2019年8月25日(日) | |||
◇ | 新宿駅 | 6:08 | |
京王線 高幡不動駅乗換 |
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7:04 | 高尾駅 | 7:12 | |
バス | |||
7:25 | 日影 | ◇ | |
7:55 | いろはの森登り口 | ◇ | |
9:37 | 4号路分岐 | 9:42 | |
10:20 | 5号路 | 10:30 | |
11:10 | 2号路 | ◇ | |
11:28 | 蛇滝 | 11:45 | |
11:55 | 県道 | ◇ | |
12:50 | 高尾山口駅 | 12:56 | |
京王線 北野駅乗換 |
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13:51 | 新宿駅 | ◇ |
8月の高尾山には初めて来た。猛暑続きの夏も峠を越えたようで、600mの低山でもそう暑苦しさはなさそうだ。
木名板付きの樹木が立ち並ぶ「いろはの森」で木を観察し、合わせて今だからこそ見られる夏の花を見にいく。
カラスザンショウ(いろはの森) [拡大] |
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小仏行きの一番バスで日影で下りる。30名くらいのハイカーが一度に下車したので何事かと思ったら、多くは登山口近くの山荘を利用(整備?)しにきた地元の人たちだった。
いろはの森に入るまでの林道にも、たくさんの花が見られる。タマアジサイ、ヤブラン、ネジバナ、ハグロソウ、ヤマホトトギス、フジカンゾウ、キンミズヒキ・・・、入山が遅くなった。
春はたくさんのスミレなどで埋め尽くされる林道わきの草地も、夏はまるっきり別の顔ぶれでにぎわっている。
山荘の近くにはキツネノカミソリが群生していた。まるで黒に近い濃緑の森を背景に、オレンジ色がひときわ輝いている。
いろはの森はケヤキの大木で始まる。いろは・・・の文字を頭文字にした48種の樹木が植えられているという。ユズリハ、シロダモ、ウワミズザクラ、ツノハシバミ、ヒノキなど、針葉広葉照葉樹、よく見るもの珍しいもの、いろいろとりまぜて樹木が登場する。木を覚えるのにいいところだ。
林床にはシダ、アオキ、ヤマグワなどの草本類、低木類も多岐にわたる。
以下、いろはの森の樹木について、備忘録的に書き留めておく。(間違いご容赦下さい)
●エンコウカエデはイタヤカエデの仲間で、カエデの中では数少ない全縁(ギザギザのない)の葉を持つ。切れ込みの深いのがエンコウカエデ、浅いのがオニイタヤに分類され、いずれもこのいろはの森で見られる。
●ちょっとデコデコした緑の実をつけている中低木。木名板がないのではっきりしないが、葉の形からするとマタタビまたはサルナシか。マタタビの実は虫こぶになりやすく、いびつな形になるという。
●今度はまん丸の緑の実。葉は全縁で枝が赤い。アブラチャン以外に候補がない。
●カラスザンショウ、この辺りの山ではあまりお目にかからないとは思うが、羽状複葉の高木である。花期ということで花を見てみたかったが、葉とともにはるか高いところあって全然見えない。
カラスザンショウは典型的な先駆種(陽樹)であり、明るい場所であることが生育の必須条件。うっそうとした高尾の森で、先を争って樹冠を上に伸ばして日光を勝ち取っている。サンショウ(山椒)と近縁だが異種となる。ミカン科というのが面白い。
●マルバアオダモは羽状複葉だが2対しかない。粘り強い木質で、バットの材料として知られている。アオダモより鋸歯が目立たない。
●カヤ、イヌガヤはモミとよく似ていて、両方とも高尾山に多く生育しており遠目には区別しにくい。近づいてみると、カヤは若いうちは枝が緑色なので区別できる(モミは茶色)。
カヤは葉先に触れるとチクッと痛く、イヌガヤは痛くない。
●これも木名板がついていないのではっきりしない。対生で細長い葉はウツギだろうか。だとすると○○ウツギと冠がつかない種は初めて見る。葉の根元にもう1対、小さな葉が伸びている。これは芽なのだろうか。単葉の樹木は必ず葉の根元に芽がある。後日記:ヤブムラサキかもしれない。小さな葉は初夏に咲いた花の跡か(2020/1/13)
●ハクウンボク、大小の丸い葉が3枚セットで、これもかなりの高木である。
●木名板なしだがシデの仲間。側脈が多い(約20)のでクマシデだろう。イヌシデだと側脈に沿って毛があるがこれは無毛。
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図鑑を見ながらじっくり登るうち、何十人かに抜かれた。高度を上げると深山の目印としてイヌブナが登場。やがて4号路との合流点に到達する。1時間半もかかってしまった。
少し先にあるブナを見てから山頂北の巻き道に入る。タマアジサイがよく咲いている。少し荒れた感じの斜面には、先々週の蓬峠で見たアカソが群生していた。アカソは高尾山山頂西の稜線分岐まで咲き続いていた。
高尾山山頂の北西側に「江川杉」という、高尾山で一番古い部類の人工林がある。樹齢150年ということなので、もっと太くてもいいのかと思うが、植林であればだいたい直径70cm~80cmくらいだという。ちなみにここで一番大きい木は直径94cmということだ。
関東の山の人工林は現在、樹齢およそ50~60年で、今が主伐期となっている。この付近でも城山北側や梅郷コースの人工林が伐採された。
それらに比べるとたしかに江川杉は少し太く、威厳がある。江川杉は国有林なのでこのまま残されていくのだろうか。
小休憩ののち、5号路に入る。南面だからか、照葉樹の割合が多くなる。
6号路、3号路の分岐を見てさらに直進。薬王院の裏手にある宿坊に出て、人のにぎわう1号路に合流する。山頂下の稜線を経由して4号路に逃げ込みたかったが間違えた。夏でも高尾山に来る人は減らない。外国人も依然として多い。
2号路の下りに入って、静かな森に入ったと思いきや、耳をつんざくようなセミの大合唱である。
高山でよく聞くエゾハルゼミやコエゾゼミではなく、麓で当たり前にいるミンミンゼミ、アブラゼミ、ツクツクホウシなどの声が、ありとあらゆる方向から聞こえる。晩夏のセミの合唱は、けたたましくてもどこか物悲しい響きがする。夏の終わりを惜しむように声を張り上げている。
蛇滝コースで下山する。水行道場の建物の上まで下ると、岩場や階段の脇にイワタバコがびっしりと花をつけていた。今日の目当てのもう一つはこのイワタバコたっだ。ちょっとメカニックで不思議な感じのする紫色の花は、夏の低山ではなかなかの稀品である。
イワタバコの咲く場所は決まって暗いので、写真は撮りづらい。
蛇滝を見てから車道に下っていく。バスに乗ってしまおうと思ったが、思い直して梅郷コースを歩く。
スミレオフでいつも歩いている道で、駒木野の広場は深い草に覆われていた。ヤブランがたくさん花をつけ、キツリフネ、キツネノカミソリも見られた。ハギはヤマハギだろうか。
小仏川の川べりには、子供連れの家族が静かに水辺で戯れていた。8月も終わり近くなり、こういう時期の山麓歩きで目に入る情景は、どこか祭りの後のような寂しげな雰囲気がある。
強い日差しの中、汗を拭きながら高尾山口駅まで歩く。