~会越の峰々と日本海を俯瞰する~
タイトル
すもんだけ(1537m)

2004年6月13日~14日

貫木-二分-キビタキ小屋-
大岳-守門岳-大白川
マップ
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ようやく雪上から脱出し、平坦な道をどんどん進む。はっきりした踏み跡。ツバメオモトやショウジョウバカマ、さらにイワウチワまで咲いている花多き道だ。
しかし5分ほどで、これは大白川へ下る道ではないと気づく。西に伸びる藤平尾根というやつだ。やはり先ほどの残雪の下りで間違えたらしい。
ツバメオモト
ツバメオモト
オオバキスミレ
オオバキスミレ
オオバキスミレ特大
特大サイズ 980×651

すぐに引き返そうかと思ったが、この道は入広瀬に通じていて下山としてはそちらのほうが都合がいい。そのまま行くことにした。
しかししばらくして沢の源頭に下りてしまう。太い沢ではないのでエアリアには描かれていない。ここまで道ははっきりしており赤テープもついていたのだが、沢に入ってしまったことに意外感、そして不安感を感じ先に進めなくなってしまった。
そもそもこの道を前もって調べていなかったことがまずかった。(後日調べると、この沢筋をそのまま辿るのはやはり正解だったようである)

ここは戻ろう。1時間強の登り返しをする。三ノ芝に戻り改めて別のトレースを探す。赤テープを見つけ、急な残雪の斜面を転げるようにして下る。歩きやすい雪上の道にたどり着き、ようやく安心して歩を進める。

雪田越しに越後三山
雪田越しに越後三山を望む
残雪の斜面を抜ける
残雪の斜面を抜ける

しかし何か、様子がおかしい。これは道というより雪渓だ。スキーで通った跡のようなものがついているが、足跡はひとつもない。疑心暗鬼で先に進むと、ついに雪渓の崩壊箇所に行き当たってしまう。改めて、自分の今立っている場所が踏み抜きで非常に危険な場所と認識する。

冷や汗が流れ、再度三の芝まで登り返す。雪の急斜面の登りは手ごわく、力の限りキックステップで高度を稼ぐ。雪上をくまなく探したが下山路は見当たらない。
袋小路に入った。雪の上で、もう前にも後ろにも進めなくなってしまった。

依然として澄み切った青空、しかし時間が刻々と過ぎていく。時間的には余裕のある行程であったがそれにも限度がある。
周囲を見渡すが、月曜ということもあり登山者は見当たらない。12時を過ぎ、気ばかりあせる。携帯を取り出して確認するが圏外だった。

途方にくれていると、5人ほどの人が上部の雪田を歩くのが目に入った。助かった。
その人たちの行く方向に自分も進む。見失ったら大変。潅木のヤブに分け入り、必死でもがき這い出す。
地元の人たちのようであった。ようやく顔を合わせ、聞くとやはり大白川に下る予定とのこと。以後しばらくは、行動をともにさせてもらった。

先ほどの雪渓の入口付近に、尾根に上がる道がついていた。こんなわかりやすい入口が気づかなかったなんて信じられない。
登り返しをしたあとで気持ちに余裕がなかったから、目に入らなかったのかもしれない。さらにアイゼンなしでの雪上歩行で体力を奪われていたのも、道を見つけられなかった一因だろう。
大白川コースのブナ林
ブナ大木が目立つ大白川コース下部

昨年の神室山(秋田)でも残雪上の出口を探す場面が何度もあったのだが、あのときは登りだったので比較的道を見つけやすかったように思う。下りで道を間違え、雪渓や谷間に入り込んでしまうのは遭難の最も多いパターンだ。自分がそんなところに入ってしまったことに戦慄を覚える。

今回は運良く他の登山者に遭遇して事なきを得たが、初めての山を単独で、しかも平日に登ることのリスクを痛感した。この数年、残雪の山を無事に登れていたことが過信を生んだ、アイゼンやストックを持っていかなかったことも山を甘く見ていた証拠だろう。今回のことを大いに反省材料とし、今後の計画に活かしたいものだ。

エデシ尾根に上がってからは雪もなくなり、道もはっきりした。ここで同行の登山者にはお礼を言い、以後の行動は別になる。あとは無事に大白川まで下ることだ。
しかしこのコースは岩場の急な下りが続き、疲労している身にはかなりの負担がかかる。下部のブナ林に入るまで終始眺めのいい道(特に途中の展望地やエデシからの守門岳の眺めは秀逸)なのだが、このときばかりはもう、展望はいいから早く下りたい気持ちでいっぱいだった。しかし滑落が恐いので時間を惜しまずゆっくり下った。

大原登山口にたどり着く。もう疲労は極限にまで達しているが、とにかく怪我も無く、「無事に下りれた」ことをいつも以上に強く実感する。ポケットに入っていたエアリアマップはもう、泥だらけでぼろぼろである。

大原スキー場を過ぎ、なおも車道を下って行く。今日は歩行5時間程度の予定だったのに、もう9時間くらい歩いている。大白川の民宿地に入ってしばらくすると村営バス停があった。運良くバスが来たのでもう歩きはやめ、入広瀬役場前までバスで行く。

入広瀬駅からは18時57分発の只見線で帰る。只見線は昼間に便がないので、仮に早い時間に山を下りて来ても、駅でずっと待つことになってしまう(温泉に入るなど時間をつぶすことになる)。そのため、こんな大変な山行であったにもかかわらず東京に戻ったのは予定より1時間遅かっただけだった。

守門岳は素晴らしい展望と闊達な縦走路、魅力いっぱいの山で個人的には浅草岳より好みである。しかし今回は、素晴らしさよりも残雪や道迷いの恐さを教えてくれた山として、強く印象に残ってしまった。


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