1週間前の週間天気予報では、この日曜日の天気が雨の予報になっていたので、先週あまり天気よくない中を川苔山へ出かけたのだが、結局この日は超のつくほどの快晴になった。
滝子山のバリエーションルートを歩く。登路は浜立尾根、降路は北方川東尾根で立河原に下山し初狩駅へ。立河原ルートは登山道として整備されておりバリとは言えないかもしれないが、エアリアマップにはまだ載っていないようである。
浜立岩から、三ツ峠・黒岳など御坂の山々と富士山を望む
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日差し眩しい笹子駅を出発。土曜日も好天だったため登山者は分散し、この日の中央線はそれほど混雑していなかった。
今日の最高気温は30度超えが予想されており、朝のひんやりした空気はない。国道沿いの気温表示はすでに20度になっていた。
周囲の山は明るい緑に包まれ、国道沿いはすでに田植えが終わっていた。歩き始めの車道歩きは、いつもなら涼しい中を歩けるのだが、今日は初めから日差しギラギラだ。夏本番と違ってまだ空気が乾燥しているので、うだるような暑さではないのでまだいい。
稲村神社を過ぎ、滝子山を見上げながら坂を登って桜公園まで来ると、ようやく樹林のある林道となって日差しが遮られる。それでも登山口の道証地蔵までは駅から約1時間、けっこう長かった。
スミ沢に下り、水の流れを見てホッと一息。しばらくは樹林下の登山道で、登りでありながら汗がスーッと引いていく感じがした。
さて、浜立尾根の取付きはこのスミ沢登山道から分岐する。鉄塔を2基見た先で登山道が右にカーブする手前、右斜面に赤テープがありそこから踏み跡が上がっていた。意外とすんなり見つけられた。
今までスミ沢登山道を歩いていて、この覆いかぶさるような薄暗い右斜面がうっとおしく感じられたものだ。
最初こそジグザグに踏み跡はついていたが、ほどなく直登に変わる。尾根に上がると落葉樹の森となり、きつい登りから解放されたかと思いきや、すぐにまた急登。時には小さな岩場を縫いながらどんどん登る。
南面の切り開きから山々が見えた一箇所を除けば、こんな一本調子の登りが延々続いた。
右から浜立南稜を合わせると、ようやく傾斜は穏やかになった。あたり一面、ミズナラの新緑が陽光を受け光り輝いている。寺平の平坦地でどっこいしょと腰を下ろす。スミ沢登山口からここまでの標高差は実に500m、ずっと登り詰めだった。
気持ちいい尾根歩きもつかの間、踏み跡は再び急登となった。しかしこの段階ではもう山頂(浜立山)目指しての登りになっているので、「あと一息」の感が強い。足元にはフモトスミレも見られるようになり、季節が春先へ少しずつ戻っていくのを感じる。
再び斜度のない稜線となる。浜立山はもう目と鼻の先だが、その前にこのコース随一の展望地である浜立岩に寄っていく。標識はないが赤テープが右手に分岐する踏み跡を示していた。
少し下ってから登り返すと岩場となり、その斜面はイワカガミの葉でぎっしりと埋め尽くされていた。花もたくさん咲いている。
スミ沢からここに登って来るまでは、葉さえも全く見ていなかった。ここへきて突然現れた大群落である。この付近では、もう何年も前に寂しょう尾根でイワカガミを見ていたが、今日のルートはあまり期待していなかったので、嬉しい誤算である。
イワカガミの群落地を越えたところが浜立岩で、南面を中心に素晴らしい展望が広がった。気温が高くややモヤっているものの、真正面に富士山、そして三ツ峠、黒岳、本社ヶ丸など新緑たけなわの御坂の山々、丹沢や南アルプスも。足元の尾根も緑鮮やか。奥多摩のハナド岩や飛龍山禿岩と並ぶ展望台である。
巷の山行報告を見ると、滝子山に行かずここ浜立山で下山する人もいるようだが、それも納得である。
分岐点まで戻り再び稜線を歩く。浜立山は南面のちょっとした高まりに過ぎず、気付かず通り過ぎても不思議ではない。
ルートはこの先、小さなアップダウンを交えながら緩やかに高度を上げていく。左の斜面には植林のカラマツが目立ち始め、進む方向には時折り、滝子山のとんがった山頂部が現れる。
