~越後の名峰にヒメサユリ咲く~
タイトル

あさくさだけ(1586m) 2002.6.16.

ネズモチ平-前岳ノ肩-浅草岳
-鬼ガ面山-六十里峠

マップ
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浅草岳をバックに雪田を登る
浅草岳をバックに雪田を登る
前岳の肩から浅草岳へ
前岳の肩から浅草岳へ
浅草岳山頂
浅草岳山頂
山頂から田子倉湖
山頂から田子倉湖

●雪田を渡り360度展望の山頂へ
宿の車で、ネズモチ平登山口まで登る。駐車場にはすでに、車が10台近く停まっている。
登山道に入ると、昨日までの雨のせいか、のっけからぬかるみの歩きにくい道。沢を離れると傾斜は急に増してくる。湿度が高く、すぐに汗が吹き出す。
しばらくは花もない、うっそうとしたブナ林の急坂を登り詰める。昨晩あまり寝付けなかったせいか、体調がいまひとつで、この湿気の中つらい登りが続く。

最近ずっと調子良い山登りが続いていたせいか、入りがオーバーペースだったようである。1時間くらいでバテてしまった。流れ出る汗が止まらず、体にまとわりつく虫もいまいましい。後から登って来る人にどんどん抜かれて行く。
我慢して高度を稼いで行くと、ようやく樹高が低くなり、背後に守門岳の姿が望めてきた。北面には雲海が広がっている。しかしつらい登りはなおも続く。

岩場の一角に出る。そこにはヒメサユリが5株ほど咲いていた。ややしおれ加減なのが残念。この先、調子良ければヒメサユリの群落があるという鬼ガ面山への縦走路を下る予定だが、険しい道とも聞く。この調子では行けるかどうかわからない。ここのヒメサユリをとりあえず、写真に収めておく。

頭上で人の声がしかたと思うと、いっぺんに視界が開けた。前岳の肩に到着。あたりは広い雪田である。ほてった体に涼風が心地よい。雪の斜面を登る。
眺めも広がりさっきまでの疲労がいっぺんに吹き飛ぶ。進む方向には浅草岳の頂稜部が大きい。雪田を渡りきり湿原の木道となると、足元には次々と花が現れる。ゴゼンタチバナ、コイワカガミ、マイヅルソウなどが多い。
ショウジョウバカマ、キスミレ、タニウツギなど色合いも賑やかだ。そして何と言っても、雪田と緑色の草原の上に大きく広がる展望が素晴らしい。

一等三角点のある山頂からの展望も広大だ。越後三山、未丈ガ岳、やや霞んで平ガ岳。眼下には、ちぎれ雲の下に田子倉湖が大きく横たわっている。登って来た方向には守門岳が存在感を示している。また、浅草岳から伸びる鬼ガ面山への縦走路もダイナミックだ。かなりのアップダウンがありそうだ。

山頂では天ぷらを揚げているグループがいる。前回の朝日岳でもそうだったが、このへんの山は山菜採りの場としても価値が高そうだ。コシアブラなどがたくさんあるとのことだが、どれがコシアブラなのか今一つわかってない。

山頂で地図を見ていると、東に下る方向に、天狗の庭という場所があるのに気づいた。そこに向かってちょっと下ってみる。展望の稜線である。
再び大きな雪田がある。シラネアオイ、カタクリを見る。天狗の庭の場所は広い草原状となっている。ところどころガスが湧いては消え、夏山の雰囲気も少し感じられる。
ここから少し下った所には避難小屋も見える。
●縦走路を下りヒメサユリの群落に出会う
体力も回復して来た。予定通り縦走路に入ろう。山頂に戻り、再び前岳の肩まで下りて鬼ガ面山への縦走路に入る分岐点を探すが、一面の雪田でよくわからない。桜ソネの分岐付近まで行ってしまい、引き返す。南側に入る分岐があった。

しばらくは石がゴロゴロの薮っぽい急な下りだが、ほどなくして緩やかになる。ヒメサユリがいよいよ現れ出す。
歩を進めるにつれどんどん多くなっていく。群落といってもいいだろう。
道は細く左側が切れ落ちているので、じっくり構えて撮影できないのが惜しいが、花数は思った以上に多かった。ヒメサユリは、名前もその姿も非常に清楚でしかも色鮮やか。見ててうれしくなる花である。新潟と福島にしか咲いていないという稀少種とのこと。何故か登山道の回りにだけ咲いているように見える。それゆえ盗掘も多いとの話も聞く。

ヒメサユリ ヒメサユリ
ヒメサユリ ヒメサユリ ヒメサユリ

また、この花で有名な浅草岳であるが、ネズモチ平からの登りでは1箇所だけ、天狗の庭への下りでは蕾がやはり数箇所で見られるだけだった。この鬼ガ面山への縦走路に集中して多く咲いているようだ。しかしこの道は浅草岳の登山道の中でも一番の険路で、登山者も少ない。山頂ではあれほど人がいたのに、ここの下りでは前後に歩いている人はひとりもいなかった。

片側がスッパリ切れ落ちた稜線
片側がスッパリ切れ落ちた稜線

道はかなり激しいアップダウンが連続する。しかも福島側は大きく切れ落ちている。下は奈落の底になっていて緊張する。道が下草で覆われている部分が多いので、うっかりの踏み抜きが恐い。
何もこんな縁を伝うように道を作らなくても、と思うくらい、稜線上で一番スリルのある位置に道が付けられている。谷川岳の一ノ倉沢を彷彿とさせる、というガイドを読んだことがあるが、なるほどと思う。

ヒメサユリはこれ以降、鬼ガ面山の南斜面まで、随所で見ることが出来た。しかも、そのようなスリルのある場所を好んで咲いているように思える。


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