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2010年7月4日(日) 前夜発
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◇ | | 練馬IC | 19:50 |
関越自動車道 土樽PA泊 |
◇ | | 小出IC | 5:50 |
国道252号線他 |
7:05 | 駐車場 | 7:15 |
7:45 | 桜ソネ登山口 | ◇ |
8:50 | カヘヨノボッチ | 9:10 |
9:30 | 前岳の肩 | ◇ |
9:50 | 浅草岳 | 10:30 |
10:50 | 前岳の肩 | ◇ |
12:05 | ネズモチ平登山口 |
12:15 | | 駐車場 | 12:25 |
国道252号線他 守門温泉 青雲荘 立寄り |
15:20 | | 小出IC | ◇ |
関越自動車道 |
19:00 | 練馬IC | ◇ |
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会越の名峰、浅草岳へは8年ぶりの登頂となる。
巷では、南アフリカで行われているサッカーのW杯の話題で持ちきりだが、前回も同じく日韓W杯の時期で、しかもここ新潟県でスウェーデン対イングランド戦が行われた翌日が浅草岳山行だった。先ほど自分が8年前に書いた山行記録を読み返して、思い出したことだ。
だからどうという話ではないのだが、やはりこういう記録は後で読み返すと楽しいものだ。
8年のうちに日本代表の監督もずいぶん老けたなあと感じる。同時に、その間自分も同じだけ歳をとったと思うとぞっとした。
ヒメサユリ
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浅草岳は今の時期、ヒメサユリである。今年の春の天候不順で1,2週間ほど遅れ気味だったが、7月になってようやく見頃になったようだ。天気が心配だが、うまく梅雨の晴れ間を狙って出かけた(つもりだった)。
前日のうちに出発し、関越トンネルで新潟県側に出たところで車中泊する。雨が車を一晩中、激しく叩いていた。
早朝目が覚めると、谷川連峰の上空に青空が見えた。今日の天気は何とか持ちそうか。期待して福島県境を目指す。
小出ICを降りてから国道が長い。どんどん東に走るにつれ周囲の景観も変わり、いつの間にか回りは山を背景にした広大な田園地帯に。
| 霧の駐車場 |
| 殉職者慰霊碑 |
| サンカヨウ |
| 桜ゾネ登山口 |
| 木の根張り出す道 |
| コイワカガミ |
| 浅草岳頂上 |
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大白川駅前で国道を離れ、山に続く県道を上がる。未舗装になりデコボコがひどいが、軽自動車でも何とかいける。
只見線の単線が国道に沿って延びている。8年前は車がなかったので、この只見線ではるばる、1日かけてやって来た。翌朝、宿の送迎車でようやく登山口にたどり着くことが出来たのだった。
濃い霧に包まれるようになると、広い駐車場に着いた。まだ7時過ぎなのにすでに20台ほどが停まっている。 ゲートが閉まっているのでこれより先は行けない。今日は桜ゾネ登山口から登るつもりでいてカーナビを合わせていたのだが、どうもこの駐車場は目的の地よりかなり手前みたいだ。
支度をしてゲートの先を歩いていくと、ネズモチ平登山口があった。前回取り付いた場所だが、宿の送迎車はその時ここまで来てくれた記憶がある。おそらくその後、さっきの駐車場より先は、車の乗り入れが禁止になったのだろう。
一面の濃い霧が霧雨状になって落ちてくる。今日は雨具を着ての登山かもしれない。
林道の途中に、殉職者慰霊碑が立っていた。10年前、遭難者の救助活動にあたった人が雪崩によって命を落としたとのこと。前回泊まった音松荘のご主人も犠牲者の一人らしい。日付を見ると6月18日となっている。そんな時期に雪崩による事故が起こるとは驚きだ。やはりここは日本有数の豪雪地帯である。
桜ゾネ登山口までは、20分程度の歩きですんだ。小広い場所だが、車は当然ない。すぐ上に鐘があり、その先でブナ林となる。
