山の写真集 > 谷川岳・越後・信越 > 袴腰山と猿毛岳
-タムシバ越しに越後の秀峰を望む-
タイトル
八木ヶ鼻-袴腰山-高城城址-北五百川の棚田-猿毛岳
山域越後
地域新潟県
標高袴腰山(526m)、八木ヶ鼻(272m)、猿毛岳(326m)
山行日2011年5月3日(火・祝)天気1
沿面距離10.1km
歩行時間5時間10分
標高差281m(日吉神社登山口~猿毛岳)
宿泊ホテルニューグリーン燕三条(後日泊)
温泉八木鼻温泉 いい湯らてい
交通マイカーHome


2011年5月3日(火・祝)前夜発

練馬IC21:00
 関越自動車道
赤城高原SA泊
北陸自動車道
三条燕IC7:45
 国道289号他
いい湯らてい経由
9:10八木ヶ鼻登山口
9:40八木ヶ鼻9:50
10:10追分の松
10:55三角山11:00
11:10ブナの道分岐11:20
11:40袴腰山12:30
13:10高城城址
14:00高城登山口
 県道9号、国道290号他
北五百川の棚田見学
15:05日吉神社登山口
15:25尾根
15:42猿毛岳
16:05スキー場跡登山口
16:35日吉神社登山口
 国道290号、県道9号他
17:10いい湯らてい18:00
 国道289号他
19:20燕三条駅前
 ホテルニューグリーン燕三条泊


関連リンク
ぽぽさんのブログ
三条市
にいがた観光ナビ
八木ヶ鼻温泉 いい湯らてい


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今年のゴールデンウィークは、3日かけて新潟の山を巡り歩くプランにした。今回は日程的に余裕があるため、東京から少し遠いところまで入る。

同じ新潟県でもさまざまな山域があり、それぞれ雰囲気がずいぶん違う。険しい谷川連峰や上越国境稜線、浅草岳・守門岳・飯豊連峰など福島県と接する会越の山は県外の人にもよく登られている。そのほかにも越後三山や未丈ヶ岳など豪雪地帯で知られた中越の山、角田山・弥彦山・米山といった春の花の多い日本海側の低山、妙高・海谷山塊など上越(上越国境とは違う)・上信越の山。栂海新道は北アルプスの一角を形成し、そして尾瀬も新潟県と接している。
今回の山行は、初日の袴腰山、2日目の大蔵山・菅名岳は県北側に位置し、山域で言えば川内山塊となる。


尾根道からは粟ヶ岳の眺めがいい。白い花はタムシバ

以前火打山などでごいっしょした新潟在住のぽぽさんに連絡し、初日と2日目は久しぶりに同行してもらうこととなった。

3日目は帰京しやすい魚沼の山にしたかったので、ぽぽさんが数日前に歩いた五日町付近の山を単独で登ることにした。

八木ヶ鼻と袴腰山
ナガハシスミレ
どっしりした山容
ピンク色がかっている
イワウチワ
ブナ新緑
雄花と雌花
オオカメノキ
三角山より

袴腰山は粟ヶ岳から伸びる尾根にある山である。標高は326mと低いながらも全山ほぼブナなどの落葉樹に包まれ、麓から見る姿はその名の通り、ずっしりとした風格を感じる。
袴腰山から粟ヶ岳までは、「ブナのみち」と呼ばれる登山道がつけられている。それも惹かれるものがあるが時間的な制約や、残雪の具合がわからなかったこともあり、今回は一般的なコースを歩く。

三条燕ICから国道289号で八木ヶ鼻温泉「いい湯らてい」まで行く。初めての地だが、写真で見ていた特徴的な八木ヶ鼻があったのですぐにこことわかった。東側に粟ヶ岳、南の空に守門岳の白い山並みが眩しい。

駐車場でぽぽさんと久しぶりに会い、さっそく出発する。八木ヶ鼻と高城の2つの登山口にそれぞれの車を置き、八木ヶ鼻登山口から登り出す。
すぐにマキノスミレ、ナガハシスミレを見る。ナガハシスミレは距の長いのが特徴だが、これが白い距だとオオタチツボスミレとのこと。
新緑の気持ちいい登山道をどんどん登っていくと早くも稜線に出る。袴腰山は左折だが、右の八木ヶ鼻ピークに立ち寄る。五百川からの道を合わせ、タムシバ咲く中を緩く上って八木ヶ鼻に着く。
小広く穏やかなピークは、下から見たような切り立った岩峰の印象はない。正面にねずみ薬師という小さな山、その背景に白き守門岳が再び現れる。1200mそこそこしかない粟ヶ岳も、残雪をしたため大きな存在である。この2つの主役とは、今日1日ずっとお付き合いすることとなる。
そして忘れてはならない、振り返って見上げる袴腰山。台形状の尾根に鋭い三角の頂上部を持つ。ここから見るとかなり高く、アップダウンもありそうだ。その方向へ足を向ける。

