山の写真集 > 谷川岳・越後・信越 > 松ノ木沢ノ頭
  • -白き岩壁と対峙する-
  • 土合橋-ヒノキノウロ-松ノ木沢ノ頭
  • 谷川連峰
  • 群馬県
  • 松ノ木沢ノ頭(1484m)
  • 2011年11月27日(日)
  • 4.1km
  • 3時間50分
  • 740m
  • -
  • 谷川温泉 湯テルメ谷川
  • マイカー
天気1

 

地図
2011年11月27日(日)
練馬IC 5:05
  関越自動車道
水上IC 6:58
  国道139号
7:30 土合橋駐車場 7:50
8:00   登山口
8:57   ヒノキのウロ 9:10
10:10   松ノ木沢ノ頭 11:00
12:00   ヒノキのウロ 12:05
12:55   登山口
13:00 土合橋駐車場 13:10
  国道139号
谷川温泉立寄り
15:20 水上IC
  関越自動車道
17:50 練馬IC

 

倉見山に出かける直前、掲示板にtomoさんから谷川岳の書き込みがあった。11月4週目にして、上越国境は雪山になったようだ。
白くなった谷川岳東壁を見てみたい。それなら、湯檜曽川を挟んで真正面にそびえる白毛門の尾根に登るのがいいだろう。今ならまだ深雪でもなく、雪山の経験が浅くても登れるかもしれない。明日日曜日は日本海側の天気もよさそうなので、出かけることにした。
2日続けての山なので、白毛門まで登るのは体力的に厳しそうだ。途中の松ノ木沢ノ頭まで到達できれば目的の眺望は得ることが出来る。無理をしない行程で行く。


松ノ木沢ノ頭から白い上越国境を望む

装備をどうするか迷ったが、念のため雪山用一式を持っていく。冬用の登山靴、前爪アイゼン、ピッケル、ストック、サングラス、ジャンパーと冬用手袋をいくつか。11月にしてこういう格好で山に登るとは信じがたいが、上越の山ならそう珍しいことでもないようだ。

水上ICを下りたところで、真っ白に雪化粧した谷川岳の2つの耳が、くっきりと見えた。空も青い。土合橋付近には、道脇に雪の溶け残りがあった。白毛門登山口のある土合橋駐車場に着く。車は数台しか停まっていない。この駐車場は、夏の土日だと朝の6時ごろにはもう満杯近くなっているのだが、シーズンを終えるとこんなもんだ。カヌーやラフティングなど水遊びするグループもおらず、ひっそりしている。ロープウェイ方面も賑やかさはない。
あと何日もしないうちにスキー場がオープンする。この静けさはこの数日だけのことかもしれない。

関越道水上IC出口付近から谷川岳(右)を望む


水上ICから

白毛門登山口から、ブナ林を登る


最初から急登

ヒノキのウロ


ヒノキのウロ

ヒノキのウロから上は積雪10~30cmくらいの尾根道となる


雪の尾根道

奥秩父山塊の上に富士山が顔を出していた。右手前は高倉山


遠く富士山も

真っ白になった武能岳の鋭い三角錐が、青空に聳え立っている。鉄の橋で川を渡って、山に入っていく。登山口からさっそくブナ林の急な登り。雪がまだらに出てくる。尾根に上がると木の枝の向こうに、谷川岳がもう見えた。葉の落ちた見通しのいい時期に歩くのは初めてだった。それでも、息もつかせぬ急登はいつもと変わらない。雪と土のミックスの登山道がしばらく続く。時たま谷川岳や天神平方面が覗く。その見える角度が変わるたびに、自分が高度を上げていることがわかる。松ノ木沢ノ頭からの、遮るもののない展望を思い描きながら、果てることの無い登りの道を踏ん張る。

ヒノキのウロで一休み。いつ見てもすごい大木だ。道がやや平坦さを取り戻し、そこから先はある程度の積雪量となった。まだ時間が早いせいか、凍結気味の場所もある。道幅の広いところで、今シースン初めてのアイゼンを装着し、ストックもピッケルに持ち替える。滑落しそうな場所はあまりないのだが、今年も早めに慣れておこうと思った。

