山の写真集 > 谷川岳・越後・信越 > 守門岳
  • -入塩川からの長い登路-
  • 入塩川-雨晴-中津又岳-守門大岳
  • 越後
  • 新潟県
  • 中津又岳(1388m), 守門大岳(1432m)
  • 2019年7月7日(日)
  • 15.7km
  • 6時間40分
  • 1058m(入塩川登山口-守門大岳)
  • (前夜車中泊)
  • 守門温泉 白石荘
  • マイカー
天気1

 

2019年7月7日(日) 前日発
練馬IC 19:00
  関越自動車道
長岡IC 21:50
  国道8,351号,県道317号
道の駅とちお 泊
4:45 入塩川登山口 4:55
5:05   山の神
6:10   653m三角点 6:17
6:33   〆掛小屋
7:20   雨晴清水 7:33
7:49   吉ヶ平分岐
7:51   雨晴
8:37 中津又岳 8:42
9:00 守門大岳 9:35
9:50 中津又岳 10:00
10:30   雨晴
10:32   吉ヶ平分岐
10:47   雨晴清水 10:57
11:33   〆掛小屋
11:48   653m三角点 11:58
13:05 入塩川登山口
  県道317号, 国道290号
守門温泉立寄り
小出IC 15:40
  関越自動車道
練馬IC 19:00

 

梅雨の最盛期で、この週末の関東地方の山はどこも雨のようだ。新潟まで行けば雨雲から逃れられそう。当初苗場山の赤湯温泉で一泊も考えたが、関東地方に近い場所はあまり天気がよくなさそうだ。新潟でももっと海に近いほうに行きたい。
この時期に見たいのはやはりヒメサユリだ。しかし、浅草岳も守門岳も一昨年、昨年と連続して登っている。さすがに今年はと思ったが他に適当な山が思い浮かばない。
守門岳の入塩川ルートはまだ歩いたことがない。ここを歩くのなら3年連続で守門に登る理由がつく。まあ別に理由をつけることもないのだが。

日本ブナ百名山・守門岳


中津又岳から、守門大岳(手前)と守門岳主稜線を望む [拡大]

入塩川登山口。登山届ポストのある奥の駐車場まで入った

入塩川登山口

始めのうちは、沢を何度も渡渉する

何度も渡渉

三角点からは尾根道となる

尾根に出る

〆掛小屋は今にも倒れそうだった

よく建っている

深いブナ林が続く

ブナ林

急なところのない、歩きやすい登山道が続く

道はよい

雨晴で樹林帯を脱し、開けた稜線を進む

展望の稜線へ

ヒメサユリが咲く

初夏の希品

中津又岳から、霧雨に煙る守門岳を望む

霧に煙る

中津又岳~守門大岳間の稜線はヒメサユリがよく咲いていた

今が花期

アカモノ

アカモノ

守門大岳山頂

大岳山頂

守門大岳にある石碑。守門岳は野鳥の多い山で知られており、巣守(スゴモリ)が転化してスモンとなったとの説もある。麓には守門岳をご神体として祭る巣守神社がいくつもある

巣守=守門

大岳から、守門岳主稜が大きく眺められる

天気は回復

ヒメサユリ(大岳付近)

ヒメサユリ


入塩川登山口は守門岳の北側にあり、東京からはぐるっと回り込むため時間がかかる。前夜発として関越・長岡ICから国道を走り、現地の道の駅で車中泊する。夜空は星がたくさん出ていた。
翌朝4時15分に出発する。昨日来た時は真っ暗でわからなかったが、道の駅は広々としていた。周囲は目論見どおり、青空である。
入塩川集落の田畑地をぬい、カーナビに登録のない林道に入る。最後の100mだけ未舗装の砂利道となり、川沿いの入塩川登山口の駐車場には道の駅から30分くらいで着いた。当然ながら一番乗りである。駐車場からさらに少し進むと入山届けポストがあり、車はここまで入れる。1本のサワグルミが実をつけていた。

入塩川ルートは例年、5月下旬の守門岳の山開きで歩かれている。その時期はまだ残雪も多いだろう。数ある守門の登山コースの中から、一番マイナーで長い入塩川ルートを山開きに選ぶとは、地元の山ヤさんの心意気がわかる。
なお、今年5月に登った番屋山の登山口、吉ヶ平(よしがひら)からも守門の登山コースがつけられており、この入塩川ルートの上部で合流するようになっている。

