾根はもう少ししのぎやすいと思っていた。
花は色鮮やかで癒されるが、厳しい岩稜が連続し、垂直に近い鎖場を超えていく。そのたびに汗がポタポタ、首にかけたカメラに落ちる。水の消費も尋常でない。シャツどころか、ズボンまでもが腰辺りまで汗でズブ濡れ状態だ。
オオバギボウシ、アズマギクなど花の競演の中、暑さでフラフラになりながらも登っていくしかない。

目指す山頂が雲に覆われているのを見るのは面白くないが、今日だけは、早くあの雲の下に入りたいと思う。
砂利道を斜上し、大きな一枚岩を登ってザンゲ岩、ようやく天神尾根との合流点を示す標識が見えてきた。ロープウェイ方面からの登山者が列をなして登ってきている。その中に混ざり、最後のひと登りで谷川岳トマの耳に登り着いた。

それにしても人が大勢。雲の下の山頂は、一転して寒いくらい。どこを向いても白で、まったく展望はない。
前週の槍ヶ岳に引き続き残念な眺めとなってしまった。しかし今日は、とことん消耗した体力をこの涼しい場所でなんとか回復しなければならない。
一ノ倉、茂倉岳を越えて土樽のコースは問題外で、天神尾根を下るだけでもいっぱいいっぱいになりそうだ。

笹が光る
タカネコンギク
切り立った稜線
ニッコウキスゲ
天神尾根を下る
ロープウェイの下

体が冷えてきたので、山頂を辞して肩の小屋まで下りる。登山者が引きも切らず登ってくる。たしかに夏にかけて人気の山になるが、ちょっと今年は人が多過ぎる。
前週の槍ヶ岳のときもそう思った。登山人口はこの1,2年で確実に増えている。

水の残りがペットボトルの半分を切ってしまったので、小屋で買う。主脈稜線がガスの中から現れないかと、小屋の前で粘っていたが、明るくなることはあっても、優美な笹原の曲線は姿を現すことはなかった。

天神尾根を下る。若い人、それも男性が特に多い。黒のサポートタイツと黒の短パン、それに胸の高さくらいまで伸ばしたダブルストックというスタイルは、槍ヶ岳でも多く見かけた。
夜行列車で行く谷川岳ブーム、一ノ倉沢岸壁で多数の若い命が散った時代から半世紀ぶり、姿かたちは違えど、この山稜も若者を再び迎え入れることになったようだ。

天神尾根も日がかげる時間が多くなり、炎天下の歩きは避けることができた。しかし登りでの疲れがまだ残っており、いつもと比べて足元に不安がある。
それに今日は登山靴を新調したのだが、ちょっときつい登山をしすぎたか。

熊沢穴避難小屋を過ぎ、樹林帯を歩く頃には体力も回復してきた。
道の真ん中に長さ15センチ、太さ3センチはある軟体動物の死骸を発見。茶色くて黒い筋が入っているからヤマビルであろう。
天神尾根にいるとの話は聞いたことがない。おそらく他の登山道から、登山者が引き連れてきたのではないかと思う。それにしてもあまりの巨大な姿に恐ろしくなった。

ロープウェイ代がもったいなく、今回も田尻尾根を下ることにした。熊が恐いので鳴り物をザックに取り付ける。
一部滑りやすい場所はあるものの、分岐から1時間ほどでロープウェイの下に延びる林道に下り立つ。沢と出合う場所でようやく濡れタオルを作り、首に巻く。
途中、谷川温泉から天神山に登ってきたという2人連れに出会う。ヒルがいっぱいいたようだ。谷川連峰の南側斜面はどこも、ヒルの棲家のようである。

ロープウェイ駅を右に見て車道を下り、土合橋の駐車場に戻る。ラフティングの団体がいた。水上町は、山だけでなくラフティングやキャニオリングなどの水上アウトドアも盛んである。町の名前を地でいっている。

谷川温泉「湯テルメ谷川」に立ち寄った。小さいが自然に抱かれたいい温泉だった。帰り際、谷川ラーメンを食べてから高速に乗る。