紅葉ラインも南関東の低山まで下りてきた。久しぶりに中央線沿線の山へ出かける。メンバー4名で高川山へ。
初狩駅から歩き出し、むすび山まで尾根道を歩いて大月駅まで。6年ぶりに歩くが、今やこの山の定番コースになった感がある。
むすび山へ向かう尾根道は黄葉のトンネル |
朝の中央線は登山者でごった返していた。藤野、上野原、梁川、猿橋の各駅で少しずつ掃け、大月駅では富士急行への乗り換え客で列が出来た。
朝方の初狩駅はしばれる寒さだったが、山の後ろから太陽が出るとすぐに暖かくなる。線路の下をくぐり、細道を緩く上がり山へ向かう。いつしかと同じく、どこから来たのか犬のお出迎えがあった。そういえば、高川山の山頂にいたビッキーは数年前死んだらしい。
坂を登っていくと、背後には一転の雲のない青空の下、滝子山などが大きく眺められるようになっていた。
登山口に着く。車が1台、それと簡易トイレが設置されていた。時刻も8時半を過ぎており、この人気の山は登山口からもっと賑わっているかと思ったが、それほどでもなさそう。
植林帯の緩い登りから次第に急傾斜となり、ひと汗かかされる。男坂・女坂分岐では男坂を選ぶ。薄暗い樹林帯の急登が続く。どっちかと言えば面白味のない道だ。しかしこれも、山頂での富士山展望があればこその過程である。
再び女坂を合わせるあたりで自然林の割合が増え、この高度にしては意外に思えるほど色づきのいい紅葉も見られ、単調さが幾分解消される。途中で木の間から大きな富士山を見る。
尾根の肩に上がり、傾斜は緩やかになった。山頂部も見えている。自然林の中を歩いて最後にひと登り、高川山の山頂に着く。
登り着いて最初に思ったのは、眺めが少し悪くなったな、ということだ。山頂周りの樹林の背が高くなっている。まだ木が完全に葉を落としていないこともあろうが、以前はもっと開放的な360度展望の地だったように思う。
それでも右手の富士山の眺めは相変わらず素晴らしい。高川山から望む富士山のポイントは、三ツ峠や御正体山・杓子山などの周囲の山稜や、麓の町並みの眺めとのバランスがいい点である。そこに富士山があることに何の不自然さもない、そういう見え方をしている。
山頂中央部に木の箱があり、中にビッキーの写真アルバムが入っていた。山頂に住む犬「ビッキー」が死んだのは2010年ということだから、昨今の登山ブームが湧き上がった頃、あるいはその直前である。
自分は2度見ていたが、おそらくここ数年で急増した登山者の間では、ビッキーは神格化された、伝説の犬なのかもしれない。どこかのサイトには「仙人犬」と書かれてあった。
昼食をとるには中途半端な時間なので、少しの休憩の後、行動開始する。ゆったりした下りの後、ロープのかかった岩場の急下降となる。岩場はそこそこの距離がある。いったん平坦になってもまたロープの急坂となる。田野倉への分岐を2度ほど見て、ようやく穏やかな道となった。
右手の樹林帯からは都留市付近の町並みが見下ろせる。近頃再び脚光を浴びてきたリニア実験線もよく見える。高川山と隣りの九鬼山はこのリニア線が貫通しているのだ。一度走っているのを山の上からでも見たいものだが、土日は休業かもしれない。
高度をどんどん落として平均500~550mの高度の間のアップダウンの道となる。紅葉がなかなかいい感じで色づいていた。上のほうではコナラの黄色、標高の低いところでは赤やオレンジのカエデがよく見られる。天気がいいのでキラキラと反射し、写真には撮りづらい。
時々、登りにとる人とすれ違う。むすび山から登り始めるのも面白いと思うが、最後の急坂がきつそうだ。天神峠には2つの祠があり、さらに大月市への道が分かれていた。
次のピーク、峯山で食事休憩する。この高川山からむすび山までの道はヤセ尾根が多く、小広い休憩場所がなかなかない。峯山も山と言うよりも、単に尾根のコブと言ったほうが近い。
さらに尾根を進む。見通しのよい場所が増えてくるとともに、カエデなどの紅葉が素晴らしくなった。赤や黄色のトンネル状態になっている場所もある。高川山でこんなに紅葉が見られるとは望外であった。
そう言えばこの時期は、高尾山のモミジもきれいに色づいて混雑する。今日の高尾山は、好天も手伝い未曾有の大混雑となっていることは想像に難くない。こちら高川山は、山頂にもそこそこ人はいたが、混雑というほどのことはなくのんびりと紅葉を楽しめる。
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見上げる紅葉 |
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さらに高度を落とすと右手の麓の眺めがぐっと近くなって、何だかちょっと小高い丘の上を歩いているような雰囲気になってきた。ヤーヤー、とかけ声が聞こえてきたと思ったら、学校の校庭で野球をやっているのが見下ろせてしまった。
さらにバラバラという大きな音、ヘリコプターが目線より低い位置を飛んでいる。ドクターヘリだった。そのうち、いったんヘリポートらしき場所に着陸して飛び立っていった。今日はふだんあまり歩かない高度の尾根を歩いているので、いろいろ珍しいものを見る。むすび山への道は縦走コースと言うよりは、高川山からの長い下山路と言ったほうが合っているかもしれない。
少し深い樹林帯をくぐって登り返し、最後のピーク、むすび山に到着する。桜の木が何本も植えられている。ここは昔の見張り台で、それらしき建造物跡のようなものもある。
山とも言えないような小山程度のものであるが眺めはいい。大月市街がすぐ下に、菊花山、九鬼山、馬立山、岩殿山、百蔵山、扇山など中央線沿線の人気のある山が一望である。逆光ながら富士山も見える。今日のコースは最初の高川山と最後のむすび山の2箇所でしか富士山が見えない、というのも面白い。10分ほど下ってむすび山登山口、あっけなく今日の山は終わる。
メンバーが付近で入浴できる場所を探してくれていた。大月橋の交差点から大月市総合福祉センターまで徒歩10分あまりだが、交通量の多い国道を歩くのはやはり、山と違って疲れる。大月駅への帰路はバスを使った。
入浴できたので気分のいいまま、大月駅から中央線に乗り込む。京王線なら空いていると思い高尾駅で乗り換えたところ、京王線は車内も駅も大混雑。座ることができなかった。
いったい今日は高尾山に何人の人が登ったのか。今日登った高川山より高尾山のほうが気になった。