~連なる山並みと富士の展望~
タイトル
くきやま(970m)・ごぜんいわ(730m)
2003年12月7日(日)快晴

7:05富士急行線禾生駅-7:20杉山新道登山口-8:05弥生峠-8:35富士見平8:45-8:50九鬼山9:10-9:50札金峠-10:25馬立山10:35-11:20御前岩11:55-12:05神楽山12:15-13:00中央線猿橋駅
歩行時間:4時間30分

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今年の冬はまだ、身を切るような寒さがやって来てない。いつもなら山頂で、いやむしろ朝の電車の中でドアが開くたびに寒い思いをするのだが今年はまだない。
展望の尾根歩きは冬型の気圧配置であることが望ましい。ほどほどに気温が低く、大気はカラッと乾き、さらに明るい日だまりの尾根であれば最高である。今日歩く九鬼山から馬立山(むまだてやま)・御前岩・神楽山(かぐらやま)へと続く尾根はどんな按配だろうか。
リニア実験線
リニア実験線

大月駅で富士急行線に乗り換え、3つめの禾生(かせい)駅で下りる。西に高川山、東に九鬼山と2つの低山に挟まれている駅である。
乗客には登山者が多かったがここで下りたのは自分一人だけだった。皆は三ツ峠か、富士五湖周辺の山であろう。
早くもクリスマスツリーが飾られているホームを後にし、国道139号を戻るように歩く。じきにリニア実験線の高架橋を見る。つい先だって時速581kmの世界最高記録を出した所である。このリニア線は九鬼山のどてっ腹をくりぬいて通っているのである。

落合橋を渡り、やがてY字路に出る。どちらも九鬼山への登路に導かれる。左は愛宕神社コースで、距離は短いが急登が続くとのこと。今日は右の杉山新道コースを採る。

すぐに登山道に入る。檜林の中の、やはりなだらかな登りが続く。ほどなく、「あばら沢経由~みゆき尾根」というもう1本の登山道を右に分ける。歩きやすい道であるが意外と細くヤブっぽい。
ジグザグに登って行くと周囲は雑木林が目立ちはじめ、眼下に町並みが見下ろせるようになる。なだらかな登りでも、地道に歩けば必ず高度は上がりやがては山頂に通じる。
富士見平から富士山
富士見平から富士山
雪煙上がる富士山
雪煙上がる富士山

稜線に上がった所には「弥生峠」との表示があり、ここで先ほど分かれたみゆき尾根のコースと合流する。エアリアなどには載っていない峠名だが、地元ではそう呼ばれているのだろう。
みゆき尾根もそうだが、このコースの指導標にはそういった、この場所に来てみなければわからないような地名がたくさん出てくる。九鬼山を示す方向には「久美山」なる山名も登場してくるのだが、これはどのピークをさすのだろうか、よくわからない。
ともかく一息つくのによい場所だ。ここ弥生峠には「リニア見晴台」という標識も立っているが、リニア高架橋は樹間からかろうじて見える程度だ。

なおも緩やかな雑木の道を登る。周囲は桧などの植林が目立つ反面、歩いている場所は主に雑木林につけられている。
風が強く、頭上でビュービューいっている。周囲のカラマツが風でしなっている。山頂も風が強いのだろうか。

鈴懸峠・高畑山に通ずる東尾根の分岐を経て、富士見平に到着する。南西側が切り開かれていて富士山方向の展望が素晴らしい。愛宕神社からのコースもここで合流する。
今日は雲ひとつ無い快晴、まだ時間も早いのでクリアな状態の富士山が眺められる。富士山もやはり風が強いのだろう、時々雪の斜面に雪煙のようなものが立っては消えるのが見て取れる。

九鬼山山頂(970m)へはそこから一投足。風もそう強くはなく、北面のパノラマ展望を満喫する。近いところで百蔵山、扇山、権現山。雁ガ腹摺山や滝子山が高く目立つ。三頭山とその左に続くのは鷹ノ巣山か、雲取山だろうか。
反対側の富士山は林に隠されているが、木の間から垣間見ることが出来る。
陽射しが樹林に遮られてしまったので寒い。馬立山への縦走に入ることにする。
御前岩
御前岩
九鬼山に続く山並み
九鬼山に続く山並み
倉岳山方面の展望
倉岳山方面の展望
マッチ箱のような集落
マッチ箱のような集落

