都心の桜の蕾も膨らみ始め、そろそろ春の足音が近づいてきた。久しぶりに裏高尾を歩いて季節の移ろいに触れてみたい。
京王線の窓から覗く東京都下の町並みはどこも日がいっぱいに注ぎ、あとは花の咲く春を待つのみとなっている。
小下沢林道の入口、高尾梅林 |
京王線高尾駅でJRの連絡階段を通り抜け、北口からバスに乗る。8時12分小仏行きのバス停前には登山者が長蛇の列をなし、2台運行となった。バスには三脚を抱えたハイカーも多い。
日影で下車しすぐ歩き出す。小仏方面へ車道をしばらく歩き、中央線をくぐってから高台に出る。カメラマンが三脚を構えて座っている。目の前に中央線と中央自動車道をバックに、明るい高尾の町並みが見下ろせる撮影スポットである。
そのすぐ先が高尾梅林。ここにも三脚を立てた人が多い。斜面を紅梅と白梅がきれいに彩っているが、寒かった冬の影響があるのか、まだ8分咲きくらいだ。
真っ青な空でもったいないが、植林下の薄暗い小下沢林道に入っていく。残雪は道脇にほんの少し見られるのみ。今週は暖かい日が続くようだから、もう解けてしまうだろう。
斜面を凝視し続けるも、スミレの姿はなかなか見られない。アオイスミレの咲きかけが一株だけあった。この先、日当たりのいい場所に出るたびに期待して見てみるが、それ以降は何も見られないまま、小下沢野営場に着いてしまった。
今まで何回かこの時期に歩いていて、何種類ものスミレを見られたのだが、やはり雪が溶けて間もないから、という理由なのか。小下沢林道の春はもう1週間先のようだった。
休憩してザリクボの沢沿いに登っていく。途中でもりのふうさん、くまさんとバッタリ。ハナネコノメはつぼみだったと言う。山で知り合いに会うと、春が来たんだなあと思う。
登山道は大きな残雪を何箇所か越えていく場所があり、今日の暖かさで雪は緩んでいた。一部スノーブリッジっぽくなっているところもあったので、踏み抜きに注意が必要である。沢沿いのハナネコノメはまだつぼみ程度だった。
今日はこのまま景信山に登る気はなく、どこか歩いていない道を行こうと思っている。
野営場に引き返して、改めて小下沢沿いを見てみると、カメラマンがいっぱい沢に下りている。日当たりのよい水辺にハナネコノメが、たくさん花をつけていた。この時期、小下沢林道を歩く人の多くはハナネコノメが目的である。バスで三脚を持っていた人も、やはりここに来ていた。
自分もこれらの人に混ざってカメラを向けるのが何だか恥ずかしい。でもいい写真が撮れた。
団体さんがやってきて、野営場も賑やかな地に。今日はこれから、北高尾山稜に登り、夕やけの里に下山することにした。植林の中の登りに入ると、静かでひんやりとした空気になった。それでも登り詰めの道にやがて汗をかくようになる。
登りついたところが狐塚峠で、ここから北高尾山稜の尾根道である。アップダウンがあってなかなかきつい。展望もないのでつらいところだ。でも雪のない土の道を歩くのが何だか懐かしく、ホッとする。行き交う人も多く、季節が一歩進んだのを感じる。
杉ノ丸で八王子方面の眺めを見て、次に登り着いたところが黒ドッケ。植林の味気ないピークだ。
少し歩き足りない気もするが、一昨日も秩父に行っているので今日はこれで下山する。
北側に伸びる尾根道を下る。緩やかな斜面だが、道はジグザグについている。注意していないと真っ直ぐ下ってしまいそうだ。トレイルランの人たち人も忠実にこのジグザグを辿るのだろうか。
指導標に従い、いくつかの分岐を経て高度を落としていく。「夕やけいろは坂コース」を下っていくと建物が見え、「夕やけふれあいの里キャンプ場」に下り立つ。
ここには16年前、市道山からの下山時に来たことがある。唱歌「夕焼け小焼け」作者の発祥の地で、夕焼小焼と言う名前のバス停が印象的だ。久しぶりに来たら、立派な資料館なども建てられ、家族で楽しめる施設になっていた。
ボンネットバス「夕焼け小焼け号」やポニーがのんびり寝ている牧場もあって、けっこう賑わっている。それでも夕焼小焼バス停から少し歩いてみると、静かな山間の住宅地が前と変わらず見られた。
駅までのバスは1時間に1本。春の日差しが眩しい高尾の町を見ながら、高尾駅に戻る。