~風雪をしのいで峠越え~ |
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●石丸峠からのラッセルパーティー 食事をすることが出来ないのでとりあえず避難小屋まで行く。小屋には3人の若者。寒暖計は-2℃をさしていた。小屋の外は、強風で体感温度はさらにぐんと低くなっているはずだ。 小屋で食事を簡単に済ませる。
奥多摩の山並みを左手に見ながら、大菩薩峠に下りて行く。峠に着いても強風はおさまらず、早々に介山荘の中に入る。 この日の介山荘は30~35名の宿泊客。この時期としては盛況だろう。益田さんの息子さんの小屋番はもうすっかり板についたようだ。 石丸峠をラッセルしてきたパーティーが途中で道を失ったと、小屋の携帯に連絡が入った。介山荘の方と常連客数人が輪カンで迎えに行く。パーティーは熊沢山からさらに北の方角に行ってしまったそうだ。 携帯で小屋と連絡がつかなければ、このパーティーは遭難していたかもしれない。聞けば大菩薩は初めてだそうだ。登り始めの時刻も午前のかなり遅い頃だったようで、山でトラブルや遭難は、やはり起こるべくして起こるものだと強く感じた。 なお、このとき私は介山荘の方に輪カンを貸した。昼間はあまり用をなさなかった私の輪カンも、少し役に立ったようだ。 迎えに行った介山荘の息子さんが言った。「大菩薩に、これ以上雪はいらないからね。」
翌朝、小屋の外の寒暖計は-13℃。朝から薄雲がかかるが、大菩薩の稜線や南アルプスが、朝日にほんのりと染まって行く。 出発は8時と遅めになった。介山荘前から丹波・小菅方面への道に入る。最初の1歩でトレースを外し、腰上までズボッともぐってしまう。先が思いやられたが、それ以後は快適に、なだらかな雪道下りを楽しむ。 フルコンパ小屋跡で奥秩父連山を眺める。ここから小菅へは右に進む。正面の丹波道には、たしかにトレースがない。 小菅への下りは植林の多い道。標高を落すにつれ、雪量が少なくなって行く。東・南に面するところは雪質がザラメで土が見えているところもあるが、北側はまだサラサラの深雪のままだ。 何度か道を折り返すうちに、林道の終点にたどり着く。スパッツとアイゼンを外し、ストックもザックに縛り付けた。 しかし林道をしばらく進むと、路面がガチガチに凍っていた。一度しりもちを突いてからはあきらめてアイゼンを付け直した。 小菅バス停近くになって、ようやくアイゼンを外す。ここから小菅の湯までは再び登りの道に転じ、思いのほか長くしんどかった。ただ、日差しの柔らかさが春近しの印象を持たせる。あと半月もすれば、奥多摩の町からも梅の便りが聞こえるかもしれない。 小菅の湯に到着。温泉、ビール、わかさぎ、そばでしめくくった。
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