九鬼山北面の下りは、岩場や急斜面のトラバースなどあり気が抜けない。傾斜が緩んだ後も、落ち葉に踏み跡を隠されたザレ場が続くのでかなり緊張する。

紺場休場あたりで尾根が広まり、ようやく気持ちのいい歩きになる。
「熊に注意」の立て札に手書きのメモが貼ってある。『2003年10月31日、100m先で熊の親子を目撃』と書かれている。100m先とは自分が進む方向なのか。いよいよ自分も熊に会う時が来たのかと思う。これほど山に入っているのでそろそろ出くわしてもおかしくはない。
それにしてもこの紙を貼った人は、山に登るときセロハンテープを持って来るのだろうか。

幸いここから先も熊は出なかった。少し行くと再び富士山と対面する箇所が増えてくる。日だまりも十分にあり気分がいい。
やがて田野倉駅への道を分け、札金(さつかね)峠に至る。木々に囲まれた暗い感じの場所だ。進む方向の他に、朝日小沢や札金鉱泉跡への踏み跡が分かれており、歴史のある峠の雰囲気がする。

この後馬立山までは、2,3のピークを越えて行く。ヤブがちの急登をこなし、何本かの枝道を見ながら、再び高度を上げていく。右方に馬立山らしき峰が見えて来る。

木立の中、東西に長い馬立山(797m)に登り着く。木の間から岩殿山や大月駅付近の町並みが見下ろせる。少し休憩してさらに進む。
15名ほどの中高年のグループとすれ違う。その後も後から後から人が来る。思った以上に歩かれている尾根のようである。

馬立山直下の下りもかなり悪い。以前は岩場を急降下するしかなかったそうだが、滑落死した人がいたようで今は巻き道が付いている。しかしこの道も急斜面のトラバースなので足運びの慎重さが要求される。

前方に御前岩と思われる岩峰が見えて来る。さらにいくつものピークを越え、北面が切り開かれた稜線に出て、大菩薩方面の眺めが広がる。足元にアキノキリンソウを1輪見かける。菊花山への分岐(指導標あり)を過ぎて、岩峰の直下に至る。

「御前山」の標識がある御前岩(730m)からは、北側が樹林で隠されている以外、270度の大展望だ。
来た方向を見ると九鬼山から馬立山まで、いくつものピークがうねうねと屹立している。その間に富士山も見える。
さらに真南には高畑山や倉岳山・高柄山(たかつかやま)など中央線沿線の主峰、その奥に道志の山並みもたおやかだ。マッチ箱を並べたような麓の集落がいくつも見下ろせる。お昼休憩にちょうどいい時間、展望をおかずに昼食とする。

まだひとつ、神楽山が残っている。なおも続く小ピークは日当たりの良い南面を巻く。猿橋駅への下り口から少し登った所が神楽山(673m)だ。
CATVのアンテナがせまい山頂を占拠していて落ち着かないが、北側が開けて岩殿山がよく見える。
岩殿山と大月市の町並み
岩殿山と大月市の町並み

変化のあるミニ縦走もしめくくりだ。猿橋駅への下山路に入る。しばらくは緩やかな下りが続くが、正面にどっしりと構える扇山に向かって、落っこちていくような急坂も出てくる。岩場もまだ登場するので気が抜けない。
今日歩いた道は全体的に見れば穏やかだったが、思いのほか緊張する場面が多かった。

さっきまでは見下ろすほどだった中央高速や中央線、大月市の町並みがみるみる目線の位置に迫って来る。
植林帯に入ってホッとする。車道に下りてすぐに中央高速の赤い橋、猿橋駅も視界に入る。山から出たとたんに文明社会の風景、中央線沿線の山の宿命である。
短い道のりだったが、歩きがいのある楽しい縦走路だった。


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