稜線はタムシバやオオカメノキの白花が目立つ。タムシバは花びらの根元がピンク色になっていて、ちょうど咲き始めのニリンソウのようだ。クロモジやハウチワカエデは、若葉色の葉の下に小さな花をたくさんつけている。
時々見られるツツジはユキグニミツバツツジと言うそうだ。ブナの新緑も目に優しい。足元にはイワウチワやイワカガミ。葉や花が大きく、イワウチワの花は東京周辺で見られるものの2倍はありそうだ。

周囲の樹林は背の高くないものばかりで、終始眺めがいい。標高は300m程度でも、眺めや樹林、花の顔ぶれは中級山岳と変わりない。

タムシバが白い
新緑の中へ
守門岳
うぶ毛がある
高城城址
ニシキゴロモ
ユキグニミツバツツジ
カタクリ群落
北五百川の棚田
猿毛岳より

稜線上の1ピーク、三角山で一休み。袴腰山が正面に大きい。タムシバの白が斜面にいっぱい見え、まるで雪のようだ。休んでいるかたわらを、ギフチョウが飛び回る。カメラを向けるがすぐ遠くへ行ってしまう。

萌黄色のブナ林にもぐり込む道となる。ブナは雌雄同体で、雄花と雌花が出ている。雄花はこうべを垂れ、雌花は反対に上を向いている。こうすることによって自家交配を避けているのだそうだ。

ブナのみちへの分岐点に立つ。少しその方向に進んでみる。ブナの根元にイワウチワがいくつもの群落を作っていた。
粟薬師まで縦走するコースがよく見えるが、かなりのアップダウンがある。粟ヶ岳の山稜に溶け込んでいくあたりは地形が複雑で迷いそうだ。ただトレッキングコースとして整備されているようなので雪がなければ問題ないだろう。

袴腰山へは、岩場にロープがかかる最後の急登となる。登りついた袴腰山山頂には、ブナの木が1本。大型連休で混み合っているのではと思ったが、意外と静か。地元のリピーターさんたちは皆、遠くにお出かけか。粟ヶ岳や守門岳を眺めながら昼食をとった。

下山は高城コースを行く。滑りやすい急坂が続き、こちら側を登路に取るほうが大変だ。「とどめの坂」などと書かれた標柱もある。
急坂がついえ穏やかな道になると、再びスミレの多い道になった。その先にカタクリが現れ、それは高城城址まで続く。

このあたりから「ひめさゆり下田の人情丸取りす」といった、ヒメサユリを詠んだ俳句の書かれた木柱が目立ち始める。この高城コースは地元の人々の手によってヒメサユリが植えられ、5月中下旬ごろには見事な花園になるという。今回は時期が早かったので、まだ緑色の茎状のものしか見ることは出来なかった。
ネットで袴腰山の記録を見ると、ほとんどがその5月中下旬のものとなっている。

その後ブナの樹林帯に入り、ショウジョウバカマやニシキゴロモ、マキノスミレを見る。高城城址以降きつい下りもなく、高城登山口に下り立つ。回しておいた車で八木ヶ鼻に戻った。

八木ヶ鼻にはもうひとつ、見ておきたい場所がある。日本の棚田百選にも選ばれている「北五百川の棚田」である。
温泉から歩いても行ける距離である。といっても民家の軒先を入っていかないと行き着けない。家の人は快くどうぞといってくれた。棚田も壮観だが、カタクリが大きな群落を作っていてちょっと得をした感じだ。

手軽に花やブナを見ることのできる新潟の山だが、冬は多量の雪に見舞われる。この後、ぽぽさんに「猿毛岳」を案内してもらった。一昨年の冬、知り合いの方が行方不明になり、度重なる捜索でも見つからず、雪の溶け始めた3月下旬になってようやく遺体で発見されたという山である。

標高は319mと袴腰山よりも低く、スカイツリーの半分以下である。日吉神社登山口から入山してみると、上部を除き杉林が多く、また尾根筋も幅広い。袴腰山と違って、ちょっと東京付近の低山と雰囲気が似ていた。
もっとも東京付近だったら雪がなく、踏み跡もしっかりしているので迷いようがないだろう。でもここ猿毛岳はやはり、最大で2mくらい積もるそうなのだ。これは、普段雪の心配がない東京周辺の低山でも、ひとたび雪が積もれば迷いやすい山になる危険をはらんでいる、ということを意味している。

猿毛岳山頂には、有志の人による山小屋が建築中だった。旧スキー場側の登山口に向けて下山した。