登山口に入るとすぐに堰堤脇の沢を渡る。このコースは最初、何度も渡渉がある。飛び石伝いに渡るのがほとんどで、水量は少ないので難しいことはない。ただ、ナメの縁を通過するところは増水しているとなかなか大変そうである。
渡渉する回数を数えていたが、10回を超えるとわからなくなってしまった。
「滝上」と書かれたプレートを見ると、だんだん沢から離れて登り勾配になっていく。ガクアジサイの青やシモツケソウの明るいピンク色が、緑深い登山道にひときわ鮮やかだ。
草深い道をひと登りし、三角点に到達する。周りをブナ林に囲まれており、木の間からこの先の尾根筋が見通せた。

頭上はゴー、ゴーと風が舞っている。天気予報は晴れだが、てんくらではレベルC(雨風が強く登山不適)となっていた。守門岳山頂付近は東南東の風15m/hと予想している。
ただ越後駒ヶ岳や苗場山など、標高2000m台の山頂の予報を見ると、風は穏やかでレベルもA(登山に適している)である。今日は標高の低いところのほうが風が強いという予報だ。守門以外にも浅草岳など標高1500m前後の山はみな強風予想でレベルCになっていた。
今の季節なら、風が強くても気温が高めで雨に降られなければそれほど問題ないと思うし、もともとこのてんくらの風速予報は、気圧と標高から機械的に計算されたもので現地では当たっていないことが多い印象がある。しかし今日はどうやら、予報通りとなっている。

三角点からは、尾根道を進む。ブナに囲まれたほぼ平坦な、歩きやすいコースである。下草もない。
〆掛小屋という、今にも倒壊しそうな避難小屋があった。このへんは杉の目立つ造林地となっている。斜度のほとんどない登山道を進むうち、深いブナ林の中となった。入塩川ルートは守門岳まで全長8㎞もあり、守門の一般登山道の中ではおそらく最長だろう。そのぶん傾斜が緩く、じっくり歩くにはもってこいである。
守門岳は遠くから見ると優美でおおらかな曲線を持つ山容が印象的で、標高の割には大きさを感じる山である。特に冬の真っ白な姿が人の目を釘付けにする。入塩川ルートはまさにその曲線部分をなぞるように敷かれた道なのだろう。
急登や岩っぽいやせ尾根の続く大白川ルートとは正反対で、同じ山の登山道とは思えない。

ブナの純林帯が続く。他に人は歩いておらず、鳥や蝉の声も聞こえてこない。風が木々を揺さぶる音が頭上を駆け巡っている。上空の風はさらに強くなったようだ。白く塗られた木のプレートの標識が時々見られるが、多くは引き裂かれて地面に落ちている。これはやっぱり熊の仕業だろうか。前回の奥利根水源の森以上に、今日は熊に遭遇する可能性が高そうだ。
雨晴清水という水場につく。少し奥に入ったところに沢があり、水は細いが出ていた。小広くて気持ちのいい場所だ。ブナを見上げながら少し休憩する。

ゴゼンタチバナ(大岳~中津又岳間)

ゴゼンタチバナ

ミヤマナラ(大岳~中津又岳間)

ミヤマナラ

ウラジロヨウラク(大岳~中津又岳間)

ウラジロヨウラク

中津又岳から望む守門大岳は優美な山容

優美な山容

北方向には、弥彦山の後ろに金北山を中心とした大佐渡山脈が壁のように見えた。中津又岳から

佐渡の稜線

中津又岳から、粟ヶ岳(右)を望む。右端手前に番屋山も見える

粟ヶ岳、番屋山

ハナニガナかクモマニガナと思われる。花弁が10枚以下なのでハナニガナか。
クモマは11枚とされているが、近くに11枚のものもあった。
葉が茎を包むようにしているのでタカネニガナではなさそう

ハナニガナ?

ギンリョウソウ

ギンリョウソウ

ブナ林の静かな登山道

ブナの森へ

登山道に立つ案内板

案内板

ガクアジサイ(三角点~登山口間)

ガクアジサイ

三角点~登山口間は草深い道だが、このくらいなら歩行は十分可能

草深い

入塩川集落の様子

入塩川地区


相変わらずの緩々の道で、高度が稼げない。標高1000mを超えるのもまだかなり先だ。体力的には楽とはいえ、すこしじれったくもある。足元にはギンリョウソウやハナニガナ(クモマニガナ?)が見られるが花は少ない。

気持ち傾斜がついた坂を登っていくと、だんだんと木の丈が低くなり頭上が開けるようになってきた。やがて吉ヶ平からの道が合流し、そのすぐ先で前方が一気に開け、雨晴という地点に着いた。風がうなりを上げ、前方に見える守門岳と思われる山稜には雲がたなびいている。どうやら雨が落ちている様子。そうこうしているうち自分のいる場所にも低い雲が流れてきて、パラパラと雨が降ってきた。

