日曜日は梅雨の晴れ間になる、との予報。久しぶりに都心から近距離の山を一般コースで歩くことにする。
近距離と言っても山梨県中央部まで足を伸ばすのだが、このところ遠路の山が続いていたので、久しぶりにのんびりできそうだ。
霧が晴れて大菩薩の稜線が現れる
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中央線の笹子トンネルに入る手前までは澄み切った青空が広がっていたが、トンネルを抜けると、晴れてはいるもののすでに白い空に変わりつつあった。塩山駅からのバスは乗客がたったの3名で、うち登山者は2人。晴れの休日なのにこれはいったいどうしたことか、と不思議に思う。
裂石(大菩薩峠登山口)からいつも通りに車道を上り始める。大菩薩嶺は15回目の登頂で、前回から3年も空いている。花が少なくなってしまったのも足が遠のいた一因だ。しかしやはりいったん歩き始めると、それが車道であっても、足慣れしているというか、今まで14回歩いた山の感触は覚えているものだ。
車道をジグザグに登っていく手前、倉庫のような工場がある。これは何の建物なのかと常日頃思っていたのだが、「大菩薩の水」なるミネラルウォーターを製造する会社だと初めてわかった。
丸川峠コース分岐を見てさらに進み、千石茶屋の前へ。こぎれいな無人休憩舎に建て替えられており、水も調達できる。建物の造りは大菩薩峠の介山荘と同じだ。さらに「ペットボトルどれでも100円」とは安い。
少し歩いて登山道入口となる。眺めのない登り一方の道ではあるが、ブナなどの巨樹も多く、飽きさせない。さらにこのコースは植林が全くないのがいい。しかしこの尾根を今歩く人は、さっきのバスの乗客を含めて2人しかいない。
路肩が崩れた場所を避けるため、いったん上部の車道に上がるように登山道が付け替えられている。これは3年前と変わっていない。3年も補修がされていなかったのか。歩く人が少ないのを理由に、予算が後回しになっているのだろうか。
再び登山道に戻り、ブナやミズナラの巨木を見ながら高度を上げる。上日川峠に出ると大勢の登山者で賑わっていた。駐車場はほぼ満車状態。塩山からのバスがガラガラだったのも何となくうなずけた。
今や大菩薩嶺の登山口は上日川峠とするのが一般的になってしまったようだ。甲斐大和駅からここまで上がってくるバスの時刻表を一応確認していく。
笹の茂った樹間の道は、昨日までの雨の名残りか、ぬかるんで歩きにくい。福ちゃん荘から唐松尾根の登りになると霧が出てきた。どうやらここから先は、乳白色の眺めが続きそうである。若い人のグループをあちこちで見かける。
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開けた草原 |
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標高2000m付近 |
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大菩薩峠 |
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勝縁荘は営業再開
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唐松尾根は急登のイメージがあるが、初めのうちは平坦な部分も意外と多い。開けた草地に出ると急な登りが続く。花はタカネニガナやウマノアシガタといった黄色い花を見るのみで、まだ時期が早いのか、あたりは草の緑色ばかりだ。下のほうはサラサドウダンの花がいっぱい地面に落ちていたが、山頂に近づくにつれまだ花を付けている木が目立ってきた。
山頂手前の雷岩に到着。ここも人がいっぱい。若いグループは会社のレクリエーション企画か何かだろうか。それにしても人また人でごった返している。
2000mを越える地は、日が差さないとさすがに肌寒さも感じる。1枚羽織って昼食休憩とする。
大菩薩嶺の三角点には立ち寄らず、このまま峠まで稜線を歩く。サラサドウダンはどの木も満開、鈴なりである。この大菩薩嶺にはこんなにサラサドウダンの木がいっぱいあったのか、とびっくりする。登山道に花は咲いていないけれど、木の花はどうにか見ることができた。
標高2000mの岩棚付近に来ると、若干霧が晴れてきた。周囲の稜線が見渡せるようになり、上日川ダムの湖面も雲間から顔を出す。しかし、すぐにまた元の乳白色へ。梅雨の晴れ間を信じてきたが、そうはうまくいかず、やはり梅雨の時期の山だった。
大菩薩峠付近も多くの人出。介山荘の売店も賑わっている。霧深い中、皆生き生きしているように見える。こんな天気でもあるし、今日は石丸峠まで足を伸ばすことはせずにこのまま下山する。
ほとんど林道状の幅広い道をゆっくりと下る。中里介山ゆかりの宿、勝縁荘は整備され、ちょっとした軽喫茶のようになっている。今年より、山小屋としての営業も再開したようだ。大菩薩もしばらく来ないうちに、ずいぶんと周囲の施設が様変わりしてたようだ。ただ、大らかで堂々とした山のいでたちや雰囲気は、16年前の最初に登ったときと変わっていない。若い人だけでなく、誰でも存分にリラックスし、自然を満喫できる山である。
上日川峠から再びブナの道を下る。最後まで周囲の眺めは得られなかった。車道から緩く下って裂石の大菩薩峠登山口に到着する。バスの時刻にちょうどよい時間だったので、日帰り温泉は省略し塩山駅までバスで戻る。