富士急行線の田野倉駅で下車。一旦国道139号に出て富士山方向へ進む。
今シーズン一番の寒さで、畑地は霜が降りていた。三ツ峠や滝子山、南大菩薩など標高1500mを越える山もずいぶん白くなっている。
池ノ山への登路にて、富士山方向の眺望が広がる [拡大]
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踏切を渡り山の中へ入っていく。九鬼山に田野倉駅からアプローチするルートである。九鬼山に前回登ったのはもう12年前、禾生駅から登っている。当時は田野倉駅からの道があったのか、記憶がない。林道の道すがら、札金鉱泉と書かれた古い木造の建物があった。名前は知っていたがここだったのか。もちろん営業はしていないだろう。
登山口は沢沿いに下りるところにあり少々わかりにくい。なお、ここに入らずさらに林道を直進し、札金峠に直接上がる道もあるようだ。
雑木林の登山道は少し登ると眺めが開け、富士山が惜しげもなく姿を現した。カエデ、コナラやアカマツを中心とした森はさほど密に茂っていないので、以降も随所で富士山や三ツ峠が望める。
池ノ山のピークは尾根の通過点といった感じ。緩い登りをさらに15分ほどで禾生駅からの道と合流する。前回はここり登ってきたようだが、田野倉からの道との合流点だったのか全く記憶がない。
九鬼山へはここから急登が始まる。人工林の急斜面で一気に高度を上げていくが、これがなかなか長くつらい。40分くらいしたところで、天狗岩への分岐を示す標識があったので入ってみる。3分と書いてあったが1分で天狗岩と思われる岩棚に到達。ここも富士山がよく見える。
戻って再び急登。ほとんど溶けて細くなっているシモバシラがあった。ようやく傾斜が緩くなり、禾生駅からのもう一本の登山道と合流。ここから先はよく覚えている。なだらかな稜線を数分で九鬼山山頂となる。
北面が大きく開けて正対する百蔵山、扇山、権現山や岩殿山、南大菩薩の長い稜線が一望できた。反対側は鬱蒼とした人工林だが、葉がなくてぽっかり空いたところからうまい具合に富士山が見えている。ただこの時間だと日差しが林にさえぎられて寒い。これらは12年前、初訪時も同じだった。
九鬼山から北へ、菊花山へ稜線伝いに行く。最初は急傾斜の岩っぽい下りで、気が抜けない。斜度が緩くなった後も右手が深い谷になっている斜面を長く歩いていくため、緊張する場面が続く。
中央線沿線の低山は穏やかで取りつきやすい山が多いが、この九鬼山やこれから行く馬立山は意外と悪路が多い。そのため最近は、この山域に出かけるときも、無意識に九鬼山を避けていた。
南関東・甲信の山は東西方向に穏やかな稜線を形作っている山稜が多く、一方南北方向に伸びる尾根は地盤が不安定で崩壊があり、歩きにくかったりするのがたまにあったりする。
振り返ると九鬼山の黒い塊をバックに、黄葉がキラキラ輝いている。尾根上の道となり、ようやくほっと一息ついたところで、紺屋休場を通過する。コナラやダンコウバイの黄葉がきれいだ。オオモミジは紅黄のミックスの色合い。紅葉はやはり日差しが十分で青空のバックがいい。
なお一説では、紺屋休場はここではなく、先ほどの登路で禾生駅からのコースと合流した地点が紺屋休場だという話もある。
標識と分岐があり、朝見た札金峠への登路はここで合流するようだ。
その札金峠は少し先、溝のように落ち込んだ部分にある。まるで城跡の堀切のようで、不思議な地形である。
札金峠からは、標高差約150mの長い登り返しとなる。コナラの黄葉が日に照らされてまばゆい。紅葉ピークのラインはだいたいこのあたり標高700mで、その上はさすがに空が広くなった。
支尾根に上がって右方向、アカマツの多くなった中を緩く登っていき、馬立山に着く。山頂という感じはなく、少し幅広くなった道といったほうが当たっている。
登山者が数人行き交う。自分と同じ方向から来た人、御前岩からや菊花山からの登山者がいる。
馬立山からの下りは岩場の急斜面を右に巻いていくが、ここもまた足元の悪いガレ場となっている。自分が初めて歩いた2003年より前、ここは岩場を直に登降するコースになっていたらしい。滑落事故が発生してからは巻き道がつけられたが、この稜線上を歩いていた時期があったとは、中央線沿線の山を歩くのも命がけのこともあったようである。
馬立山からさらに東に進む。岩稜状の尾根で見晴らしがよくなる。沢井沢ノ頭の少し先で左手の支尾根に入る。急な下りから落ち着いた人工林・雑木林の尾根道となる。
細尾根の登りになり高度を取り戻していくと、丸い岩が目立つようになって菊花山に近いと感じる。菊花山のシンボルは山頂の丸い岩である。14年ぶりの菊花山山頂に出ると、再び大きな展望。中央線や中央自動車道が真下に見え、岩殿山も眼前である。朝方は白かった三ツ峠や南大菩薩の山々はいつしか雪が解け、すっかり土色になっている。
そして振り返れば富士山、、、いや、14年前に比べるとずいぶん木が伸びた。木の枝に邪魔されることなく富士山を見るには、高さ50cmほどの丸い岩に上がらなければならなかった。菊花山は文句なしの360展望との印象を持っていたが、14年も経てばやはり樹林が伸び様子が変わる。
若い男性が一人、大月駅側から登ってきた。こんな時間なので不思議に思い聞いてみたら、午前中は岩殿山に登ってきたと言う。その岩殿山は、いくつかの登山道が崩落で通行止めになっているようだ。
菊花山を後に、いよいよ下山である。緩く下る尾根道は眺めがよく、富士山は山頂よりこの道からのほうがずっとよく見える。尾根を外れると一転、ロープのついた滑りやすい急降下の道となった。こんな最後で転んで怪我したくないので、慎重に足を置く場所を探しながら下る。
菊花山も昨年、山頂で滑落事故があったらしい。取り付きやすい山はつい気が緩みがちだ。こういう山こそ、歩行は慎重でありたい。
急降下の道は長くなく、大月の町並みがどんどん近づいていき、墓地の横に出た。菊花山登山口に下り立つ。車の多い国道を横断し、10分ほどで大月駅に着いた。
天候不順に悩まされた1年だったが、12月くらいは今日のような降り注ぐ陽光の下、天気の心配のない登山がしたいものである。