雨晴という名前は、ここまでは晴れていてもこの先は雨となるという天気が変わるところ、すなわち下界と山との境目にあたる場所であることを表すらしい。これで「あばらせ」と読み、今歩いている尾根も通称「雨晴尾根」である。
一方、吉ヶ平からの登山道の途中に網張(あみはり)山というピークがある。雨晴を「あめはれ」と読むのだったら、この網張山も雨晴が転化してついた名前なのかと思うが、どうやら関係はなさそうだ。
岩手県にある網張温泉は、無断で人が入れないように実際に網を張っていたのが名前の元らしい。この網張山も、昔は動物や鳥か何かを捕まえるための網を張った山なのだろう。
いずれにしても、ここ雨晴でたしかに山の様子も天候も一変した。今日は雨を避けるために晴れ予報の新潟まで来たので、意外だった。

灌木化して見通しのよくなった尾根を登っていく。頭のすぐ上に雲が流れてくると、決まって雨が落ちてくる。自分と雨雲との距離が異常に近く、数秒先に雨が落ちてくるかどうかがわかる。
ゴゼンタチバナやアカモノといった高山植物が見られるようになる。ウラジロヨウラクもきれいな釣鐘状の花をつけているが、風に揺れて写真が撮れない。
ないかな、ないかなと探していたら、片側が崖になったところでやっとヒメサユリを目にした。その後も少ないながら点々と咲いている。小さなコブを超えた次の丸っこいピークが中津又岳。山頂直下は今日初めての急登となった。

中津又岳山頂からは、守門大岳とその後ろの守門岳主稜が、もう目と鼻の先だ。雨が強くなり、雨具の上を着込む。
ヒメサユリも見られたし、ここで下ってもいいかな、と思っているうちに雨、風とも弱まった。やはり先を行く。中津又岳から下ったすぐのところに、ヒメサユリが咲き続いていた。引き返さなくてよかった。
開けた緩い稜線を15分ほど歩き、守門大岳へ到着。今日初めて登山者を見る。登山口から4時間、長かったが疲れの少ない登路だった。

守門岳主稜を見渡せる場所まで行ってみたが、強風によろけそうになった。しかしガスで視界が閉ざされることはなく、越後三山もくっきり、眺めはよい。ヒメサユリのつぼみがたくさんあるので、数日後、このあたりは見ごろになるだろう。
主稜方面から登山者が次々とやってくる。多くは主稜を縦走してきた人だったが、大岳を出発したものの風が強く、縦走をあきらめて引き返してきたグループもいくつかあった。自分も今日は大岳をゴールとして、下山することに決める。
腰を下ろして休憩しているうち、鉛色一色だった空があちこちで青いものが見え始めてくる。やがて周囲の山稜は青空に包まれた。風が強いことも、晴れることも今日は天気予報通りとなった。

来た道を下山する。太陽が出てきたので、ヒメサユリなどの花もひと通り撮影し直す。風が少しだけ弱まり、ウラジロヨウラクも何とかカメラに収められた。
中津又岳からは北側の展望。粟ヶ岳がよく見える。そして春に登った番屋山が意外なほど低い。
新潟平野の先、弥彦山や角田山がはっきり見え、その後ろに壁のような山脈が連なっている。金北山など佐渡の稜線だ。このように高く幅広く、大きく見えるとは知らなかった。
霧雨が空気のチリを洗い取ったのだろうか、守門岳は今回で6回目となるが、こんなに遠くまではっきり見られるのは初めてだ。
一人、入塩川ルートを登ってきた。今日、行動中に出会ったのは結局この人だけだった。

雨晴で展望の稜線にも別れを告げ、ブナ林の緩斜面へ。途端に静かな山に戻る。緑濃いブナ林は、新緑時のようにひんぱんに足を止めて観察することもそれほど多くないため、ほぼコースタイム通り、あるいは少し早めに歩ける。三角点で最後の休憩をとる。まだ風は止んでいない。
最後は10回以上の渡渉が待っている。しかし、日が高くなって足元が明るくなったせいもあろう、行きの時よりずっとスムーズに渡ることができた。

後ろから1人、駆け足で抜いていった。さっき中津又岳からの下りですれ違った登りの人だ。そんな人に下山の最中に抜かれるとは、自分の歩行スピードはこの人の2分の1くらいかもしれない。いつになく調子よく下山できていると思ったのに、ショックである。
堰堤横の沢を渡って、登山口の駐車場に戻った。車は当然自分の1台のみ。もっと人気の出ていいコースだとは思うが、今のところは山開きの時以外は1年中、静かな道のようだ。

帰路は国道を南下して、小出インターから高速に乗る。時間は長岡インター経由とあまり変わらない。高速料金を考えれば、東京からなら小出インター経由のほうが有利だった。
関越トンネルを抜け関東地方に入ると、やはり雨が降っていた。梅雨明けは当分先のようである。

日本ブナ百名山・守門岳