滝子山は中央線や中央自動車道から見上げると、大きくせり出した山体からツンと突き出た山頂部が形よく、中央線沿線の山の中でもひときわ目立つ存在である。
寂しょう尾根を合わせるあたりでは木々の緑も軽くなり、周囲の眺めが効いてきた。トウゴクミツバツツジは時々見られるが数は少ない。今年のツツジはどうやら全体的に裏年のようだ。
コブをいくつも超えて、人の気配がしてくると一気に頭上が明るくなり、滝子山山頂に着いた。
富士山や御坂の山、麓の様子がよく見える。南面だけなら浜立岩の方が眺めがいいが、ここからは北側の大菩薩嶺や雁ヶ腹摺山、大谷ヶ丸方面もよく見える。そちらのほうはまだ新緑ラインは到達していないようだ。
11時を過ぎてもまだ青空いっぱいで、日差しも強力。今日もまた快晴の1日のようだ。関東の最近の天気はどうも、完全な晴れか大雨かと極端になる傾向がある。
金髪の外国人(男二人)が登ってきて、富士山を指しGreat!と叫んでいた。山頂直下の斜面にはここにもイワカガミが少し咲いている。今日の行程でイワカガミを見れたのは、浜立岩と滝子山山頂の2箇所だけだった。
初狩方面へ下山する。1590mと、山頂より低いところにある三角点を過ぎて東方向へ一途の下り。中腹はやはりミズナラなどの新緑がすばらしい。斜度のない平坦な尾根歩きの部分もあるので、足がはかどるコースだ。
桧平に着くと、藤沢経由の従来のルートとは別に、大鹿林道に出て初狩駅または笹子駅に下りるルートも、指導標が示していた。この道はどうやら最近のエアリアマップでは掲載されているようだ。
今日は藤沢方面の道をなおも行く。アカマツ林を見たすぐ先に北方川西尾根に入る踏み跡があり、テープもついていたが少々わかりにくい。今日下る予定の東尾根に比べ、こちらはやや上級向けか。
さらに下って、藤沢ルートでは北に尾根を外れていくところにも指導標が立つ。ここはフタマタ沢ノ頭と呼ぶそうだ。ここでは、さらに尾根通しの方向に「立河原65分、初狩駅90分」との標識もある。
この北方川東尾根ルートはある程度整備された登山道のようだ。滝子山をめぐるルートも、先ほどの大鹿林道ルートが歩けるようになってずいぶん選択肢が広がった。浜立尾根、寂しょう尾根はバリエーションだがかなり歩かれている。大菩薩嶺からの縦走コースもありバラエティに富んだコース採りができる。
東尾根に入ると、眺めのいい鉄塔基部を過ぎた後はけっこうな急坂が続いた。岩っぽいところには長いロープが下がっている。
檜林の穏やかな道が続いた後、着いた穴沢山は細い岩尾根のピークで、足元に遥か下の麓の建物が見下ろせて高度感があった。
左右に補助ロープのかかった岩場を下っていく。右手に滝子山の3つのコブが見える。ヤマツツジが咲きなかなかいい眺めだ。その先、もうひとつ眺めのいい岩ピークに上がった後は尾根を外れて北方川沿いの谷間に下りていく。
大月市のおなじみの指導標は出てこないが、初狩駅や滝子山を示す素朴な案内は継続して見られる。もうひとつ鉄塔を見た後は、下に見える沢を目指してひたすら下っていく。やがて細い林道に出たところで登山は終了となった。
中央自動車道をくぐり、立河原の住宅地に入る。国道に出ると立河原バス停で、フタマタ沢ノ頭の指導標に書かれていた「立河原まで65分」と、ほぼ同じ時間で下ってこれた。振り返るとここからも滝子山の特徴ある山体がよく見えた。
それにしても麓はさすがに暑い。今はすでに30度くらいあるのかもしれない。山の上は日差しの下でジリジリするところもあったが、今思うとやはり涼しかった。
今年の夏はまた暑くなりそうだ。いや、こういう年に限って梅雨が長く冷夏になることもある。
初狩駅までは国道を外れ、川沿いの道をてくてくと30分弱歩くことになる。携帯で中央線の時刻を確認すると、次の便に間に合うか微妙なところだった。それを逃すと次は1時間後になってしまう。ちょっと小走りで、駅横の酒屋に寄ることもせずに初狩駅に来た電車に飛び乗った。
冷房の効いた車内では、他の登山グループが缶ビールで乾杯していた。自分はひたすら我慢である。