佐渡の縦走を果たしたので、新潟の最終日は本土のどこか軽い山、ということで駅からレンタカーで行ける山を探した。新潟駅前には24時間営業のレンタカー営業所があり、早朝から借りられるので日帰り山行には便利である。
五頭(ごず)山塊の末端にある宝珠山(ほうしゅさん)が標高も559mと手ごろで、展望もよさそうなのでここにする。友人はこのような新潟の低山は初めてで、なかなかいい選択をしたと思った。新潟駅から車1時間程度である。
宝珠山山頂から、緑の菅名岳を望む
|
今日も朝から穏やかな晴れで、田植えの始まった新潟平野を前景に五頭や菅名の緑の山塊、遠くには白き飯豊連峰も見通せた。ゴールデンウィークの中心である5月3,4,5日と、3日連続で晴れてくれたのは今まで記憶がない。
観覧車のあるサントピアワールドのすぐ近く、赤松山森林公園に入る。車道を車で上っていくと駐車場をいくつか見る。前を走る車につられてキャンプ場まで行ってしまった。でも自炊場で水を調達できたのでよかった。少し戻って宝珠山登山口に着く。
ここの駐車スペースはせいぜい5台が限度。それ以上はおそらく、この先の駐車場に停めるのだろう。
支度をして出発する。始めは園地化されたようなところを、どんぐり坂という階段道で登っていく。このあたりはすでに緑が濃い。チゴユリがよく咲いている。
20分ほどの森歩きで、鉄塔下の明るい場所に出る。新潟平野がよく見え、昨日縦走した佐渡が見えるかと思ったがそこまでは見えない。
登山道はいったん舗装車道に下りる。反対側に続く山道の入口に宝珠山登山道の表示があった。あらためて登り始めるが。段差の大きい階段でかなりの急登だ。
きつい登りはしばらく続き、やがて友人が遅れ始める。予想以上に大変な山なのかもしれない。
城山に到着。ここはかつての城跡で、説明板が立っている。城山から先は急登はついえ、穏やかな登りとなる。さらに進むと「赤松山」と表示された山頂に出た。奇妙にねじ曲がったアカマツの木に山名板がぶら下がっている。ここには丸山という山への分岐があった。
昨日までに比べて気温が高く、すぐ汗をかいてしまう。5月の新潟の低山は、もう初夏の趣きである。
深い樹林帯の道が続く。ユキグニミツバツツジが鮮やかな紫色を見せている。左側の眺めがきく場所が次第に増えてきた。大きな塊はもちろん五頭山塊だろう。
五頭山塊は、五頭山しか登ったことがなく菱ヶ岳への縦走はできていない。また、菱ヶ岳からさらに大蛇山や、今回の宝珠山まで縦走することも可能だが車の回収が難しい。魅力ある山域なので、タクシーなど使っていつかは実現したいものだ。
ほどなく三角点に到達。赤松山三角点と言っているようだが、新潟百名山のガイドではここを虚空蔵山としている。
ここから先、山が深くなった感じがした。樹林はブナが中心となり、咲き残りのイワウチワやタムシバ、ユキツバキが見られる。木の根の出たところやちょっとした岩場を通過。ブナがますます多くなって、幽玄な雰囲気も出てくる。
高みに出たところは岩場の展望地になっており、一気に眺めが開けた。右手には大蔵・菅名山塊、左には五頭、そして来た方向は新潟平野の先に弥彦・角田の2座がここでもよく見える。フェリーからも大佐渡縦走路からも、そしてここからも、この弥彦・角田は今回の山行で常に見え続けていた。
その佐渡は弥彦・角田山のさらに奥。見えているような見えていないような。気温が上がり空も白っぽくなって、遠くの見通しは少し悪くなっている。
進む方向には2つのピークが並んでいる。宝珠山は左の、てっぺんに何か立っているピークだろう。まず最初に登り着いたのがその右側のピークで、八咫柄(やたがら)山と呼ぶ。「咫」、こんな漢字は初めて見た。果たしてホームページで表示できるのだろうか。
八咫柄山の少し先に、草水登山口からの登山道が上がってきていた。この道は今使えないとの話もある。
登山道は北東に向きを変え、一転して急降下。前に見える宝珠山のピークまで、同じ位の標高差を下って登ることになる。最後になって新潟の山らしい険しさが出てきた。
下りしな、ナガハシスミレの群落をいくつも見る。日本海側の山ではおなじみのこのスミレも、佐渡では不思議と一度も見なかった。ただ、歩いたところにたまたまなかったのかもしれない。
かなりきつい急登を経て、ようやく宝珠山の山頂に着く。559mの低山とは思えないほどの素晴らしい展望である。大蔵・菅名や弥彦、角田は相変わらずよく見え、大蛇山に続く縦走路も一本の線を山肌に引いていた。その縦走路はブナ林が続くようだ。
大蔵・菅名山塊を挟む谷間から、汽車の汽笛が聞こえてきた。磐越西線の走るところであり、おそらくSLばんえつ号だろう。煙のようなものまで見ることができた。
のどかで、暖かく気持ちのいい山頂だ。今回の山行を締めくくる頂としては充分である。
来た道を下山する。白っぽかった空は再び青い部分が多くなってきて、日差しも復活。ユキグニミツバツツジに十分に日が当たってよりいっそう鮮やかな色になっていた。
下るのがもったいない気もするが、3日間の疲れもあり早めに切り上げ、温泉に浸かりたくもある。今から登ってくる人も大勢いて、やはり展望のいい山ということで地元で人気があるのだろう。
ただし、手軽な山だと思っていた自分の読みは見事に外れ、特に下部は急登の続くなかなか大変な山であった。
まあ新潟の山である程度自然や景観を楽しみたいのなら、このくらいの労苦は不可避であろう。
段差の大きい階段を転げないように下り、赤松山森林公園の駐車場に戻った。
温泉のあるあかまつ荘までは車で3分だった。まだ日がさんさんと降り注ぐ新潟の地を、これでお開きにしてしまうのはもったいないけれども、明日は雨が降るとの予報。今回の新潟巡りは何とも、天気面ではツボにどんぴしゃりとはまったプランニングとなった。
新潟駅から帰りの新幹線内で、「新潟に乾杯」と書かれたご当地缶ビールで打ち上げする。