昨年に続いて、緊急事態宣言下のGW。好天の予報に負けて出かけることにした。
都県境越えだが、端っこなので許してもらおう。
陣馬山山頂。富士山の眺めは茶屋のテラス越し [拡大 ]
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混雑しそうなので早朝出発する。相模湖ICを下りて20分足らず、沢井住宅前バス停横の観光駐車場を使わせてもらう。自分が一番乗りだった。6時半、歩き出す。
駐車場から少し戻って、陣馬登山口へ。一ノ尾根はまさにここから尾根が始まっている。
登り始めのうちは舗装道路で、周囲に人家もある。背後には春の花と新緑で彩り豊かになった藤野の住宅街がよく見える。
後ろから若い人が登ってきて、早足で抜いていった。16年前に藤野駅から歩いて一ノ尾根を登ったとき、前方に初老の男性が歩いていた。その人は自分に追いつかれまいと必死で無理してペースを上げている。自分が追い抜いたとき、その人が悔しそうな表情を浮かべていたのを思い出す。
時が経過し、自分が抜かれる立場になった。
時折檜林、杉林が現れるものの、新緑の落葉樹が多い、下部はヤマツツジが早くも咲き始めた。
腰の位置にはミツバウツギ、マルバウツギ、目線にはダンコウバイ、イヌシデ、マルバアオダモ、クロモジ等が新緑の主役だ。
ダンコウバイは3月ごろの黄色い花が春を告げてくれるが、葉の形も面白い。先割れスプーンのような形と、同じ枝に先割れしていないハート形のものもある。こういう混合型の木は意外に多く、ヤマグワもいろんな形の葉をしている。また、カクレミノやヒイラギなど照葉樹にもいくつかある。
またダンコウバイは秋の黄葉もきれいだ。早春だけでなく、それぞれの季節で存在感を見せてくれている。
冬、冬芽や樹皮を観察する時期はそれなりに見るべきものはあったが、やはり葉が出てくると、足が止まる回数が格段に増える。
昨年は、わからない木に出会うたびに図鑑を取り出して、その場で時間を費やしてなかなか先に進めなかったりした。今日は図鑑を持っていないので少し足ははかどる。
木や花を覚えるのは、葉や花の形から図鑑で調べる方法が一般的なのだが、それは結局頭で覚えるだけである。細かいところにとらわれるよりもむしろ、その木や花の全体像を目に焼き付け、今まで見たものと記憶の中で照合する。こういう覚え方が理想だと思うのだが、そんな達人になるのは何十年も先になりそうだ。ただ、木で言えば、高木か中高木か低木かが、意外と大きな見分けの材料になる。
とりあえず写真に撮って、後で家で調べようというやり方は、家に帰って写真を見てもはっきりわからないことがが多く、結局お蔵入りになってしまう。
生で見てその場で理解するのが一番である。そういうことが最近わかってきた。
上沢井分岐を見て、緩い登りは続く。高木にコナラ、カシワ、コブシ、ホオノキなど。ミズナラも比較的標高の低い所から現れ始めた。ブナはなく、イヌブナもここでは見られなかった。
スミレは下部でタチツボが咲き残っているくらいだったが、そのうちニオイタチツボやオカスミレが見られた。クサイチゴ、ジュウニヒトエ、チゴユリを目にする。
和田からの登山道を2本合わせた後は、登山者もずいぶん増えた。皆足が早い。自分より歳がいっている人もいるが、自分はどんどん抜かれている。
少し急な登りとなると樹林を脱する。背後に大きな眺めが開けた。南関東の山ではあまりない展開。陣馬山は山頂が芝生状になっており、展望の頂となっている。
陣馬山山頂に到着。茶屋が何軒も経っている。昨日の雨は、標高の高いところでは雪だったのだろう。富士山がこの冬で一番白くなっていた。丹沢や南アルプス、奥多摩の山々が一望される。
しかし、肝心なところは茶屋の展望テラスが邪魔で、富士山も見える場所が限られる。展望テラスのベンチは茶屋で何か注文しないと入れないのだ(そもそもこんな早い時間ではやっていない)。
実は陣馬山は、山頂に限って言えばストレスのたまる山である。本来であれば、都心からも近いし何度も登りにきたい山なのだが。高尾山でさえも、山頂に人工物は多いけれども富士山の眺望は保たれている。
茶屋がとり囲む陣馬山の山頂、残念に思うのは自分だけだろうか。
栃谷尾根で下山する。山頂から一段下りたところは茶屋のテラスもなく、富士山と南アルプスがよく見える場所だった。
この後は樹林の登山道に入るので、眺めはない。一ノ尾根と比べて人工林が多く、落葉樹の観察機会も少ない。イカリソウがピンクのきれいな花をつけていた。
淡々と下り、林を抜けるともう里のエリアである。茶畑を前に、白無垢の富士山が大きい。
藤の花を見ながら林道に下りる。陣馬登山口まであと2㎞の標識。まだ長い。栃谷休憩所を経てジグザグに下っていく。春の日差しは強いが空気はカラッとしていて、今日はあまり汗もかかなかった。
栃谷川沿いの舗装道をしばらく歩き、朝登った陣馬登山口に着く。まだ10時過ぎだが、下山した登山者がバスを待っていた。
今日も寄り道せずに、まだ空いている高速で帰る。