霧雨は小雨になる。空気がジメジメ、ムシムシして息苦しいくらいだ。湿度は100%かもしれない。熱中症を警戒して、水分は意識して多めにとる。
花は少なく、ギンリョウソウが半透明の奇妙な姿を見せるのみだ。高度を上げ、ブナの林相が少し変わってくると、急に雨足が強くなった。雨具の上をとりあえず身につけるが、このムシムシ空気の中でこんなものを着るわけにはいかない。降りが弱まったところですぐ脱ぐ。
急登となり、小さなピークを超えると樹林の背が低くなる。前方にもうひとつの小ピークをガスの中に認める。三角点のあるカヘヨノボッチに着く。天気がよければ眺めがよさそうな場所だ。小雨の中、山頂で立ち止まることなく歩を進める。
| クモマニガナ |
| ヒメサユリ |
| 雨に濡れても |
| 群落 |
| ヒメサユリ |
| 一瞬のガス切れ間 |
| 前岳は豊富な残雪 |
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カヘヨノボッチの岩尾根の下りで、タニウツギやウラジロヨウラクを見る。そして、早くもヒメサユリの姿をとらえた。雨粒を纏ったピンク色の花は風情がある。
このような悪天だと多くの種の花は閉じてしまうが、ヒメサユリはしっかりと可憐に花開いている。これまでのつらい雨の中の登りが十分報われた気分だ。ヒメサユリは高山植物の中でも特に、見る者に大きな満足感を与える花である。
開けた尾根を緩く登っていくと木道となり、草原状の斜面となった。ツマトリソウ、イワカガミ、ゴゼンタチバナ、アカモノと次々に現れる。
小さな残雪を横切りさらに登ると、ガスで見づらいが、前岳の大きな雪田を目の前にする。足跡はしっかりついているが、スリップすると滑落してしまうので、慎重に斜上する。ネズモチ平からの道を合わせ、あたりは高山湿原の様相を呈す。
コバイケイソウ、イワイチョウ、ミツバオウレンなどを見る。ヒメサユリもなお咲き続ける。最後のひと登りで浅草岳頂上である。
雨は降り止まず、雨具以外に傘も使って休憩する。登山者はさすがに多い。この空模様でも幸福の表情を浮かべている人が多いように思えるのは、やはりお目当ての花を見ることができたからだろう。
「雨で滑ってどうなることかと思ったけれど、執念で登ってきたわね」うれしそうに話す女性もいる。
浅草岳の山頂標識から少し先に下ったところもヒメサユリが多く、足を伸ばす人も大勢いた。雨はいつしか土砂降りとなり、さすがにちょっと冷えてきた。ムシムシ感はいつの間にかなくなっている。
雨具をしっかり着込んで下ることにする。シラネアオイがひと株。下山路はネズモチ平コースである。
草原から樹林帯の一本道に入ると、これが大変な道。ギャップが多く、かなり荒れてもいる。8年前に登ったコースだが、急坂でつらかったと感じたものの、こんな悪路のイメージはなかった。
車で来て手軽に登る人は桜ゾネコースを歩き、このネズモチ平に直接下る道は下山地への最短路なれども、あまり歩かれていないかもしれない。
足元にはマイヅルソウの白い花ばかりだが、それでもヒメサユリはたまに見る。
下のほうは曇り程度かな、と予測しながら急坂を下る。しかし高度を落とすにつれ雨は激しくなり、岩と木の浮き出た登山道は、ついに泥水の川と化す。
ガレた崖のような場所を慎重にいく。無事に怪我なく下ることを目標に、頭と体のスイッチを切り替え、カメラはザックにしまう。
緩い下り坂になっても岩と木で歩きにくい道は続く。沢をまたぎ、方向を変えてなおも歩き、ようやく朝見たネズモチ平登山口に着いた。ここからは傘をさして、林道を5分ほどの行程である。
駐車場に戻り、とりあえず濡れた衣類をどうにかすることが先だ。雨具も上着も下着も、帽子もザックカバーも雨と汗でずぶ濡れ。靴やスパッツは泥だらけだ。
これほど濡れねずみになったのはやはり同じ8年前、山形の大朝日岳以来かもしれない。あの時は身も心もボロボロになったが、今日は8年ぶりのヒメサユリとの再会。これで十分充実の山となった。
服は全部袋にほうり込み、車の中で着替えを済ます。ちょっと生き返った気分。
国道まで下ると、下界は意外と天気がよい。雲をかき分け太陽も姿を現す。空の青色が目にしみる。
守門温泉・青雲館に立ち寄りして、帰るとする。
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