松ノ木沢ノ頭から、白くなった谷川岳(左)と一ノ倉岳


名峰が真正面

一ノ倉沢にも多量の雪が落ち込む


一ノ倉沢

松ノ木沢ノ頭から白毛門を見上げる


白毛門はまだ高い

松ノ木沢ノ頭


松ノ木沢ノ頭

蓬峠から、七ツ小屋にかけての国境稜線の白さが際立つ


国境稜線

天神平方面を望む。スキー場はまだオープンしていないので人影は見られない


天神平

再び直線状の急登。次第に右手が開けてきて、そろそろ松ノ木沢ノ頭や白毛門のてっぺんあたりも望めるようになってきた。山頂はやはり白い。ところどころ露岩が目立ちはじめ、足の置き場を慎重に選びながら一歩一歩進む。比較的長い鎖場を越えると、南側の眺めが得られた。天神平スキー場、吾妻耶山の先、ずっと遠くに見える三角形の山は富士山だ。
上のほうで人の声が聞こえてきた。20センチほどの雪を踏みつつ緩やかに登っていくと、松ノ木沢ノ頭に着く。

目の前にどーんと、白く染められつつある谷川岳東壁。すごい迫力である。薄雲が出て空は白っぽくなってしまったが、それも気にならないほどの素晴らしい眺めだ。マチガ沢・一ノ倉沢の大きくえぐられた谷場には、無数の白い筋が刻まれている。さらに茂倉岳から武能岳、蓬峠、七ツ小屋山へ続く稜線は真っ白だ。谷川連峰は太平洋側と日本海側の気候がぶつかる、日本の中に引かれた国境線である。あちらには違う世界が広がっている気がして、ロマンを感じる。南関東やアルプスの尾根には不思議とそういう感じがしない。

他にも赤城、武尊、日光、尾瀬の山々もよく見えるが、白いのは尾瀬だけだ。先月登った尾瀬笠ヶ岳も白い。一方、白毛門のほうは頂上に人が立っているのが見える。体力と技術があれば、このまま登っていきたいものだが、やはり今日はここ松ノ木沢ノ頭を最高点にしよう。ピークに居合わせた5名の登山者を含め、けっこう多くの人とすれ違ったがみな白毛門を目指す。後から聞いたらtomoさんもこの日、白毛門に登っていたそうだ。

展望を楽しんではや1時間、後ろ髪を引かれるように下山を開始する。登りでヘロヘロになってしまう急な尾根であるが、むしろ下りのほうが神経を使う。大きなギャップや木の根がはびこり、文字通り一歩たりとも気が抜けない。昨年の9月、蓬峠からの縦走のとき、最後のこの下りで完全にバテてしまった。

登りも下りも、いつもいつも苦労する道なのだが、好きなコースのひとつだ。やはり展望が魅力で何度も足を運んできた。白毛門は関東甲信越の山の中でも、指折りの眺望の山である。
ヒノキのウロの手前でアイゼンを外す。天神平方面が見えるが静かで誰もいないようだ。ロープウェイは運行しているのだろうか。
日も高くなって地面はぬかるみとなった。激しい下りは続き、膝が痛くなってくる。最後は横向きで下ったりして、ごまかしごまかし登山口に下り立った。まだ昼過ぎだが、駐車場は依然として閑散としていた。初冬の上越の山は、夏や秋以上に気高く荘厳な場所であった。

山麓は紅葉がまだ残っている。谷川温泉に入ってから、谷川ラーメンの店にも寄っていく。店のご主人さんは水上ICの近くに家があるそうで、今朝自分が見た白い谷川岳が、家からよく見えるとのことだ。店には、その方面から眺めた谷川岳の大きな絵画が飾られていた。もうあと半月もすれば、この絵のように完全に真っ白になることだろう。